第二十二話 Crossroads of Destiny その4
”平家が東に攻めてきた”と焦っている源頼朝サイドです。
時は少し遡る。
坂東平野の源頼朝は涙を流して喜んだ。
甲斐国の武田信義から共に戦おうという使者がきたのだ。
それも使者としてきたのが弟の蒲殿だ。
彼ら兄弟は覇王と天下を争った男の子供だ。
別の視点で見ると大貴族の子供だ。
彼らは別々に育てられるため会ったこともない。
会ったことはないが、血のつながった兄弟が、武田信義という大勢力をつれてきた。
ということが源頼朝にとってありがたかった。
今の彼の軍団は大きいが本当の意味での彼の軍団ではなかった。
実際は三勇者の軍団だ。
その三勇者も本当の味方とはまだ、考えにくかった
三浦はこちらをまだ値踏みしているような雰囲気があった。
上総にいたっては、源頼朝が道を外したら斬ると公言していた。
千葉は……よくわからないが。
そのような三勇者を宥め、時にわざと威厳をみせ、様々なペルソナの仮面をかぶることで綱渡りの軍団統御をしていた。
それでも何とか彼らの協力を取り付けられたのは、ひとえに彼らの性格によるところが大きい。
勇者と呼ばれるだけあって義侠心が強い。弱きを助け強きをくじくのだ。
その義侠心で伊東・大庭に敗れた源頼朝を救い、逆に追い払ってくれた。
それと、もう一つ。
彼らはアンチ都、アンチ朝廷なのだ。そのため味方してくれている。
決して、源頼朝への忠誠心ではないのだ。
そこを間違うと奈落の底におちる。
そのような状況の中、三勇者以外の勢力の参加は大歓迎だ。さらにそれが弟によってもたらされたのであれば軍団統御の選択肢が増える。例えば蒲殿に手柄を立てさせ、三勇者と互角の力を持たせるといった統制方法だ。
そのため、涙を流して喜んだ。
もっとも、その涙も。
かれにとって「兄弟の再開を喜んでいる」というペルソナの仮面をつけていることになるのだが。
今、平家軍団が武田や源頼朝を討つため東進しているという。
三勇者の軍勢で対抗するしかないのだが、正直、不安もあった。
三勇者はまだ源頼朝を値踏みしているフェイズだということを知っていたからだ。本当の意味での部下ではない。それは戦で重要な統制がとれないということでもある。下手すると烏合の衆となり負ける可能性も否定できない。
それに高齢でもある。
この不安のある中、武田軍がともに戦ってくれるという。
これで戦力的にも、統制的にも戦える算段がたった!
と源頼朝は思った。
この戦いは将来の戦力バランスを考え蒲殿や武田を立てるのがいい。
その方が生き残れる可能性があがる。
すばやく源頼朝はそのように計算した。
彼の目的はどう生き残るかだ。都にいって天下の旗をたてるといった野心などまったくない。
今回も以仁王の令旨を受けた者を処刑すると覇王が宣言しなければ、挙兵する気はミジンコほどもなかった。
処刑されたくない一心で立ち上がった。その結果は散々だ。
自分には荒事は向かないと嫌でも思い知らされた。
三勇者の義侠心でなんとか復活したが、平家軍団と戦えたとしても覇王と戦えるかどうか。
三勇者は傾国の魔王 玉藻御前を倒しているが
覇王も怨念の魔王 崇徳天を倒しているのだ。
こう考えると覇王の実力と三勇者の実力は互角に思える。
どっちが勝つか不明だ。
それは即ちギャンブルだ。
少しでも勝率をあげなければならない。と源頼朝は焦っていた。
そのために今回のような兄弟が大勢力をつれてくるというケースはありがたかった。
(俺にほかにも兄弟いなかったっけ? そういえば末っ子にクロウとかいたような……。クロウも蒲殿と同じようにどこかの勢力をつれてこないかな)
源頼朝は神仏に願った。
【お知らせ】
こちらも連載中です。よろしければ見ていただけると嬉しいです
■機動小隊レンジャーワン https://ncode.syosetu.com/n8156lf/
【あとがき】
吾妻鏡によると大場に負けた源頼朝を助けるため上総が駆けつけたら「遅い」と怒ったそうです。
マジか・・・(゜Д゜;)
八重姫のときといい、このお方は・・・
こんな作品ですが「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。




