第四十一日[大丈夫かなと言われる日々]
梨「あらぬ誤解を受けてる気がするんだが…」
雷「大丈夫だ。お前の場合、あらぬ誤解なんかじゃないからな」
矢「(それはまさに君の事だよ隆次……)」
「そんで、何があつたのだすか?」
放心状態の隆次を別室に連れ出した名似何は事情を聞いていた
「……谷津冶が…告った……」
完全に意識が朦朧としている隆次の返答に名似何は首を振る
「いや、それは聞いたよ…ハァ、仕方ない」
もはや話を聞くのは困難だと判断した名似何は当事者を呼び出す事にした
プルルル!プルルル!
『はい』
「私だ」
『俺だ』
「君はわざわざ証明しなくてもいいのだが……今、時間は空いてるか?少し聞きたい事があるのだが」
『ワリイ、これからちょっと町に出かけるんだ』
「シルヴィーと、二人きりでか?」
『そうだが、どうかしたか?』
「君が告白をしたって聞いたのだが、もしかしなくてもデートの可能性が高いなと思ってな」
『ハハッ!面白い冗談やな。俺とシャードゥーがデートて、今日はエイプリルフールかなんかやったっけ?』
「……こちらは冗談のつもりではないのだが(おかしい…全く話が見えないぞ。なぜチキンの谷津冶がここまで大胆にこんな行動に移せるんだ?)」
『まあ二時間ぐらいで戻れると思うからそれから話は聞くわ。そんじゃ!』
「なっ!ちょっ!おい!谷津冶待て」
プツッ!ツーツーツー
「……切れたか」
忌ま忌ましく何も映らぬ画面を見つめる名似何はイライラ解消のために自身の隣で壁に寄り掛かる友人の頭を叩く
「いつまでそうしてるつもりだい、隆次?」
「…どうもしねぇよぉ、どうかしたってどうせ無駄なんだぁ」
「いつもの君なら「畜生あのリア充野郎!爆発させてやる!イーヒッヒッ!」とでも言って追いかけると思うが」
「誰がイーヒッヒッって笑ったんだよぉ」
力のないツッコミを繰り出す隆次は本当に意気消沈している様子だ
「大体、谷津冶は何と言って告白したんだ?」
「皆で話してる最中に谷津冶がシルヴィーに「そうだ、シャードゥー。約束通り付き合ってくれ」って谷津冶が言ったらシルヴィーが「ええ、分かりましたわ」って言ったんだよぉ」
「………(こいつ、阿呆だな)」
へたれこむ隆次に呆れ果てる名似何は天井に向かって話しかける
「シナモン、いるかい?」
「なんやヤチュミは〜ん。お呼びでっか?」
天井ではなく壁からヌルリと出てきたシナモンは何やら嬉しそうに笑みを浮かべている
「頼みたい事があるのだが、話は聞いていたね」
「もちのろんやで!壁にうちあり障子にメアリー、このシナモン様を舐めたらあかんでぇ!」
「じゃあ彼らが向かった場所を調べてくれ」
「うちの取っておきのギャグはスルーかい!?…まあええわ、隆次はんにはさっきおもろいモン見せてもろうたで。三分で見つけたるで、待っときや!」
「いってらっさ〜い」
勢いよく壁を通り抜けて行った科菜を見送った名似何は再び携帯電話を手に取る
「もしもし、私だが…」
数分後シャードゥー家別宅前の玄関に五人の男女が集められていた
「一体何が始まるんですかね、葉子先輩?」
意味も分からず来てしまったTHE STEGO随一のドジっ娘、高上未来は頭の上に疑問符を浮かべる
「…私に聞かないでくれ、高上」
その隣でけだるそうに立つ怪我人(涅月葉子)
「フーハッハッハ!久々の出番でワキワキするぞぉ小鷹ぁ!」
熱に頭をやられた厨二病、蒲生彦九郎は叫ぶ
「別に俺は何とも思わないんだが……」
「なぁにぃぃぃ!?」
THE STEGOの看板イケメン、小鷹陸はクールに受け流す
「それにしても…眠いなああ寝てしまいたい!」
清々しい笑顔で眠気を訴える睡眠大好き人間小康深宮は地面に寝転がる
そんな彼らが穏やかに雑談を交わす内に玄関から軍の将校の格好をした名似何が現れた
「諸君、今日は集まってくれて感謝する」
「別に屋敷にいただけなんだが…っていうかその格好って、コスプレ?」
「それについては気にしないでくれ、スポンサーの御意向でな」
「スポンサー?」
「私だヨ〜♪」
「フルッフー!ワシもだぞい」
小康の質問に応えるように名似何の後ろから現れたスポンサーもといジャンヌとエボンは同じように軍服に身を包んでいる
「今日は君達に面白いゲームを持ってきたんだ」
ろくなものではない事は確かだ
