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剣と魔法の義経記  作者: 久手史郎
第二章 覇王包囲網
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第十九話 決戦! 川中島 その4

越後国の城助職は信濃国を攻めた。

城助職は越後兵を率いて信濃国に進攻。

なにしろ4万という大軍だ。


普通に考えたら、とても立ち向かえない。

信濃国の戦士達は抵抗よりも降伏を選ぶものが多かった。


もちろん、骨のある戦士もいた。

しかし、数の暴力で蹂躙……いや、圧殺された。


この越後兵を率いている城助職はご満悦だ。

「見てください景清様。敵なしですよ。これなら木曽義仲を倒すのも容易でしょう」

隣で馬を並べる悪七兵衛景清に自慢した。

「そうだな。数の力と言うのはすごいものだ」

悪七兵衛景清は素直に感心した。

そして、

(これは俺の出番はないな)

とガッカリしていた。


なにしろ戦にならないのだ。降伏してくるか、数に圧殺されるかの2択だ。

悪七兵衛景清は越後の富力を最大限に活かした戦略の力を感じ取っていた。

それは、まさに富国強兵の力だった。


その力を見せつけられた悪七兵衛景清は警戒を解いた。

悪七兵衛景清は目のハンデがある。それを補うため魔剣の力を使用している。

これは無限に使えるような都合の良い力ではなく、魔力を消費する。

長い時間使用すると、魔力消費量が増え、疲労が蓄積させるのだ。

出番がないのに疲れるのは馬鹿らしい。

そのため魔剣に魔力をこめるのをやめた。

彼の周囲から闇が消えた。


(すまんな、知盛。平家の力を見せる出番はないようだ)

悪七兵衛景清は遥か都にいる平知盛に謝った。


しばらくすると軍勢が近づいてきた。

その軍勢は赤旗を振っていた。

(また、降伏か)

悪七兵衛景清はため息をついた。

赤は平家の色だ。赤旗をもっているということは平家に味方するという意思表示だ。つまり降伏ということだ。


これで何度目かわからない。

もう数えることも面倒なくらい降伏するものが多い。


城助職がにこやかな顔で出迎えの準備をしていた。

彼はご機嫌だ。

兵力は増える。信濃国の領土は増える。

最高の結果だ。


城助職は降伏してきた敵将と会った。


その時。


降伏してきた軍勢の赤旗は白に変わった。

白は平家の色ではない。つまり平家の敵という意思表示だ。


「ぐわぁ!」

城助職の悲鳴が聞こえた。


悪七兵衛景清が慌てて城助職の元へ駆ける。

城助職は敵将に斬られていた。


「木曽義仲様の将。今井だ。 喧嘩上等、よろしく!」

敵将が名乗りをあげた。


(まずい!)

悪七兵衛景清は走る。

ここで城助職が倒されるのは非常にまずい。

下手をすると信濃国を切り取るどころか越後国を失うことになる。


悪七兵衛景清は城助職を救うために駆けた。


その時、別なところからも歓声があがる。

越後軍のど真ん中に白旗があがった。

同時に周囲の越後兵が倒される。

「木曽義仲様の将。楯だ。 不撓不屈 夜露死苦!」

敵将が名乗りをあげる。


(あれは先に降伏した信濃兵! 降伏は嘘だったのか)

悪七兵衛景清は舌打ちをした。


越後兵は混乱した。

大将の城助職が斬られ、味方のど真ん中に敵が現れたのだ。

混乱しないほうがおかしい。


そして、それは平家にとって負の連鎖となった。

楯以外の先に降伏していた信濃勢も反旗を翻した。


もはや、誰が敵で、誰が味方かわからない。


「援軍がきたぞ!」

戦場に声が響く。

その声のあったほうを見ると赤旗を掲げた軍勢がこちらにむかってきた。


(あれは本当に援軍か?)

誰もがそう思い、どう動いていいか躊躇った。


援軍は近くまでくると、旗を白に変えた。敵だったのだ。

「木曽義仲様の将。樋口だ。 疾風迅雷 夜露死苦!」

新たに現れた敵将はそう名乗ると、斬りこんできた。


もはや越後軍は軍団の形を維持できなくなっていた。


(せめて、城助職だけは回収する。越後国まで取られるわけにはいかないのでな)

悪七兵衛景清は城助職にトドメを刺そうとしていた敵将 今井に斬りかかる。


今井も「上等!」と叫び剣を合わせてきた。

剣を何合か打ち合う。

(こいつ! 我流で腕がいい。厄介だ。我流だから剣筋が読めない。その癖、腕がいい)

