第二十七日[紆余曲折な彼らの浪漫]
雷「ライライ」
梨「ナシナシ」
矢「…何なんだ、この不毛なやり取りは?」
「はい、皆さん右手に見えるは米軍基地ですよー!」
現最高責任者が嬉々としてバスガイディングをしている中、矢手弓 名似何は携帯電話を弄っていた。
「……」
「………。」
「…そんなに珍しい?」
「いや〜何度も見かけた事はあるさかい、珍しいっちゅうわけでも無いんやけど…やっぱ気になるわ。」
名似何が携帯電話を弄っているのを興味深そうに見ていた惟紋 科菜は前の座席(寝てる小康 深宮のすぐ横)から顔を出して答えた。
「…んで、何してんの?」
「ん?いやちょっとね。」
それだけ言って名似何は携帯を閉じてポケットに入れた。
「…見られたないモンなん?」
「そんな大した事じゃないよ」
「そう…」
科菜は多少残念そうに名似何の元を離れた。
「ちょい話を聞いてくれへんか、龍神はん?」
「……『ん』が付くだけで随分カッコ良くなるんだな…俺の名前。」
名似何と話した後、科菜は隆次の元へ文字通り飛んで来た。
「携帯電話について教えて欲しいんやけど…」
「唐突だな。どういう風の吹きまわしだ?」
「いや、正確には矢手弓の携帯電話についてや。」
「…?別に特に変わった物ではないぞ?」
「矢手弓はん、なんかちょくちょく携帯弄ってはるやん?」
「ああ。あれは小説を書いてるんだよ。たまに俺や谷津冶も読むぜ。」
「ほぉ…小説な〜…」
「俗に言うケータイ小説ですわね。」
「!!…ビックリさせんなよ…」
隆次の座席と窓の隙間からシルヴィーが会話に参加した。因みに科菜は一部の人にしか見えない為、基本的に小声で話している。
「私も初めて知りましたわ。確かに小説とか書きそうな感じですけど…」
「どんな小説をかいてはるん?」
「基本コメディ…かな?イメージ通りの作風だと俺は思う。」
「…独特なクセがありそうですわね。」
「…小説は個性が出る言うしな…ところで、隣のガモはんは何で伸びてるん?」
「ねつきちにやられた。」
「なる〜…」
そうしてバスは目的地へ向かって行った。
ー琉球ガラス店 土産売場ー
「ここは琉球ガラスを売ってたりする場所です。ここで土産でも買いましょうか。」
現最高責任者に続いて一同も建物に入った。
「綺麗ですねー…」
「因みに俺はこの青色が何とも言えないくらい好きだ。」
「雷堂ってそういや、服いつも青いよな。青好きなのか?」
小鷹が何気無く尋ねた。
「…よく言われるが、青色ばっかりなだけだ。青が好きって訳じゃないからな。」
隆次は訴える様に主張した。
「そんな事よりウチはガラスを見ると浮かせてみたくなるんよね〜…」
「ポルターガイストやめい。どんだけ弁償させる気だ。」
名似何が小声で突っ込んだ。
「梨田くぅ〜ん、これ欲しいナ〜」
「すんません…勘弁してください…そんなにお金無いんで…」
甲斐性なしが真剣に謝った。
「さて、皆の衆。店の物を割らない様に気をつけてお土産買ってネ〜」
「お母様いつの間に!?」
カリスマに定評のあるジャンヌの一声(とその娘の驚き声)で一同は琉球ガラスを見て周り始めた。
「ジャンヌさ〜ん、何か買って〜」
「いきなり失礼にも程がありますわよ?リュージ…」
「おぅ少年、説教された翌日に土産をねだるとはいい度胸だナ…。だがしかし!その度胸に免じて特別に一つ買ってやろうではなイカッ!!」
「流石お母様!心も懐も広いですわ!」
「……(言ってみるもんだな)」
「ふむ…して、何が欲しいのカナ?」
「…むー…じゃあコレで」
隆次は値札に900円と書かれたウサギの置物を手に取った。
「ん?こんなのでいいのカ?も少し高い物でも構わないヨ?」
「いや、でも何か悪いんで…」
そう言って隆次はぺこりとお辞儀をした。
「リュージがウサギ…滑稽ですわね。」
「滑稽言うな!?」
「よく似合ってますわよ。」
「ウサギが似合う男なんぞなりたくねぇ…」
「あー!雷堂がジャンヌさんにお土産買ってもらってるー!!いいなぁ〜、いいなぁ〜…」
