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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第一章 英雄集結
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第五話 ルート分岐 その2

第四話はクロウの敵の紹介でした。

第五話はクロウのライバルの紹介です。

金売吉次という男がいる。

本名は堀だが。

誰も堀さんとは呼ばない。


皆、金売。金売という。


理由はシンプルだ。


金を売るからだ。


彼はクロウの住む鞍馬山や都といった洛中洛外エリアから遥か東。奥州大陸出身だ。

この大陸には金が出る。

そこら辺に砂金がころがっているという与太話まである。


いわゆる黄金郷-エルドラド―のように洛中洛外の人々から認知されていた。


吉次はそこで採れた金を売ることを生業としていた。

途中、東国各所を通過する。

東国各所を通過する道中、宿や市で耳にする噂話も多く、世情にはやけに詳しかった。


情報通の吉次はこのように考えていた。

(覇王の時代は長くないだろうねぇ)


彼の移動する東国では覇王に対する敵対心が高まっていた。



例を挙げればきりがない。


信濃国に木曽義仲と呼ばれる猛将がいる。彼は平清盛に成り代わって覇王にならんと戦力を増強していた。

越国に本拠を持つ平家の将 城一族と合戦間近という噂もある。


近江国には甲賀入道という男がいる。この男も木曽義仲に同調する気配がある。


甲斐国にも武田という高名な一族がいる。

彼らは新羅明神の加護を受けた高名な勇者。新羅三郎の子孫だ。

その勇者の子孫たちが先祖の勇名に負けじと挙兵準備を進めているという噂も聞いていた。



摂津には鵺退治で高名な源三位頼政という老戦士がいる。

高齢ではあるが保元・平治といった有名な戦で常に勝利した常勝将軍でもある。

彼は従三位という高い位にあり、帝の話を直に聞ける立場にある。

その帝は覇王をよく思っていないらしい。

当然と言えば当然。

帝以上の権力者の出現を喜ぶ帝はいない。

そのため源三位の挙兵を促しているという噂がある。


尾張三河でも義円という源氏勢力が源三位の部下である神宮十郎と何やら画策しているらしい。


坂東では平家に親を殺された源頼朝が雌伏の時を過ごしているが、その周辺では彼を担ぎ上げようといろいろ動きがあることを聞いている。


このような情報から吉次は

覇王の時代は長くない。

と考えていた。


何かきっかけがあれば一気に世の流れが変わる。

これが吉次の読みだ。


繰り返すが吉次は金を売る。

身も蓋もない表現をすると商人だ。


商人は物を売り、そこから利益を得る。それが一般に知られた姿だ。だが、利益を生む手段は売買に限られない。商人は別の形でも利を生み出すことができる。

それは投資だ。


吉次は金を売るルートを確立した。

金はある。


次にその金を使って、金だけでは手に入れることのできないものを手に入れようと考えた。


それは天下だ。

彼もまた群雄のだった。


もちろん彼自身が天下人になろうとは思っていない。


吉次はこの時代の行商人として戦闘の心得がある。

むしろ金を運ぶ商売をしている関係で盗賊との戦闘経験は多い。


その戦闘経験から逆に自身が天下の主にはむかないと感じていた。

一人で戦う。一人で営業するのは問題ない。

しかし、指揮やマネジメントを行うのは苦手だ。

数多くの野盗との戦闘。そして数多くの商談で嫌というほど自分の苦手分野を痛感していた。


そして指揮能力がないと天下人になれないということは理解していた。


そんな彼が狙うのはキングメーカーだ。

誰か天下人になれる人材を擁立する。


それが彼の夢だ。


(どうやら、その夢が実現できる世情になってきたようだねぇ)

と彼は感じていた。


さて、キングメーカーを目指す場合。誰をキングに添えるか?

