第二十話 クエストを受けますか?:クロウの選択 その3
クロウ達は達谷窟ダンジョンを攻略した。
彼はその証を持参していた。
ボス部屋にあるという古の黄金の彫刻。それを持ってきた。
母太郎は「偽造だ。まやかしだ」と根拠のなく騒いで奥州王から拳骨を落とされていた。
佐藤継信は驚いていた。
(神域から脱出するだけでなく魔王のいる達谷窟も完全攻略ですか)
もはや、その実力は疑いようもない。神にも魔王にも対抗できるのだ
初のダンジョン攻略者が現れたということで首都平泉はちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。
お祭りになると人が集まる。
人が集まると情報交換が活発になる。
その情報の中にクロウが驚く内容があった。
”以仁王が打倒覇王の令旨を全国の戦士・領主に下した”
というのだ。
そして
”そのため全国の戦士・領主が立ち上がった”
という。
クロウが奥州にいる間に世の中が動いた。
クロウの目標は打倒覇王だ。
「俺を超えるか。楽しみにしているぞ」
と覇王はクロウに対して笑った。その光景はいまでも覚えている。
そして……
クロウもまた成長している。
この平泉で奥州王と接し、少しは治世というものがクロウはわかったきた。
かつて外来の魔王クマラが言った。
「覇王になった後、どうするか? 考えておいたほうがいいよ」
都でその日の飯にありつけないスラムの子供達を見た。
それを見たとき「覇王何やってるんだ」と憤った。スラムの発生は覇王の治世の結果だからだ。
坂東・奥州へ向かう途中、何度も盗賊に襲われた。
これにもクロウは憤っていた。これだけ道中の治安が悪いのも覇王の治世の結果だ。
そのためモノ・情報が流れない。富めるところは富み、そうでないところはそのままだ。
力があるものが他の人の所有物を奪う。殺す。
奪われた側、殺された側の事情など斟酌しない。
それが公然とまかり通っている。
片岡八郎や片岡春の実家がそうだ。
今回もたらされた情報では覇王、自らが略奪者となって他の領地を奪っているという。
(何をやってるんだ覇王は)
ここまでくるとクロウは憤りを通り越して、呆れてきた。
これではまるで戦いには興味あるが、治世に興味がない、一介の戦士だ。
その戦士が天下を獲った結果。
子供が飢えた。
野盗が溢れ、略奪が正義となった。
再度、外来の魔王クマラの言葉がクロウの耳に聞こえる。
「覇王になった後、どうするか? 考えておいたほうがいいよ」
クロウは今、奥州王の元にいる。
飢えはない。野盗もなく、略奪とは縁遠い。
飯もうまい。ここの米ひとつとっても艶が違う。甘みも違う。
奥州王が極楽浄土をこの地につくりたいと願って作り上げたこの地は
あまりにも覇王の治世と違い過ぎた。
そしてクロウはこの地を知ってしまった。
全ての子供達が健やかに過ごせる理想郷を
自分が願って、願っても手に入れることができなかった家族の愛を全ての子供たちが享受できる場所を
三度、外来の魔王クマラの言葉がクロウの耳に聞こえる。
「覇王になった後、どうするか? 考えておいたほうがいいよ」
奥州までの旅の間、クロウの思考……いや、目標に変化があった。
今までは打倒覇王だった。
漢としてテッペンを目指す。
しかし、クロウはテッペンを獲った後を意識するようになった。
クロウには憧れがある。
それは家族だ。
彼の父はいなし。覇王と戦い戦死した。
母は復讐のみを願い、魔王 崇徳天に縋った。
母の意識は常に復讐に向けられていた、クロウに向くことは無かった。
母は復讐を愛した。
そしてクロウは、復讐にやぶれた。
もはや届かないクロウの憧れ。
家族の愛を受けたいというささやかな願い。
クロウは理解している。それはもう自分の手から離れ手に入らないということを。
ただ
ただ、自分と同じ思いをする子は減らしたい。
そう思った。
だから覇王の治世に憤った。
そして―
クロウの中にもう一つの夢が少しづつだが育っていた。
“子供が家族の愛をうけることができる世界をつくりたい”
そして今までの打倒覇王の目標は、その育ちつつある夢の通過点になった。
(覇王を倒すだけじゃだめだ。覇王を倒し、俺の夢を実現させる。もう、覇王に任せてはおけない)
クロウは新たに育ちつつある夢のために挙兵することを決めた。
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【あとがき】
旅の中、目標が変化してきたクロウです。
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