第二十二話 Crossroads of Destiny その3
武田を攻める平家サイドです。
小松維盛は兵を東に進めていた。
この戦いに勝てば、以仁王の令旨で挙兵した全ての敵に黒星を与えることができた。
それは戦の終結を意味していた。
「やっと終わる」
これが小松維盛の正直な気持ちだ。
気がつけば、平知盛をはじめ周囲から次代を担う人材などと持ち上げられ、この戦場に立っていた。だが、自分が歴戦の戦士かと問われれば、
「違います」
としか言いようがない。
火炎将軍重衡のように苛烈でもなく
斎藤別当実盛のように熟達しているわけでもなく
平知盛のように知恵があるわけでもない。
何かの成り行きで総大将になっているだけだ。
というのが偽りのない気持ちだ。
だから、今もこれから敵を殲滅するぞというよりは、やーっと終わったというのが正直なところだ。
「正直、武田はいいとしても坂東武者とは戦いたくないしなぁ」
小松維盛はぽつりと言った。
彼の傍で行軍をしていた斎藤別当実盛が今の発言を聞き咎めた。
「これ、総大将がそのようなことをいうもんではない」
「いや、だけどよ。元はと言えばアンタの所為だぜ」
「儂の? なんでじゃ?」
「前の戦で言ってだろ。小さな子供だった木曽義仲を敗将の子だからと言う理由で殺そうとした坂東武者の話を。その木曽義仲を救ったのがアンタだよね」
「そうじゃ。勝敗は戦士をやっていると必ずついてくるもの。負けて本人が戦死するのはしかたない。当然じゃ。戦士とはそういう生き方じゃからな。しかし、負けた子の命を奪うのは違うと儂は考えている」
「そうだよな。俺も覇王様も同じ考えだ。でも坂東武者はちがう。敵だとみれば戦に参加していない子も殺す。正直こえーよ」
「奴らの本質は修羅じゃからのう」
だから、甲斐の武田と戦うのはまだいいとしても、坂東の戦士と戦うのはなぁ……。と思ったのさ」
「だからと言って総大将がそれを言っちゃだめじゃ。周りの兵がそれを聞けば何と思うかわからんぞ。坂東に修羅と言う鬼がいるぞと言っているようなもんじゃ。好んで戦おうと思わなくなるわい」
「あ」
維盛は周りを見渡した。
今、東に向けての行軍中だ。
当然、周りにも将兵がいる。今の会話はすでに聞こえていた。
「今から取り消しはできないよね」
「当然じゃ」
斎藤別当実盛はため息をついた。
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【あとがき】
斎藤別当実盛の言う通り取り消しできないのは怖いっす。
メールで間違った文章を送ったときにはもう・・・一日凹みます。
このエピソードは「平家物語」の「富士川」の有名エピソードをアレンジしてます。ご興味あるかたは「平家物語」見てみるのもいいかも。本作品をもとに源平の英勇や平家物語や義経記。また他の方の源平の作品にご興味を持っていただけたら嬉しいです。
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