これが重要だ。


まず平家一門やその勢力下にある豪族・貴族はOUTだ。

彼らの味方をしてもキングメーカーにはなれない。

覇王体制が続くだけだ。


その平家と敵対する勢力でなければならない。


敵対するであろう勢力は前述のとおり存在する。


その中で吉次はその中で、一番、天下に近いのは坂東の源頼朝だと予想していた。


彼は覇王に敗れた源氏の棟梁の子だ。

更に生き残っている源氏の棟梁の子の中で一番年上だ。

「親の仇」という名目が立つ。

更に彼のいる坂東の地は昔から平将門といった猛将を輩出するエリアだ。

天下を獲るための武力もあるだろう。


しかしながら、源頼朝では吉次は困る。

彼の夢はキングメーカーになることだ。


源頼朝の周辺には頼朝を擁立しようと画策している連中が多い。

皆、吉次と同じことを考えているのだ。


これでは吉次は夢をかなえることができない。

今から吉次が行ったとて、頼朝を擁立しようと画策している連中に除け者にされるだけだ。

最悪、吉次のアドバンテージである金をいいように利用されて素貧寒になるのがオチだ。


同じ理由で摂津の源三位頼政や信濃国の木曽義仲、甲斐国の武田も吉次の夢を叶える相手としては難しい。

それぞれ股肱の臣がいる。

「親の仇」という大義名分を持つ源頼朝に比べて名目が弱い点。天下取りレースの中では一歩落ちる。


名目という点では源頼朝の弟達がいる。

蒲殿と義円という。


しかしながら蒲殿は武田の部下が接触しているらしい。

同じく義円は源三位頼政の部下である神宮十郎という弁士が接触しているという情報も得ていた。


投資先として吉次が決断するにはどちらも決定打に欠けていた。

蒲殿は吉次の情報だと兵を率いて戦う将帥の能力はあるらしい。しかしながら甲斐国を勢力に収めている武田が接触を始めているのが厄介だ。


義円は神宮十郎という弁士が接触の動きを見せているが、義円も神宮十郎も「戦える」という情報がない。

源頼朝や蒲殿よりは吉次が入り込む隙はある。

が、戦闘に弱ければ話にならない。


思案する吉次に面白い情報が入った。


平家のパレードに喧嘩を売ったパーティがいるという。

何でも仲間の一人が平家の主要人物の一人。平敦盛に拐かされそうになり、それを救うためにバトルになったらしい。

更に吉次の興味を引いたのは、そのパーティのリーダーが源頼朝、蒲殿、義円と同じく源氏の棟梁の遺児の可能性があるという。


(情報が本当なら……仲間を助けるために動く義侠心もある。平家の錚々たるメンバーと戦って切り抜けることができる戦力も胆力もある。ということになるんだけどねぇ)


吉次は腕を組む。


吉次は情報通だ。すでにそのパーティリーダーの情報はつかんでいる。

(源氏の棟梁の末っ子ねぇ。確か九男でしたかね。さすがに九男は若すぎて無いだろうと思ってたけどね。一度、会ってみる可能性はありそうだねぇ)


吉次が注目したのが2点。


擁立しようと接触している勢力がないこと。吉次がキングメーカーとして働きかけやすい。


そして義侠心だ。

打算が常に働く吉次には真似ができない心意気だ。さらに吉次が自分には才能がないと諦めた統率力に繋がる要素だ。


その2つをもっているかどうか?

吉次はパーティリーダー クロウに会ってみることにした。



【モデル紹介】

■堀景光

源義経の部下。義経と頼朝が対立後。捕縛され義経の居場所を自白した。

金商人でもある。義経が奥州へ向かう時に道案内をした金売吉次のモデルらしい。


■木曾義仲

朝日将軍。信濃で挙兵

倶利伽羅峠の戦いで平家を粉砕 京を攻め取る。その後、京の治安維持に失敗。

後白河法皇の要請受けた頼朝軍の将 義経に敗れる。


ちなみに木曾義仲の父は義経の父である義朝に敗れている。 

親子二代で勝てなかったか・・・


■山本義経

本作の甲斐入道のモデル

近江で挙兵。

以仁王を討った平家の武将を倒す。その後、平知盛に攻められ敗北。 

ちなみに”甲斐入道”は弟の名前です。


■武田信義

本作の武田のモデル

有名な武田信玄のご先祖様

甲斐で挙兵。源氏諸将と連携し平家戦う。その後、源頼朝に合流。


■源三位頼政

鵺退治で有名なお方。

以仁王と挙兵

保元の乱、平治の乱で活躍した老将。宇治川で平家に敗れ挙兵失敗


■源頼朝

鎌倉幕府を作った有名人

伊豆で挙兵。

平家を滅ぼし、源義経、上総広常、武田信義、藤原泰衡を滅ぼし最後の勝利者となった。


■源範頼

本作、蒲殿のモデル 

源平合戦では義経軍とは別の軍の大将とされる。九州を攻め平家を孤立させた。

本作では武田と接触してますが、武田ではなく安田義定と接触してます。


■義円

乙若丸。三井寺の僧侶。

三井寺の僧兵が以仁王や源頼政と合流し平家と戦ったのに、共に戦わずなぜか頼朝のところに行く。

頼朝から指示で神宮十郎と共に戦い、平重衡に敗れる。

本作では尾張三河で挙兵と史実から変更してます。


■神宮行家

本作、神宮十郎のモデル

源三位頼政の依頼で以仁王の令旨を全国に伝える。

その後、尾張で挙兵。

平家に敗れ、頼朝の元へ逃れる。その後、木曾義仲の元へ行き、木曾義仲と共に平家をやぶる。その後、単独で平家と戦うが敗北。

義経が頼朝と戦うことになった時、義経に味方した。

義理のステータス低い?


【お知らせ】

こちらも連載中です。よろしければ見ていただけると嬉しいです

■機動小隊レンジャーワン https://ncode.syosetu.com/n8156lf/


【お願い】

源平合戦というなろうではマニアックな題材を読んでいただき感謝

面白いとおもっていただけたら

ブックマークや評価いただけると嬉しいです

よろしくお願いします

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