第二十二話 Crossroads of Destiny その9
さとう つぐのぶ
▶コマンド 「いたずら」
「さとう は いたずら を しかけた」
平家軍は深夜、撤退を開始した。
この撤退は敵を誘い込むための罠だ。
撤退が成功しては意味がない。
そのため、撤退しているとわかるように堂々と行った。
敵が攻めてきたら反転し、川や泥沼で足を取られている相手を蹂躙するのだ。
ここで奇妙な起こった。
周囲に多数の火がともったのだ。平家軍を囲むように。
兵たちがざわめく。
斎藤別当実盛は即座に小松維盛に告げた。
「篝火じゃ。やられたわい。儂らも夜襲を考えたが、敵も同じことを考えたらしい。すでに囲まれてるわい」
「どうします?」
「どうしますも何も作戦を中止するしかあるまい」
「このまま敵を迎撃するする方法もあるのではないでしょうか?」
と小松維盛が言ったとき、篝火の一つから極太の魔法弾≪マジックミサイル≫が放たれた。
その魔法弾が平家軍のど真ん中、小松維盛のすぐ横に着弾。
周囲に地響きが鳴り、小松維盛の兜が吹き飛んだ。
この轟音で富士川で寝ていた水鳥達が一斉に目覚め、緊急避難のため飛び立った。
その様は、まるで白いカーテンが夜空にできあがったかのようだ。
「敵に囲まれたっ!」
「狙い撃ちされるぞ!」
「後ろの富士川かららも敵が来てるぞ!」
「挟まれたぞ!」
この一撃の効果は凄まじかった。
なにしろ、総大将である小松維盛のすぐ横にマジックミサイルが着弾したのだ。
既に敵の射程圏内にいるというのは嫌でも理解できた。
(このままでは何もできずに狙い撃ちされる)
この恐怖が兵を動かした。
いつだって人が動くのは恐怖からだ。
この恐怖を乗り越えて、恐怖に逆らい、運命を切り開くものをを勇者という。
しかし、平家軍7万の中には戦士はいても勇者はいなかった。
狙い撃ちにされる。挟み撃ちにあう…………そして討ち死にする。
その恐怖から潰走を始めた。
偽りの撤退ではない。
本物の潰走だ。
これを止める者はいなかった。
斎藤別当実盛は周囲に篝火が現れた時点で、作戦の失敗と敵に囲まれたと判断。撤退したほうがよいと考えていた。
小松維盛は巨大なマジックミサイルで狙撃されたことで委縮した。死が形をともなってすぐ近くに着弾したのだ。若い彼はいつもの判断が出来なくなった。斎藤が撤退を判断して事もあり、素直に斎藤のいうとおり撤退することにした。
これを夜陰からみているものがいた。
クロウ一党だ。
「大成功!」
クロウと静がハイタッチしていた。
「すごい。佐藤殿の考え通りになりましたな」
伊勢三郎が感心の声をあげた。少しの畏怖の感情も入っていた。
「与一殿と残夢殿のおかげです」
佐藤継信が表情の見えない貌で言った。
佐藤継信の行ったことは簡単だ。
自らの使役する狐火達に命じて平家軍の周囲を取り囲み篝火に偽装した。
その偽装には残夢の仙術も一役買っていた。
自然と一体化し、自然と同化する仙術でリアリティの演出をした。
そこで平家軍がざわついたところに与一の最大出力のマジックミサイルを敵の大将の隣にはなった。
「敵の大将狙ってもよかったんだぜ。俺ならこの距離でも射抜ける」
と与一は佐藤継信に不満を言った。
「あくまでも悪戯ですよ。悪戯。それに敵の大将を倒してしまったら、この大軍がどう動くか読めなくなります。敵の大将にビックリしてもらうのがこの悪戯の大事なところですよ」
佐藤継信は淡々と言った。
その悪戯は成功した。
与一の弓。
ただ一矢で敵の大軍は総崩れとなった。
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【あとがき】
那須与一様を活躍させたかったのです・・・
史実と違ってもいいので那須与一様を活躍させたかったのです・・・
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