そこへ人に奢らせる事で有名な方の女王がやって来た。
「雷堂!自分の分はジャンヌさんに買って貰ったんだから、自分の分に使う予定だったお金であたしの分買って!」
「メチャクチャだ!!」
「流石ですわね…」
「メチャクチャでいいから買って!」
隆次が非常に迷惑そうな態度で誰に押し付けようか企んでいると
「えーと…君がミキ君?」
「え、あ。はい。」
突然、ジャンヌが美毅に声を掛けた。
突然の事だったので美毅も驚いた。
「何だったら君の分も買おうカ?1人も2人もそう変わらないしネ」
「本当ですか!?やったー!」
美毅が分かりやすく喜んだ。
「さ…流石お母様…」
シルヴィーは恍惚としている。
「………」
「一つ貸しだヨ?」
「あ、ありがとうございます。」
ジャンヌは隆次にだけ聞こえる様に小声で言った。
「ふむふむ…あの貸しがどうなるか楽しみじゃの…」
「…どうでもいいけど、何で隠れてるんだ?」
「そんなの気付かれない為に決まっておるじゃろう?」
「……」
最近全くと言っていい程出番の無いエボンと小康の2人が商品棚に隠れて様子を伺っていた。
「出番が無いは余計じゃ。」
「…アホらしい。そんな馬鹿馬鹿しい事よりも俺はやる事があるんだ…じゃあな。」
小康は去って行った。
「つれない奴じゃのう…」
エボンは若干ガッカリしながら様子を伺うのに戻った。
「あ〜暇やな〜…」
ふよふよふよ
「ん?ありゃ、エボンの爺さんやないか…あんなとこで何してはるんやろ?」
科菜は飛びながらエボンの様子を伺った。
「…うむ…あの少年…(ブツブツ)…」
「(う、うわぁ…完璧にストーキングっちゅうヤツや…どないしよ…初めて見たわ…)」
科菜は全身から冷や汗がドッと出るのを感じた(幽霊なのに)。
「(銀ちゃん達に知らせるか…いや、撃退する方がええやろ。親戚にこんな奴がいたと知るとショックやろうし…)」
そう決心するや否や科菜は近くにあったガラスの皿を浮かせた。
「…(ブツブツ)…シルヴィーは一体…ん?何じゃ皿か。皿なんぞが勝手に重力に逆らう事なんぞあるわけがなかろう…」
エボンは目の前で浮いている皿の存在を否定し、観察に戻った。
「あ…アカン。存在を否定してはると姿も何も見られへんのやった。」
どうした物かと科菜が困っていると急に強い衝動が科菜を襲った。
「……いっその事この辺のガラス全部割ってやろうかね…」
き…危険すぎる…
「それ名案やな!よし、そうしよう!」
そう言うと科菜は手当たり次第にガラスを浮かせてエボンの近くに落とした。
バリンパリンバリバリバリン!!
パリパリンバリパリパリン!!
「うぉ!?ななななんじゃ!?」
流石のエボンも慌て始めた。
「!何?何?!」
「ちょっ、ヤバイんじゃ?」
周りにいたTHE STEGO生も異常な量の破砕音に気付いた。
「エボ爺!!何してんのヨ!?」
「し…知らぬ!俺のせいじゃ無いんじゃーーーー!!」
エボンは全力で逃げ出した。
「…人様の商品割っておいて逃げるとはいい度胸だネ…。捕まればどうなるかも知らずに…ネェ?」
ジャンヌはいつもの飄々とした表情から一変、泣く子も黙る顔でシルヴィーに同意を求めた。
「は…はははい。ほ、本当にその通りだと思いますわ…。」
「リュージ君はどう思うヨ?」
「…そそそそそにょののと、とっと通りっす。」
これでも『ビビり過ぎ』とは言えない程度のリアクションである。
これが谷津冶なら卒倒してたりするのではなかろうか。
「それじゃ、ちょっと行って来るヨ…」
そして瞬きも済まぬ内にジャンヌは隆次達の目の前からいなくなっていた。
「………」
「…………(ガクガクブルブル)」
「……シルヴィーちゃんのお母さんって…怒ると怖いね…。」
怖いなんて物ではありませんわ、と言いたくても口が開かないシルヴィーであった。
この後、エボンは店の商品の弁償金に加えて逃げ出した事に対するお詫び金を払ったのは言うまでもない。
因みに、科菜の所業を一から見ていた名似何と蒲生によって科菜もこってり絞られたそうだ。