悪七兵衛景清は今井の腕に感心した。


「このまま純粋に剣技を競っていたいところだが、城助職をすくわなければならない。悪く思うな。 魔剣―癡-」

悪七兵衛景清は魔剣の権能を発動させた。

魔剣から闇が噴き出す。

その闇は今井だけではなく、今井の率いる兵達も飲み込んだ。

この闇の効果はシンプルだ。

敵は一切、見えなくなる。一方、悪七兵衛景清はこの闇の中全て見える。

「卑怯者! 出てこい!」

今井が叫んでいる。


「俺もそう思うが、圧倒的強さを見せなければならないのでな」

悪七兵衛景清は今井にむかって剣を横なぎに一閃させる。


今井にはその剣筋は見えない。

しかし、喧嘩馴れした、その感で、振るわれた横なぎの剣を持っている剣で受けた。

ただ、体制が悪すぎた。

そのまま今井は吹き飛んだ。


「妙音成仏 地神 荒神」

悪七兵衛景清は魔法を唱えた。

この魔法は音波でダメージを与える魔法だ。


この音波はあらゆる防御を貫通する。

今井。そして信濃国の将兵はこの音波攻撃を受けて倒れた。


この魔法。

傍から見ると、地獄のリサイタルで破滅的な殺人級の歌声を聞いて倒れていったように見えるのが弱点だ。

悪七兵衛景清はこの魔法を使うとき、

(俺はここまで歌は下手じゃないからな。これはあくまでも魔法の効果だからな)

と心の中で言い訳している。


(木曽義仲の作戦は複数の伏兵による五月雨式の攻撃か。しかし、今井隊をここで破った。まだ、まだいける)

悪七兵衛景清はそう考え闘気を漲らせた。


(次はあの中央で暴れている部隊だ)

悪七兵衛景清は次のターゲットを決めた。


今井隊に真っ先に向かったのは大将の城助職を救出するためだ。彼に生き残ってもらわないと、この戦いだけではなく越後国の統治に影響がでる。

その目的は達した。今井を破り城助職の救助に成功した。……瀕死ではあるが……


あとは敵を片付けるだけだ。


敵の要は中央に陣取る楯の部隊だ。

この部隊が、越後軍のど真ん中にいるため連携がとれない。分裂状態になっていた。

しかも、この部隊。

守りが固い。

敵軍のど真ん中にいるのに崩れないのだ。


逆にこの部隊を崩せば、この混乱状態から復活し、立て直しも可能だ。

悪七兵衛景清は楯の部隊に向けて駆けだそうとした。


その時。


大きな喚声がおきた。

振り返ると敵の本隊が突撃をしかけていた。


「木曽義仲様の将。巴。 百花繚乱 夜露死苦!」

「木曽義仲様の将。根井だ。 安全第一 夜露死苦!」

二人の敵将が騎馬を走らせ越後兵をなぎ倒しながら突っ込んできた。


(挟まれたか!)

悪七兵衛景清は唇を嚙んだ。

本隊が突撃してくるタイミングがドンピシャだ。


悪七兵衛景清は楯の方に行くか。それとも新たに突っ込んできた巴、根井の方にいくか迷った。

この迷いが。判断の遅れが彼の初動を遅らせた。


巴と根井が左右にわかれる。


その間から一人の大きな戦士が騎馬を走らせて、悪七兵衛景清へむかってきた。

信濃軍の総大将 木曽義仲だ。


「くっ。魔剣―癡-」

悪七兵衛景清が急ぎ、魔剣を発動させる。

闇が剣から噴き出る。そして広がる。

「邪魔だぁ! 南無八幡台菩薩―旭―」

木曽義仲が魔法を発動させた。


剣から光が放たれる。

闇が光に打ち消され消滅した。


(くっ。何もわからん)

悪七兵衛景清は盲目の戦士だ。

魔剣―癡-から発生する闇の中でだけは見ることができる。

そのため自分の周囲には常に闇を発生させていた。


その闇を消された。

何も見えない。


さらに木曽義仲が発生させた光は気配も音も消滅させた。


(くっ何も感じぬ。何も聞こえぬ)

悪七兵衛景清は目が見えない分、他の感覚が優れている。

魔剣との併用で、常人以上の感覚を発揮していた。


その感覚がすべて使用不可となった。


本来なら剣戟の音、雄たけび、喚声が聞こえる戦場。

しかし悪七兵衛景清にとって無の世界となった。


それでもだ。


悪七兵衛景清は平知盛が信頼する将だ。

何かの直感が働いたか、剣を振る。


その剣が何か固いものにあたった。

感触から敵の剣だということがわかった。

敵の剣の攻撃を防いだのだ。


状況的に木曽義仲の剣だ。


木曽義仲が光で五感を封じ斬り込んできたのだ。


それを直感と幸運を味方につけ防ぐことができた。


しかし、悪七兵衛景清にできたのはここまでだった。


直感と幸運を味方につけ防ぐことはできたとはいえ、体勢は不十分。

木曽義仲の巨体から繰り出される一撃を防ぐには至らない。


そのまま吹き飛ばされた。

【お知らせ】

こちらも連載中です。よろしければ見ていただけると嬉しいです

■機動小隊レンジャーワン https://ncode.syosetu.com/n8156lf/


【あとがき】

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