第十九話 決戦! 川中島 その3
「それは本当かーっ!」
木曽義仲が立った。
彼は巨漢だ。
自然、周囲の人間を睥睨するような格好になった。
彼が立ち上がったのは、越後兵4万が南下したというニュースを聞いたからだ。
4万の兵がただ移動のために来るわけがない。
信濃国を獲りに攻めてきたのだ。
木曽義仲は新宮十郎から以仁王の領事を受け取った後、攻めてきた平吾を撃破。
その後、地盤を固めるために信濃国の諸豪族を時に攻め、時に仲間にひきいれ、信濃国の切り取りを進めていた。
木曽義仲の拠点は木曽谷。
信濃国の南側だ。
切り取りを進めていくということは北上していくことになる。
自然に越後兵とぶつかる。
「兄貴どうする?」
根井が聞いてきた。
木曽義仲には仲間がいる。
仲間と言うより腐れ縁。幼馴染……というよりは悪ガキ仲間だ。
ヤンチャするときはいつも一緒の連中だ。
自然と木曽義仲の挙兵に付き添い
自然と譜代の家臣みたいなポジションになっている。
名前は今井、樋口、根井、楯、巴
今井と樋口はツートップ。常に木曽義仲の両脇を固めていた。
髪をおったてているのが今井で、天然パーマが樋口だ。
根井は使いパシリが多い。いつもどこかにいて、どこかから情報をもってくる
楯は粘り強く、守りに定評がある。楯がタンク役をやっている間に他のメンバーが横や後ろからぶん殴るというのが必勝パターンだ。彼らの間で「いつもの」と言えば、大体、その作戦だ。ちなみに、そのような役割だからか、傷だらけで見た目が一番怖い。
巴は紅一点。武器や馬の扱いは根井よりうまい。引き締まった肉体≪プロポーション≫で髪をポニーテールに結んでいた。
「俺達のナワバリを荒らそうっていうんだろ上等じゃねぇか」
「喧嘩売ってきたんだ。買わなきゃならねぇな」
「腕が鳴るねぇ」
今井、樋口、巴が口々に好戦的なセリフをはく。
要は「なめられてたまるか!」ということだ。
楯も頷いていた。
木曽義仲は頷き
「人数はぁ!」
と根井に聞いた。
敵の数を聞いたのだ。
気心の知れた相手だ、これだけで意味は伝わる。
「4万騎らしいですぜ」
根井はどういう伝手をもっているのか。耳が早い。
木曽義仲は彼の情報力を重宝していた。
ちなみに木曽義仲の軍は平五と戦ったときよりも、信濃国の戦士達を併合して増えたが万には届かない。5千がいいところだ。
兵数にかなり差があった。
通常なら降伏してもおかしくない兵力差だ。
しかし、木曽義仲と愉快な仲間たちは通常の思考はしない。
喧嘩上等が彼らのスタンスだ。
それに彼らは負けるとは思っていなかった。
「4万か。まあ、勝てるだろ」
木曽義仲はにやりと笑う。
「“いつもの”でいくぞ」
木曽義仲が作戦を伝える。
もっとも作戦と言っても“いつもの”だ。
「「「おっしゃー!」」」
今井達が闘気を漲らせ応じた。
繰り返すが彼らの言う“いつもの”とは楯がタンク役で敵を引き付け、その隙に他の仲間が回り込み、ぶん殴るという喧嘩のやりかただ。
これを戦に当てはめるならば……本隊と別動隊での挟み撃ち作戦だ。
木曽義仲達はこの挟撃作戦を進めようとしていた。
この本隊と別動隊での挟み撃ち作戦
遥か、後年。
戦国時代にも実行された。
作戦の立案者は武田信玄の軍師 山本勘助。
越後の上杉謙信が川中島に進攻。
この上杉謙信を倒すため別動隊を背後に回し、本隊と別動隊で挟撃する作戦を立案した。
その名も啄木鳥戦法。
その結果は散々だった。
本隊と別動隊のタイミングが合わなかったのだ。先に本隊を攻められ山本勘助は戦死した。
戦国時代に名将 武田信玄と名軍師 山本勘助が実行した挟撃作戦は失敗した。
木曽義仲もまた川中島で挟撃作戦を実行する。その戦法は吉と出るか凶と出るか。
【人物紹介】
■山本勘助
武田信玄の名軍師として知られる。川中島の戦いで啄木鳥戦法を提案するも、上杉謙信の思考までは読みきれなかったらしく失敗。戦死。
【お知らせ】
こちらも連載中です。よろしければ見ていただけると嬉しいです
■機動小隊レンジャーワン https://ncode.syosetu.com/n8156lf/
【あとがき】
こんな作品ですが「面白かった」「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。




