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第四十ニ日[無頼者には制裁を?]

ピ「どうしますかぁ、我がギバーよ?」

矢「まあ基本放置で」

雷「谷津也ぁ!ぶっ殺してやる!!」

梨「……いや、意味が分からないんだけど」


「…ぶつぶつ…」

モニターの中では隆次が何やら独り言を呟いていた。

「………」

「?よく聞き取れませんねぇ…。少し調節してみましょうか。」

ピエールが手元の操作盤でマイクを操作した。

「………ス…」

「す?」

「…………コロス…」

「…へ?」

モニターを見つめる8人は聞いてしまった。明らかな殺意を持った隆次の独り言を…。

「…梨田先輩大丈夫なんでしょうか…?相当怒ってますよ…」

「…まずは隆次の周囲にある物の心配を…」

バキィッ!

「……やっぱりか…」

隆次は近くに転がっていた鉛筆を怒りに任せてへし折っていた。

「あ、アレ俺の!」

「小鷹、今は抑えるんだ。」

「……後で絶対弁償させる。」

「しかしまぁ…あんなに怒るなんて雷堂先輩…」

「ふふふ…やはり俺の思った通り…内に闇の力を秘めておったか!雷堂!」

「それは無い。それと隆次はシルヴィーを取られたから怒ってるんじゃ無いと思う。」

「……?どういう事だ、矢手弓?」

葉子が怪訝な表情で尋ねた。

「…見てればわかるよ。」

一同は再びモニターを覗いた。

「ちっきしょーー!!1人じゃ飽き足らず2人も侍らせやがって!!俺なんて…俺なんて1人ですら難し過ぎて絶望してるのによぉおお!!」

バキィッ!ガシャァ!ドガッ!

…只管叫びながら近くにあった物を蹴りまくっていた。

「…ね?」

「……だな。」

「…何か、惨めですね。」

「…言ってやるな…。」

「…あれ全部俺の…」

「小鷹……御愁傷様。」

「……もういいや。」

流石イケメン。心も寛大。

「…許してないぞ?」

「だよねー。」

流石のイケメンも理不尽な八つ当たりは許せなかった。




その頃梨田は

「…う、何か誰かにもーのすごーい殺意を抱かれてる様な…」

「あら?貴方はいつでもヤのつく自由業の方々から狙われて」

「ねぇよ!?そんな恐ろしい生活してねぇよ!?」

シルヴィーと共に別荘から少し離れた商店街にいた。

「しっかしこんな所に商店街があったとは。」

「ここの商店街、お店が結構多くて助かりますわ…っとここですわね。」

「お?着いたのか?」

「ええ。ここならきっと貴方の求めている物が売ってるに違いありませんわ!」

そう言ってシルヴィーと谷津冶は若干寂れた店へと入って行った。




「……あの店なんだろうね?」

「見た感じただの雑貨屋に見えるが…」

「因みに主催者であるジャンヌ様もご存知無い様です。」

「あの商店街はちょくちょく行くんだけどネ…」

ジャンヌは苦笑いを浮かべながらモニターを再び見つめた。

「ふふふ…梨田が求めている物!それは無論最強の称号!…ということはあの店に最強の戦士が…」

「居ないと思います…。」

未来が丁寧に突っ込んだ。

「今思ったんだが、どうやって隆次を会わせるんだ?」

小鷹がピエールに尋ねた。

「ご心配無く!もう一人の方も含めてちゃんと会わせる様にはしますとも!」

そう言ってピエールはモニター画面を切り替えた。



ドタドタバタバタ!

