第十九話 決戦! 川中島 その5
木曽義仲は越後勢を撃退した。
「兄貴! やったな」
「10倍の敵相手に完勝だぜ」
「俺達つよくね?」
「作戦成功ね」
今井、樋口、根井、巴が口々に戦いの後の感想を述べた。
この戦いは木曽義仲の完勝に終わった。
この勝利で得たものは大きい。
寡兵で大軍を退けたのだ。
信濃国の戦士、領主は木曽義仲を信濃国の王と認め恭順した。
つまり信濃国を得たのだ。
また、この勝利で越後国に攻めることができるようになった。
実際にこの後、大きな戦いもなく越後の戦士、領主は木曽義仲に恭順した。
城助職よりも木曽義仲の方が強いということが認知された結果だ。
越後国も手に入れたも同然となった。
越後を得たということは越中、越前と進み、都に至る道を得たということだ。
そして―
平知盛に倒された以仁王の子 北陸宮と木曽義仲は出会った。
北陸宮は以仁王が倒された後、逃亡先を探していた。
一番、近いのは近江だ。
甲斐入道が以仁王の令旨を受け、挙兵していた。
しかし、一番近いということは一番危険ということだ。
特に以仁王や源三位頼政に味方した三井寺が近江にある。
平家が報復に攻めてくる可能性があった。
坂東平野の源頼朝も大庭、伊藤に敗れていた。
そこも危険だ。
西は平家の勢力内だ。
残る選択肢は北陸道だ。
そのため北陸宮は側近≪メイド≫とともに北陸道を北上した。
越後国には城助職という平家側の大領主がいたため。越後国には行かず、その手前の越中に潜伏した。
そこに信濃国を得、越後国を得た木曽義仲が軍勢を率いてきた。
最終ゴールの都にいくために。
木曽義仲は北陸道では有名人になっていた。
対平家戦で連勝。寡兵で大軍を倒した軍神。
これが木曽義仲の評価だ。
潜伏していた北陸宮と側近≪メイド≫は平家に連勝し、父である以仁王の令旨のミッションを実行している木曽義仲こそ頼るべき人物だと思った。
そのため木曽義仲に会いに行った。
「それは本当かーっ!」
木曽義仲が立った。
彼は巨漢だ。
自然、周囲の人間を睥睨するような格好になった。
彼が立ち上がったのは、以仁王が平家に倒されたという話を北陸宮の側近≪メイド≫から聞いたからだ。
木曽義仲は尋ねてきた北陸宮をすぐに城の客間に招き入れた。
そこでそのニュースを聞いた。
木曽義仲は北陸宮を見た。
彼は”父を亡くした子”という目で北陸宮を見た。
木曽義仲は北陸宮に近づき、両肩をがしっと掴んだ。
そして両目からぶわっと滝の様な涙を流した。
「なんということだ! 大変だっただろう。安心してくれ。この木曽義仲が守る」
彼は本心から言った。木曽義仲にとって北陸宮は貴種ではなく、守ってあげなくてはならない”みなしご”だ。
巴も北陸宮に近づき
「かわいそうに。つらかったね」
とぎゅっと抱きしめ、頭を撫でた。
北陸宮の側近≪メイド≫が睨むが、巴は気にしていない。
若い北陸宮は顔を真っ赤にしていた。
木曽義仲たちはヤンチャだが、それだけに人情家だ。
純粋に親を失ったこの子≪北陸宮≫を守ってやりたいと思った。
「それにしても法皇を幽閉して、土地を取り上げ、以仁王を殺害するってある意味スゲーな」
「ヘン、チョーシにのってるんだろうよ」
「一度、痛い目にあわせないといけないようね」
今井、樋口、巴が口々に言う。
その言葉を聞き木曽義仲は大きく頷いた
「行くぞ! 都へ」
「「「応」」」
木曽義仲の号令の下、仲間たちが応じた。
それを見て
若い北陸宮は頼もしく思い
側近≪メイド≫はその粗野な振る舞いに眉をしかめた。
木曽義仲は知らない。
北陸宮と一緒に都へ向かうという意味を
北陸宮は法皇の子 以仁王の子だ。
つまり法皇の孫だ。
法皇の孫と一緒に都へ攻め上る。
仮に都に攻めていったとしても侵略者ではなくなった。
逆に覇王や平家が妨害してきたら法皇の孫が都へ戻ることを妨げる逆賊となる。
以仁王の令旨という錦の御旗もあるが、実際に生存している帝の血筋の子がいるというのは、それ以上に都へいく理由として強い。
以仁王の令旨だけなら覇王や平家を倒すのが目的だ。別に都に行かずに近隣の平家を倒すという選択肢もなくはない。
北陸宮を都へ帰すなら、都に行く必要がある。
木曽義仲が都へむかう正当な理由ができたのだ。
彼らはその政治的な意味を知らずに純粋に北陸宮を都に帰してあげたいという気持ちから都を目指す。
【モデル紹介】
■北陸宮
以仁王の子。後白河法皇の孫 父親の戦死後、北陸道へ逃げる。
その先で木曽義仲と出会った。
■藤原重季
本作のメイドのモデル
北陸宮を出家させて保護し、北陸へ逃がす。
【お知らせ】
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【あとがき】
次話から主人公のクロウがやっと出てきます。
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