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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第三章 朝日将軍
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第二十一話 再び魔王があらわれた その1

第三章スタートしました

本章は木曽義仲が物語の中心になります

越後の城助職を破った木曽義仲はそのまま侵攻をつづけた。


越中では以仁王の遺児である北陸宮を迎え入れた。

このことは”以仁王の意思を継ぐのは木曽義仲だ”という大義名分を得たことに等しい。


その錦の御旗(北陸宮)のいる木曽義仲へ味方する武将が続々と増えた。

千客万来だ。

その中には義円とともに尾張三河で挙兵し、火炎将軍重衡・小松維盛に敗れた神宮十郎もいた。


神宮十郎は敗れた後、木曽義仲への合流を目指した。


一度誘ってくれた縁もあった。

そして木曽義仲は反平家の中では唯一、連勝していた。

将来有望とみたのだ。


懸念があるとすれば、それは木曽義仲の周囲だ。

彼の周りには常に今井・樋口・根井・楯・巴がいた。

木曽義仲の勢力の中では、神宮十郎は№2になれないのだ。


そのため義円を動かし、彼と共に尾張三河で挙兵したが、結果は散々であった。


神宮十郎は学習した。

№2になれたとしてもその組織が無くなってしまえば意味がないということを。


(仕方ない。いったん、木曽義仲の将に甘んじよう。彼は都のことに詳しくない。彼の周囲にいる今井達はもっと知らないだろう。俺が必要となるときはくる)

神宮十郎はそう思い直し、木曽義仲の元へ敗残の尾張三河兵をつれて参陣した。


木曽義仲は単純だ。

素直に神宮十郎の参加を喜んだ。

今井達はもっと単純だ。仲間が増えたと喜んだ。


神宮十郎はさすがに一度、断った手前、都合が悪かったが……

「令旨を届ける仕事は終わったか! 俺のところに来てくれてうれしいぞ」

と木曽義仲が快活にバンバン肩を叩きながら迎え入れたので、そのまま甘えることにした。


神宮十郎が敗残の尾張三河兵をかき集めたのは見栄と打算だ。

たった一人で参加するよりも、軍勢として参加したほうが重んじられ立場が良くなる。

一人ならごく潰しに見られるが、軍勢だと戦力とみなされる。


この神宮十郎の目論見は成功し、木曽義仲の軍団の中で将として扱われることになった。




この神宮十郎もそうだが、北陸宮を擁する木曽義仲に将兵が集まった。

今や信濃・越後・越中・能登・加賀の五か国を影響化にもつ大勢力だ。

そして、木曽義仲軍はそのまま越前国に兵を進めた。

越前国を得たなら都は目と鼻の先だ。


途中、近江国があるが、そこで勢力を持つ甲斐入道は木曽義仲と同じく、以仁王の令旨を受け取った群雄の一人だ。

連携して都に攻め入ることも可能になる。


つまり木曽義仲が越前国を獲ったら王手だ。


これに都にいる平家も対応する必要に迫られた。

平家の頭脳である平知盛は将兵を派遣。


これに木曽義仲の宿将で情報通の根井がいちはやく対応。

先手必勝とばかりに近江国に近い水津に陣を展開した。


ここで根井とともに出陣した神宮十郎が根井にアドバイスを送った。

「敵は兵糧不足で短期決戦を狙っています。こちらはそれに付き合う必要はない。逆に押してくれば引き、引けば押すことで敵の消耗を狙いましょう。敵は食糧不足に陥り、勝手に退くでしょう」