「谷津冶ぁ…討ち取ってやる!」

隆次は廊下を『全速前進!』していた。

「お、見つけた!」

数十メートル前方にメイドを見つけるや否や隆次は叫んだ。

「そこの冥土ぉ!!」

「……何でございましょうか、どこかの馬骨野郎様…」

「た、た、大変だ!お前の…お前のお嬢様があのヤンキーと二人きりで出かけたぞ!」

「な、な……。もう一度仰って頂けませんか?」

「だから、お前のお嬢様があのヤンキーとデートを「な、何だってー」……お前もネタに走るのか。」

「お嬢様の専属メイド兼執事ですから。……そんなことより何をもたもたしているのですか。三秒で支度しろ!」

「イエス!マム!」

こうして隆次は強力な助っ人を手に入れた。




「……あらら。こちら側としては予想外の展開ですねー。」

ピエールは少し困った様な素振りを見せた。

「…予想してなかったのかよ。」

「でーも御安心を!こんな事もあろうかとメイド様の武器もあるシルヴィー様の武器庫の鍵は私が預かって…」



「メイド、マスターキーは持ってるか?」

「三秒で支度してます。」



「オー!マンマミーヤー!!」

「ジバネッタ社長の声で言うなや…。」

因みにスモークグレネードを持ち出した時も偶々拾ったマスターキーで武器庫を開けて手に入れた様子。

「…ここまで予想外の行動に走るとは…流石は隆次様。」

「単純にお前達の怠慢だろ…」

何度目か分からない小鷹の鋭い指摘が入った。

「でもこれは…マズイよ。」

名似何は深刻な表情で呟いた。

「…ですね…今の雷堂先輩どんな武器でも躊躇わず使いそうですし…しかもあのメイドさんまで味方に付けてますし…」

「死人が出ない事を祈ろう。」




その頃隆次…

『もしもし?』

「柳垣か?大変だ!谷津冶がお前に黙って別の女と二人っきりで出掛けてるぞ!」

『………え?それって…』

「浮気だよ!…不倫なのか?どっちでもいいや、取り敢えず谷津冶を成敗するために商店街まで向かって」ブツッ!ツーツーツー…

そこで電話は一方的に切られた。




「……これも予想外だったとか無いよね?」

「ひぃ!も、申し訳ありません!我がギバーよ!」

「……まぁいいけどね。」

「…これくらいは予想しろよ。」

恒例の小鷹の鋭い指摘。

「ふふふ、ははっはっ!正に血みどろの戦いだな!」

「戦い…?」

最早ただのイジメな予感がする葉子であった。




その頃谷津冶…

「あって良かったー!」

「良かったですわね。」

谷津冶は目的の物を変えた様で満足していた。

「本当にありがとうな、シルヴィー!」

「お役に立てて光栄ですわ。」

「いやーホンマ、サンキューな!」

「いえいえ……何だか騒がしいですわね。」

「ん?何やろ。」

谷津冶とシルヴィーは騒動の中に突っ込んでいった。


ガシャァアアン!!

「なーしーたーくーん…?」

商店街の中心にて、真夕は放置されてる自転車や放置されてない自転車を投げながら歩いていた。

「ちょ、君危ないから!」

「そうよそうよ!ほらその自転車を…」

「何があったんですか?」

飛んで火に入る夏の虫とは正にこの事である。

「な…し…た…く…ん?」

「え、柳垣サン?」

「…どうしたんですの?一体、ってあらマユ。」

「…ぅう…」

「う?」

「…浮気者ぉおおおお!!!」

その刹那、真夕は大きく跳躍し谷津冶の元へ突撃した。

ドガァ!!

「…え?え?え?」

寸での所でコンクリートがえぐれる程の拳を避けた谷津冶はただ呆然としていた。

「あー…成る程。」

シルヴィーは大体の事情を察した様だ。

「取り敢えずマユ…恐らく貴女勘違いしてますわよ。」

谷津冶に避けられながらも高速で攻撃を繰り出し続ける真夕に、無駄だと思いつつも声を掛けた。

「…何?」

「ですから…勘ち」

「この泥棒猫めぇ!!」

「!!」

今度はシルヴィーに殴りかかって来た!


パシィン!



「…弾かれた…?誰!?」

「……その薄汚い手でお嬢様に向かわないで頂けませんか?」

真打ち(とその他)が到着した。

「メイドー!やっちまえー!勝ったら俺がギュッてしてやるぞー!」

「要りません!」

メイドは隆次の冗談を切り捨てる余裕もあるのに対し、真夕は

「……(今の、結構力込めてたのに…あんな簡単に弾かれるなんて…)」

少なからず動揺の色を見せていた。

「…って、何でお前ら同士で戦ってるんだよ!?敵は谷津冶だろ?」

「少し黙っていてください。」

「むぐ…」




「これはこれはまさかの仲間割れ!」

「うわ…最悪のパターンですね。」

「助っ人同士で仲間割れって…」

「…コール」

「俺もコール。」

「私もコールで…」

モニター画面に

 『雷堂隆次:一票

 梨田谷津冶:四票』

と映し出された。

「おーっと!ここでまさかの大逆転!?」

「…三人とも一斉に変えたね。」

名似何は小鷹、深宮、未来の三人に尋ねた。

「……彼奴だしな。」

「何となく。しかしまあ眠い!」

「策が破られた今、雷堂先輩に勝ち目は無いと思いまして…」

信頼の無い男、隆次であった。

「あと一人って誰だろ?」

「…私だ。」

「葉子先輩?変えないんですか?」

「……ああ。何と無くな。」

彼女にしては珍しく(おど)けた感じで葉子は肯定した。

「ではでは皆様、票はこれで宜しいですね?思ったより皆様票を変えなさそうなのでコールの受付を終了させて頂きますが…」

「なんか…唐突ですね。」

「でもまぁ…皆使わないっしょ?」

「意義なーし。」

「OK!それでは参りましょう!!」

そして幾度目か分からないモニター画面の暗転と共に戦いの火蓋が切って落とされた。

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