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第二十六日[朝から狩ら騒ぎ]

矢「ぅうむ…まだ眠い」

梨「朝はやっぱりラジオ体操だな!」

雷「お前は御老体か!」

 合宿三日目の早朝


 けだるいような暑さで目を覚ました高上は共に飲み物を買うために自販機に向かっていた

 「おぉ高上か、どうかしたのか?」

 自販機の前のベンチには既に先客、雷堂隆次がコーヒーの缶を手に持ちだらりともたれ掛かっている

 「あまりにも暑かったので目が覚めちゃいました。雷堂先輩は?」

 「まあ、俺もそんなところだ」

 高上は小銭をいれると適当な飲料水を選び手にしたペットボトルのキャップを開きながら隆次から少し離れた所に腰掛けた

 「そういえば、昨日凄く大きな音が聞こえたんですけど………何だったんでしょうか?」

 この大きな音とは先日の大乱闘の影響であると考えるべきだろう

 たしか隆次も、居合わせていたため真相を心得ていたはずだが………

 「さあ〜どうだろうな〜俺は寝てたから気づかなかったな」

 もう一度言おう

 隆次は事情を知っている 「何か物騒な事じゃないといいんですけどね」

 さらに復唱しよう

 隆次はその騒動の主要人物だった

 「そうだな〜」

 またまた言い直そう

 隆次は全て見て

 「うるせぇよ!?何回も言わなくても分かってるよ!」


ーーーーシーンッーーーー

 「………先輩?」

 いきなり空中に向けて怒鳴りだす隆次に高上が恐る恐る尋ねる

 これに気づいた隆次は慌てて誤解を解こうとする

 「すまん、何でもないんだ」

 全く、女性と二人きりの状況でいきなり怒鳴るとは、なかなか良い神経の持ち主のようだ

 「余計なお節介だ」

 「何か言いました?」

 「いや何も言ってない。ただ蚊がやかましかっただけだ」

 さいですか。私は所詮蚊ですか、あぁそうですか

 「そうですか」

 そう呟くと、渋々納得した(させられた?)高上はそのまま飲み物を持ったまま部屋に戻る事にしその場を離れる事にした

 「さてと、俺も戻るとするか」

 そう言って隆次が立ち上がろうとすると向こう側から二人組の男子が近づいてきた

 「ほんとだって!信じてくれよG!」

 「フハハハハ!梨田よ、貴様の論理は格段に破綻しているぞぉ!」

 「蒲生に谷津冶か。朝から二人揃ってまたDQN会議か?」

 隆次から声をかけると二人はそれに気づきベンチまで歩み寄る

 「DQN会議て……何やねんそれ?」

 よほど気になったのか、谷津冶は開口一番にその事を尋ねた

 「頭の可笑しい人々(笑)が執り行う可笑しな談合だろ」

 代わりに蒲生が答える

 「ちょっ!?待てや!何で俺の頭が可笑しい(笑)なんや!全然ちゃうやろ!」

 必死の抵抗も


 「だってお前ヤンキーじゃん」

 「安心しろぃ。お前は俺と同じ領域にすでに達している」


 二人からの一言で一刀両断


 そんな決まりきった一問一答を繰り返していると

 「朝から騒がしいな」

 「げ!?」

 最初に振り返った隆次の顔色が青くなり

 「ん?どうしたのだぁ雷堂ぅ?………ほほぅこれはこれは」

 それに続いた蒲生が何やら含み笑いをし

 「おいおい二人とも何してんだよ?……マジかよ」

 最後に余裕ぶっこいていた谷津冶が一番死人のような顔色になる

 「私は朝が弱いんだ。周りのためにも静かにしてくれ」

 現れた人物『アスカ・ナッスル』は着崩れた浴衣を身に纏ったまま眠気のためか目をこすりながら自販機の前に立つ

 先日とは違い全くの常識的な行動に雷堂はおろか蒲生までもが戸惑っていると ボソボソ

 「おい隆次」

 ボソボソ

 「なんだ」

 ボソボソ

 「なんでアスカさんがここに泊まってんだよ?」

 梨田は気絶していたため先日の一件は知らない

 ボソボソ

 「今はそんな事はいいだろ。それより何故奴が野放しになってるのか考えるが先だ」

 そんな二人の会話を耳にした蒲生は拍子抜けとした表情で声を大にして言った

 「何だ雷堂は知らなかったのか?あの人は沖縄にいる間限定の臨時講師として働くことで解放されたんだぞ」

 「「な、何だって〜!?」」


 「そして私は貴様ら、谷津冶、雷堂、蒲生の計三名の問題児の担当となった。よろしくな」

 いつの間にか会話に加わったアスカの一言で谷津冶と隆次は顔を見合わせる

 「どうするぅぅ!」

 「それ俺の台詞だけど、どうしよぅぅ!」

 「ハハハハハ!そんなに喜ぶな、こちらもやる気が入ってしまうだろ」

 確実に解釈を誤っているアスカは嬉しそうに笑いながら二人の肩をバシバシと叩く

