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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第三章 朝日将軍
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第二十三話 はおう は しんでしまった その2

平家サイドです

「バカが!」

覇王は真っ赤になって怒った。


小松維盛に対してだ。

富士川の戦で、まともに戦いもせずに壊走した維盛。

これに呆れ、怒った。


覇王は無敗。

今まで誰に対しても勝利を得た。

当然、配下にも常勝を期待した。


ところが負けた。

それも武勇を競い、魔法技術を競い、知略軍略を競っての結果ではない。

ただ、驚いて逃げ帰ったのだ。


初めて平家軍に土がついた戦いがこれ。


覇王は激怒した。

激怒はしたが、子供には基本、甘い。

特に小松維盛は孫だ。


さんざん怒りちらしたが、最後には大将としての心構えを徹底的に教え下がらせた。


その後、頭に血が上ったのが悪かったのか、具合が悪くなった。

「無理しないでください」

側にいた平知盛が言った。


平知盛にとって一番の悩みは覇王の健康だった。


覇王は最近、健康を害していた。

それは自然現象なのでしかたがないのだが平知盛の立場からするとそうもいかない。

これがここ最近の平知盛の悩みだった。


覇王は覇権を確立するため、融和ではなく反乱者撲滅の方針をとった。

反乱をおこさせ、それを叩き潰すという考えだ。


この方針は覇王が平和に飽いたという理由もあった。

骨のある戦士と戦いたいというバトルジャンキー的な理由だ。


このため、領地を奪い、法皇を幽閉した。要は挑発だ。

これが以仁王の令旨につながり、各地で反覇王が放棄した。

これを叩き潰せば、平家の派遣は盤石だ。

ゲームクリアーだ。


つまり……平知盛の立場からすると

そのゲームを開始した張本人が、途中退場したら困るのだ。


反乱を叩き潰すという仕事の尻持ちをしなければならなくなる。


だから、反乱を叩き潰す仕事が終わるまでは覇王に生きてもらわないといけないのだ。


裏からこの政権を動かしている平知盛は”覇王を延命させる”ことに腐心した。


そのため、できる限り戦には参加させなかった。


覇王には

「強い相手と戦いたいのでしょう? それなら、まず私たちが戦います。私たちを破った相手と戦うというのはどうでしょう? 私たちで倒せる雑魚相手にしてもしかたないでしょう?」

と言って戦から遠ざけた。


また、この行動力溢れる男が変な方向に行動しないように目標を与えた。

「宋国との貿易を考えられてらっしゃるのでしょう? それならば、港づくりはいかがでしょう? これは余人にはできません。覇王様でないと」

と進言した。


覇王は喜んで神戸に貿易港をつくる事業に精を出した。

これで覇王を政治の実務から遠ざけた。その方がストレスがなく、不要なストレスがない分、長生きできると思ったからだ。


あまりに行動力がありすぎて都を神戸にうつすと騒いだこともあった。

理由を聞くと戦が好きな覇王らしい回答がきた。

以仁王が反乱時に目指した南都が反乱の拠点となったときに都では戦いにくい。

神戸なら必勝。という戦術面での理由だった。


平維盛はこれを聞き、若干のため息をつきつつ、

「では、南都がなくなればよいのですね」

と確認。

覇王からその通りだという言質をとると、火炎将軍重衡を南都に派遣。反乱の拠点になりそうな施設や勢力を彼の炎の魔法で全て焼き尽くし灰とした。


そうやって覇王の精神的ストレスを取り除き、延命を図っていたが、ついに寿命がきた。

富士川と戦いから何か月も経っていない。よほど、その敗北が心身にダメージを与えたらしい。



覇王が死んだ。



平知盛は覇王の死を悲しむよりも

「勘弁してくれよ」

という悲鳴をあげたかった。


元々、この反乱は覇王が始めたゲームだ。


崇徳天を破り

源頼朝やクロウの父を破り

それで天下をとったのが覇王だ。


それで物足りず、この世の領主や戦士を挑発し、蜂起させ、ゲームのセカンドステージを開始させた。

開始しておきながら途中退場されては、残されたもの(平知盛)が困るのだ。


ちゃんとセカンドステージもゲームクリアしてくれないと困る。


一応、万が一のための手は打った。

妹が帝に嫁いでいた。その妹の子を新たな帝にした。

それが安徳帝 イヤイヤ期の3歳だ。


覇王に万が一のことがあった場合、組織の中心を失う。中心がない組織は弱い。

下手すると組織崩壊する。

それを防ぐための策だ、

安徳帝を中心に組織運営を行い、組織崩壊を防ぐのだ。


もっとも、これはあくまでも万が一に備えての策だ。

全戦全勝の覇王と3歳児の安徳帝。どちらが組織トップとして安定するかといえば覇王だ。


だから覇王には生きてもらわなければ困るのだ。


しかし―

諸行無常の言葉通り、その平知盛の願いも空しく、覇王は倒れた。


平知盛は頭を抱えつつも、覇王の子の中で一番の長兄である平宗盛を後継者とし、安徳帝を補佐するという立場で組織強化し、覇王の残したセカンドステージを戦う準備をした。


「まじやめて」と悲鳴をあげてもしかたないとわかっているからだ。


今までの努力の結果、敵は大きく2つだけだ。

信濃国から北陸に勢力を持つ木曽義仲。

坂東平野に勢力を持つ源頼朝。


この2つの勢力さえ倒せばセカンドステージクリアだ。


幸いと言っていいかどうかわからないが富士川では負けた。しかし戦らしい戦いはしていないので兵力はある。


(まるで、覇王様が”俺の築きあげた資産を受け取るなら、この程度の戦い勝って見せろ”といっているようですが……まあ、やるしかないですね)

平知盛は腹をくくった。

【留意点】

平清盛が一族の拠点として日宋貿易を背景に発展させた都市は”福原”ですが、本作では位置関係がわかりやすいという理由から”神戸”と記載します。ご留意ください。個人的に神戸って言葉が新しい都市をイメージしやすく好きなんです。


【神霊・妖魔紹介】

■護法童子

 第二話登場

 仏法の守護神 子供の姿で現れることから護法童子と呼ばれる。

 レベルの高い僧侶や山伏が使役する。


■ラミエル

 第ニ話登場

 神の雷霆を意味する天使 

 エノク書に登場 この書では復活・死者・終末の裁きに関係する天使として紹介されてる。 


■鵺

 第五話登場

 猿の顔、狸の胴体、虎の手足、蛇の尾をもつキメラ

 近衛天皇を苦しめるが源頼政に倒される。


■ゴブリン

 第六話登場

 ご存知ファンタジーのレギュラーモンスター

 ヨーロッパの民間伝承に登場する、人間に害をなしたり悪戯をしたりする小さな妖精・小鬼。

 緑色の肌や尖った耳を持ち、集団で暮らす小柄なモンスター、そして女性の敵としてえがかれることが多い。

 


【お知らせ】

こちらも連載中です。よろしければ見ていただけると嬉しいです

■機動小隊レンジャーワン https://ncode.syosetu.com/n8156lf/


【あとがき】

上司が立ち上げた仕事があったのに、上司が突然異動。

そして残された我々は、華麗に始末役へ――。

こういうこと、ありませんか?


本作の平知盛の立場がそれです。


こんな作品ですが「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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