神宮十郎は以仁王の令旨を全国に届けた。

その結果、全国で挙兵するであろう英雄や規模はある程度、把握できている。

平家はその挙兵に対応しなければならない。


もぐら叩きのスタートだ。

そして、このもぐら叩き。100円を入れるかわりに兵糧が必要だ。


つまり平家はもぐら叩きのため兵糧を大量に消耗することになる。

さらに東日本で挙兵が相次いだ場合、東日本からの米の共有は途絶える。


そして、神宮十郎は全国を回るうちに

「今年の米の実入りが悪い」という情報も得ていた。


兵糧の大量消耗と供給不足

このことを知っていた神宮十郎は持久戦を提案した。


根井は勇猛果敢な木曽義仲の配下の中では情報を重要視する。

そのため神宮十郎のアドバイスに理解を示した。


「ありがてぇ。正直、俺一人でどうしようかとおもってたっす」

根井は神宮十郎の手をとって喜んだ。


耳が早い根井は、平家が攻めてきたという情報をいちはやくキャッチし、先行した。

しかし、正直なところ、たった一人で平家の相手をすることに対して不安だった。


そこに神宮十郎の神アドバイスだ。

根井は素直に従った。


敵が攻めてきたら、さーっと逃げて、後ろや横に控えていた伏兵で攻撃する。

狙うは敵の食料だ。


敵が反転して

食料を狙った伏兵を攻めたら、本体がその後ろを攻める。


この作戦で食料を失った平家は撤退した。

都で戦略を指揮する平知盛もこれは読み切れなかった。

こんな戦い方をされたら剣も魔法も意味がない。


戦況が根井達に傾くと、裏切り者まで現れ、それが決定打となったのだ。


「やったーっ」

大将の木曽義仲に頼らず、平家を撤退させた根井は無邪気に喜んだ。

この戦い方だと将兵の犠牲も少ない。それも根井を喜ばせた。

誰でも見知った人が死ぬのは嫌だ。

兵たちも喜んでいた。


この状況に眉をひそめている男がいる。

神宮十郎だ。


彼は平家が撤退した今こそ、追撃するべきだと考えた。

今回、平家は舐めプした。


兵糧不足での撤退ということが、それを物語っている。


次は本気で来る。

平家を壊滅させたわけではないのだ。

兵力は十分残っている。


神宮十郎は考えた。

(平家は対策してくる。兵糧を多く持っていくか。 逆に大軍で一気に圧し潰す短期決戦を狙うか。このいずれかだろう。そうなると、根井では支えきれない。越前国を失う。ならば今、撤退している平家を追撃し、壊滅させ、兵力を減らし、うかつに越前国に手を出せないと思わせる必要がある)


ここまで考えた彼は根井に追撃を進言した。

「え?」

根井はきょとんとした。


みんなが戦勝で喜んでいた。

勝ったからそれでいいじゃないか。

というのが根井を含めた大多数の意見だった。


それに根井はやはり不安だった。

大将の木曽義仲が不在ということを

今井達仲間がいないことを


攻めるなら仲間と一緒にと考えていた。

自分だけで攻めるなんて恐ろしいことは考えもしなかった。

彼の名乗りは”安全第一”だ。


そのため神宮十郎が追撃を進言しても、誰も動かなかった。

神宮十郎は誰もいない場所に一人で赴くと、ぼさぼさ頭を掻きむしり

「くそがっ!」

と吐き捨てた。


しかし、それをみんなの前で言うわけにはいかない。そうなったらこの木曽義仲軍を離れなければいけない。


彼は義円との挙兵で学んだのだ。どんな考えであっても勝てなければ元も子もないと。

そのため我慢した。

今、平家に勝てる可能性があるのは木曽義仲軍だからだ。

この組織に属していることに意味がある。


その内、「ざまぁ」展開が来ることを信じて神宮十郎は沈黙した。

【お知らせ】

こちらも連載中です。よろしければ見ていただけると嬉しいです

■機動小隊レンジャーワン https://ncode.syosetu.com/n8156lf/


【あとがき】

第三章はネイ様勝利からのスタートです。

剣も魔法も兵糧攻めに弱かった。という本作のタイトル否定の勝利です。


元ネタは水津の戦い。ご興味あるかたはググってみてください。本作でどうアレンジしているかがわかります。


「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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