 「っていうかアスカさん!勉強教えれるんすか!?」

 「そうだそうだ!まずいんじゃないか!」

 谷津冶が突破口を作ろうとし隆次も加わるがアスカは

 「私は向こうの大学で首席で合格して、首席で卒業したが」

 ドヤァ………

 「うわぁ〜、ドヤ顔きた〜」

 「自慢乙!」

 「ほぅ?貴様ら、良い度胸しているな」

 調子に乗り過ぎた二人に物騒な音を立てながらアスカはゆっくりと詰め寄る

 「いや、あれっすよ。アスカさん、ちょっとテンション上がっちゃったっていうか」

 「そ、そうだな!俺らちょっと調子に乗っちゃったな」

 必死に言い訳をするがアスカは歩みを止めない

 「そういえば、谷津冶、貴様とは二年前の決着がついてなかったな。ちょうどいい」

 「「ひぃ!?」」

 バキボキと指の骨を鳴らしながら近づくアスカの背後からは閻魔のような何かが浮かび上がりつつあり、さすがの二人も息を呑む




 「少し待ってもらおうか」

 意外にも、止めに入った蒲生はアスカの前に立ち塞がる

 「何だ?私のする事に文句があるのか?」

 アスカが威圧的に話すが蒲生は全く動じずに切り返す

 (G、お前、なんていい奴なんだ………)

 (見直したぜ…)

 二人が感動するのもつかの間、蒲生はさらっと受け流す

 「いや、俺は別に構わないが」

 「っておい!?」

 「俺達を見捨てるのか!」

 騒ぐ二人を無視して蒲生はアスカに話し始める

 「しかしな」

 「うん?」

 「貴女は先日この館の主のような方であるジャンヌ殿と約束をされたはずではないか『ここでは暴れない』と?」

 「…………」

 痛い所を突かれたのかアスカは黙り込む

 しかし蒲生の話はまだ続く

 「そして貴女がここで暴れると旦那さんもただでは済まないと思うがな」

 「それは知らんが……まあ良いだろう。気が変わった。楽しみはあとに取っとくとしよう」

 そう言ってアスカは踵を返し部屋に戻っていった



 「一体何だったんだ?」

 「やれやれだな」

 「アスカさんが来ているとは……全く知らなかった」

 「そういえば昨日の出来事は梨田が気絶した後ではなかったか?」

 「ああ、確か俺が作った仕掛けで泡を吹いて気絶した後だったな」

 「と言ってるが、どうだ梨田?これが君の捜し求めていた答えだ」

 蒲生が意地悪な笑顔で谷津冶に尋ねるが、その反応は思っていたものと違った

 「まあ、そだろな」

 「怒らないのか?」

 「いちいち怒ってたらこいつらとはダチやってらんないよ」

 「他人の不幸は!」

 得意げになった隆次がいつもの台詞を言おうとしたら背後から

 「蜜の味、ですわ!」

 「シャドー!?起きたのか?」

 シャドーも同じようにドヤァ……とでも言いたげな顔で三人に近づく

 「あまりにも騒がしいので起きてしまいましたわ」

 がっつり心当たりがある三人はシャドーからの恨めしげな目を見なかった事にし、話を逸らす

 「そういえば、他の皆は起きたのか?」

 「女王二人はまだ熟睡してますわ。でも他の女性陣は先程からの騒音で完全に目が覚めましたわ」

 「へ、へぇー」

 冷や汗ダラダラ

 「あと涅月さんなんか睡眠を邪魔されたのが気に障ったみたいで、完全に不機嫌でしたわよ。私が出かける時なんて『どうせ朝から騒ぐなんてあの馬鹿共だから見つけたら遠慮なくぶっ飛ばしてやる』っておっしゃってましたわ」

 「そ、そうなんだー。それじゃあ俺らは部屋に戻る事にするよ」

 隆次は見つかる前に逃げようするがシャドーは不思議そうな顔で

 「俺ら?俺らとは、誰と誰と誰ですか?」

 「は?そんなの俺と谷津冶と蒲生に………あれ?」

 いつの間にか自分の隣にいた二人はいなくなっており一枚の紙切れが残されており拾い上げるとそこには


 『隆次、逝ってこい』

 とだけ書き残されていた


 どうやら、見捨てられたようだ(笑)

 「(笑)じゃねぇよ!ちっくしょう!あいつら、自分達だけ逃げやがって!」

 「誰からだ?」

 「誰ってもちろん涅月からだろ?って、え?涅月さん」

 振り向くと真っ黒な笑顔の涅月葉子が隆次に迫っていた

 「早朝からに渡る度重なるこの騒音行為はどう解釈されても仕方ないはずだ」

 「ま、待て!話せば分かる!」

 「問答無用!」

 「ギャアアアァ!」



 その早朝、屋敷の中は一人の男の断末魔によって奏でだされた




 ちなみに逃げた二人はあとでスタッフ(涅月)がキッチリ料理しました

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