「ゲーム、ですか?安全なモノなんですよね」
ここでまともに反応する高上君はとても良い子だ
「その点についてはきちんと考慮されているから安心してくれ。ピエール!君から説明を」
「はぁい、お呼びでしょうか、我がギバーよ?」
名似何の呼び声に呼応し顕れた道化師
仮面を付けたままで素顔を晒さないままピエールと呼ばれた人物は有名通販番組ジバネッタの司会者のように説明を始めた
「はぁい、それでは説明を始めさせていただきますぅ。今回こちら側が提案させていただく企画はこちら!『雷堂VS梨田、なんちゃって決闘からの噂のあの娘を奪っちゃえ!血みどろアハハウフフ対決(笑)』でぇ〜す!」
「「「「「怪し過ぎるだろ!!」」」」」
「これより皆様にはどちらが勝つか、先行投票をしていただきます」
「スルーかよ…」
全員からのツッコミだけでなく小鷹からの指摘すらかわしたピエールは説明を続ける
「順当に『キングオブヤンキー』梨田谷津冶が勝つのか、それとも大どんでん返しで『ヒューマンオブノーマル』雷堂隆次が勝つかさあ!是非とも御投票を宜しくお願いしまっす!何か質問はありますか?」
「決闘の詳細は?」
涅月の質問に心なしかピエールの仮面は笑みを深める
「さあ、スポンサーの方々に決めていただいたので私めには何とも」
完全に否定するまでもなく首を振って見せる
「まあ必ず死人は出ないようになっておりますのでご安心下さい。なお、今回の決闘には都市戦となりますので皆様には別室のモニターにて衛星中継をご覧になっていただくことになっておりますので、悪しからず」
「随分と大掛かりなんだな。まるでローマのコロッセオでの決闘みたいだ」
「そぉのとぉおり!我がぁシャードゥー家の金は世界一ぃぃいなんじゃあぁぁ!」
「普通に五月蝿いヨ、エボ爺」
「ぱうっ!?」
そんなジャンヌとエボンのコントをこれみよがしに票を集めるピエールを見た名似何は自身の携帯を手に取る
「私だ、アレの準備を頼む。…ああ、全ては我々の計画通りに」
今にもクークックックと笑いだしそうな名似何の様子を遠目から涅月と高上の二人が眺めていた
「一体何が計画通りなんだか……」
「あの人誰なんでしょうか?そういえば、葉子先輩はこんなイベントに参加するなんて珍しいですね。何か気になる事でも?」
「……ああ、少し」
「それでは、皆様投票も終わりましたようなのでそろそろモニタールームへと御案内致します」
軽やかに跳ねながら屋敷に入るピエールに続くように参加者五名及び名似何、エボン、ジャンヌの三人も入って行った
部屋に辿り着きドアを開くと洋風な装飾の広めの部屋の中に椅子が五つだけ置かれてあり、それ以外に何もなかった
「どこがモニタールームなんだ?モニターなんて無いじゃないか」
ぼやくように小鷹が呟くとその後ろで控えていた蒲生が高らかに笑い出す
「分かったぞ!つまり我々に心の眼、心眼で見ろと言いたいのだな!」
「はぁい!全然違いま〜すね〜ぃ!」
正確か間違いなのかどっちか分からぬ言い方だ
「今から出しま〜すぅ。はいポチッとな!」
どこから出したか一切不明の怪しげなボタンをピエールが押した途端に天井に穴が開きそこから大きなモニターが降りる
「まるでSFの世界だな……」
「フハハハハハ!まさに俺ごの」
「煩い」
「フバ!」
彼は、星になった…
「はぁいそれではまず対戦を見る前に皆様の現段階での票の割合を確認しておきましょう!」
そう言って指差された画面には
『雷堂隆次:四票
梨田谷津冶:一票』
と表示されていた
「それではゲームをご覧いただく前に諸注意をさせていただきます」
いきなり事務的に話し出したピエールは手元のボタンを操作して何かを画面上に表示する
「まず、今回のゲームで得られる金額的な利益は一切ありません。我々はただ純正に賭け事を楽しみたいだけなので、ご容赦を。次に賭け対象を変える場合には私めに向かって『コール』と唱えてくだされれば自動的に投票しなかった側にポイントを移動させます。なお公平を喫するために『コール』の使用可能回数を一人当たり三回までとさせていただきます」
長ったらしい説明を終えるとピエールはまた「はぁい!」と定番台詞を叫びながらも進行を続ける
「それでは、モニターを繋ぎましょう!」
その瞬間、部屋の照明は完全に消え彼らはただ画面を見つめる事となった




