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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第一章 英雄集結
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第四話 ○○がパーティーから外れました その5

追っ手はこない。

鮮やかな奇襲と逃走劇。

降り注ぐ雷に平家一党はクロウ達を追うことはできず見送るだけだった。


「ああ、あのような、いい女。中々いないのに」

敦盛が悔しがっている。

「敦盛殿。諦めるのは早いかもしれませんぞ」

知盛が敦盛に助言する。

「え?」

「もしかしたら容易に居場所がわかるかもしれません」

「本当ですか? さすが知盛様」

パァっと笑顔になって喜ぶ敦盛。


(一瞬ではあったが、あれは源氏の棟梁の子ではないか?)

知盛は思案する。

(平家のパレードを妨害した罪は償ってもらわないとね。民衆に示しがつかないんのでですよ。)


ちなみにこの平家のパレードの主である覇王の子 平宗盛は牛舎の中でつぶやいた。

「……何?」

何事もなく車に乗っていたはずが、いつの間にか異常な騒ぎに巻き込まれ、状況が呑み込めずにいた。



・・・・

・・・・

・・・・・


クロウは笑みを浮かべている。

(フン、平家も大したことはないな)

先ほどの戦闘に満足した。


先ほどの相手は平家のオールスターだった。

クロウが覇王となるためには倒さねばならぬ強敵達。

その強敵達に想定外に戦えた。

この事実に手ごたえを感じた。


一方、皆鶴姫は落ち込んでいた。

(剣さえあれば)

剣さえあればあのように手も足も出ないという事態は避けられた。

少なくとも自らの剣で危地を脱することぐらいは出来た自負がある。

陵介もダメージを追うこともなかった。


変装してクロウを尾行するなんて考えなければ。

という後悔が皆鶴姫の心を沈ませていた。


その陵介は…………

火傷のダメージを受け息を荒くしていた。


「こっびどくやられたねぇ」

静が合流する。

静は得意の降神魔法で雷神を降ろし、平家一党の目の届かない場所から轟雷を落とし援護に徹していた。

クロウ達が無事離脱したことを見届けて静も戦場エリアを離脱したのだ。


「すいません。私が不甲斐ないばかりに、皆さまにご迷惑をおかけしました」

皆鶴姫がみんなに謝る。


クロウと静がキョトンとする。


「はあ? 仲間じゃん。助けるのは普通でしょ。謝られると逆に困るんだけど……ま、強いて言うなら“ありがとう”かな」

そう言って静は皆鶴姫の首をヘッドロックし、髪をくしゃくしゃに撫でた。


「ああ。逆にすまなかった。助けに行くのが遅れた」

クロウが皆鶴姫と陵介に謝った。


(助けに行くのが遅れた!?)

陵介の顔が歪む。

(俺は、俺も、クロウにとって助けられる対象か!)

陵介の中で何かが弾けた。


陵介は起き上がる。

ダメージを受けている身だ。動きはぎこちない。


「陵介!」

静と皆鶴姫が心配して声をかける。

クロウも眉を顰め

「無理するな」

と普段に無い優しい声をかけた。


(クロウにとって俺も心配される対象かよ)

陵介は剣をとった。


「クロウ。頼みがある」

「何だ?」


「俺と戦ってくれ」


クロウは眉を顰める。

陵介の真意を測りかねているようだ。


「何言ってるの。あんた馬鹿じゃないの? その体でクロウと戦うの? 理由は?」

静が陵介の両肩をつかんで揺すった。


正直、それだけで先の戦闘の傷が残っている陵介はダメージを受け、今にもKOされそうだ。

(だけどな。ここで引いちゃ、俺が可哀そうすぎるんだよ)

陵介はそっと静を手で退ける。


そして……

「坂東武者の矜持だ」

これだけを言った。


クロウはしばらく黙っていた。

陵介の言葉を咀嚼するように。

永遠ともとれる時間が流れた。


そして

「そうか」

と言ってクロウは魔法剣-薄緑-を発現させた。


陵介の希望に沿って戦うらしい。


「ちょ、クロウも何考えてんの? 陵介は瀕死なんだよ」


「ああ」

クロウはそれだけを言った。

しかし、戦闘の構えは解かない。珍しく難しい顔をしていた。


「陵介殿もお待ちください。無謀です」

皆鶴姫も陵介を心配し声をかける。

皆鶴姫はその怪我した体では無謀だと伝えたつもりだった。

しかし

(俺がクロウに挑むのが無謀だってかよ)

陵介は別の意味に解釈した。


「オン・ケンダヤ・ソワカ」

陵介は魔法を唱える。

体に炎をまとわせ身体能力をあげる。

これでダメージを受けた体でも多少はマシに動ける。


「ぬおおおっ」

陵介は静と皆鶴姫を退け、裂帛の気合でクロウに斬りかかる。


対するクロウは……

容赦がなかった。


探るような太刀筋はない。

首を狙い、わざと傷を庇わせるように剣を振るう。

動きのにぶい陵介相手にフットワークで対応。背中から攻撃する。


静は「鬼だ。こいつ」と呟いた。



結果は言うまでもない。

陵介は倒れた。

だが、その表情は……涙を流し笑っていた。


「ははは、すげーな。これが覇王になる男の力か」


「当たり前だ」

クロウは魔法剣を解除した。

その表情は複雑だ。


「当たり前か。そうか。そうだな」

陵介は上半身だけ体を起こした。


「なあ、クロウ」


「なんだ」

「俺、坂東に帰るわ」


となりで静と皆鶴姫の息を飲む音がした。

クロウは複雑な表情をしている。


「お前の横にいる限り、俺は一生“守られる側”だ」


クロウは複雑な表情をしている。


間が続く。

やがて……

「そうか」

と絞り出すようにその3文字だけを言った。


「ああ」

と陵介は笑った。


翌日―。

陵介がクロウの下から去った。

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