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第十七日[話し合いを要求する時は相手の顔色を見よう]

梨「いや〜初日から内容が濃いよな」

矢「それは谷津冶のせいじゃないかな」

雷「まったくもって同感だ」

梨「……お前ら、何かあったのか」

 レクリエーションを終え夕食も済ませたTHE STEGOの面々は就寝前の自由行動を取っていた

 そして、風呂場から最も近い所に位置するここでは




 「食らえ!俺の奈落落としサァーーーーブ!」

 「フハハハハハ!甘い、甘過ぎるぞぉ!我が呪われし一撃を見せてくれよぅ!ふん!」

 風呂から上がった後、浴衣に着替えた隆次と蒲生は風呂上がりの運動としてシャードゥー家が用意していた遊技場で常識はずれとも取られかねないレベルの卓球で汗を流していた

 「………あいつら元気だな」

 離れた所から眺めていた小鷹はポツリと呟くが、マッサージチェアに腰掛け手元のケータイをいじっている名似何からは

 「まあ健康にはいいんじゃな〜い」

 というような生返事しか返ってこなかった。だが、

 「まあそりゃそーだな」

 小鷹自身もあまり関心がなかったようでスグに手元の参考書に目を通しはじめる


 「うぃ〜す。あ〜良いお湯だったわ〜」

 「お前まだ入ってたのかよ」

 背中から湯煙が立ち上げながら現れた谷津冶を小鷹は呆れた目で見るが本人は全く気にしないでガッツポーズをする

 「おう!良い湯だったからな。ついつい長風呂してた」

 「君の言う長風呂とは二時間以上湯舟に浸かる事なのだね」

 名似何からの指摘にも全く気付かずに谷津冶は高らかに笑う

 「おいおい何言ってんだよ。風呂は普通三時間入るもんだろ?」


・・・・・・・・・・・・

数秒間の沈黙が経ち小鷹達は無言で見合わせる

 「…………矢手弓」

 何か言いたげな瞳で小鷹が名似何を見ると

 「言わなくてもいい。おそらく私も同じ事を考えているだろうからね」

 「……そうか」

 小鷹が妙に悟りきった目で遠くを見つめていると

いつの間にか谷津冶は自販機の前に立ちいつものようにコーラを飲み干す

 「プハァッ!生き返るぅ〜!」」

 「相変わらずだな」

 「それはあまり健康には良くない物なんだがな」

 「そんなん気にしたってしゃーないしゃーない。なるようにしかならへんわ」

 そう言いながら谷津冶は出口に向かって歩き出す

 「どーした?喧嘩を売りにでも行くのか」 

 「んな訳ないやろ…部屋に戻るんや部屋に」

 「そうか、ならそろそろ私達も行くとするか」

 「そうだな。」

 そう言って名似何と共に立ち上がると小鷹は未だに卓球に熱を出している二人に呼びかけた

 「俺ら部屋に戻るけど、お前らも来るか?」

 一旦手を止めた二人は長時間の運動ですでに汗だくになっていた

 「……ハァ…ハァ…汗かいたからハァ…ハァ…風呂に……入る」

 「……フハ……ハハハ…ハハ」

 息が切れて必死に話そうとする二人はまるで

 「変態のようだ」

 名似何が平然と言い放つ

 「じゃあ俺らは先に戻るぞ」

 「……おう」

 そのやり取りを交わすと小鷹、名似何、谷津冶の三人は部屋に戻るために遊技場を退出した



ここで補足しよう!

今回の合宿では男子は全員『幸薄のこうはくのま』などというあからさまに〔あ〜何かが起きますね間違いなく〕とでも言いたげなとてつもない縁起の悪さを感じさせる大部屋で寝泊まりする事となっている

 ちなみに女性陣の部屋は『鳳凰のほうおうのま』などというどうみても上部屋じゃねえか馬鹿野郎と言いたくなるような素敵な大部屋で寝る事になっている

 補足終了



 二人残された蒲生と隆次は

 「じゃあ俺らも風呂に行くとしようぜ」

 「フハハハハハ!いいだろう!我が身に纏わり付くこの呪いを払い落としたいしなぁ!」

 「それは呪いじゃなくて汗だ………」

 運動後でテンションが上がっているのか、深刻化している蒲生のテンションに疲労が溜まっていた隆次はため息をつく事しかできなかった





 一方、THE STEGO職員が宿泊する部屋では先程まで地獄を見ていた男がぶつぶつと何かを呟いていた



 「ぐふふふふ。あのおフランス娘におっちゃんの味わった苦痛を味あわせてやるお!」

 一心不乱に作業を行うドゥーンの瞳にはすでに正気の色など存在していない事をまだ誰も気付いていない




 小鷹達と別れてから数分後テンションが上がりまくった蒲生を引き連れ隆次は二回目の風呂に入っていた

 「それにしても、露天風呂があるなんて……本当にお金持ちなんだな」

 隆次がポツリと呟くと先程までとは違い完全に冷静になった蒲生が解説を始めた

 「まあ外人というものは日本人から見ればなかなかぶっ飛んでいるからな。いわゆるカルチャーショックを感じても致し方あるまい」

 「へぇ〜」

 隆次が感心していると壁の向こう側から声が響いてきた

 「うわー!本当に広いですよ葉子先輩ー!」

 「高上、分かったからもう少し静かにしよう」

 「シルヴィちゃんって日本にかなり詳しいけど、ご家族も詳しいの」

 「ええ、両親共にジャパニーズカルチャーに興味津々ですわ」



 どうやら女湯の方に高上、涅月、柳垣、シャードゥーの四人が入ってきたようだ

 「……どうやら、シャードゥー達が風呂に入ったみたいだな」

 「そうだな」

 「そろそろ上がらないか?」

 隆次の提案に対して蒲生の答えは

 「なぜだ?まだ入ったばかりだろ」

 間違いなく正しいモノであったが、隆次は何か言いたい事があるようで

 「いや、でもよぉ…」

 そう言いかけた途端、壁の向こう側から高上の声が再び響いてくる


 「シルヴィさんの胸、本当に大きいですねー!」

 「そ、そうですの?」

 「そうですよ!うらやましーなー!だってほら!こんなに柔らかいし」

 「きゃっ!?くすぐったいですわ」

 「高上、女の子がそんな事をするな」



 向こう側のキャッキャッウフフなやり取りを聞いている内に蒲生は何か閃いたようでニヤケ顔で隆次を見る

 「成る程、そういう事か」

 「……何がだよ?」

 「いや〜大変だな〜思春期は」

 「だから何がだよ!?」

 隆次の問い掛けに蒲生はただクックックと笑うだけで答えようとしない

 そのようなやり取りをしている間も女性陣の会話はどんどん進む


 「そういえば、シルヴィちゃんはスタンプラリーの時に雷堂君達と一緒に行動したんだよね」

 「そうですわよ」

 「海に入った時雷堂君が凄い変態チックになってたんでしょ?」


 「ぶふぉ!」

 まさかの話題に隆次が吹き出し咳込むが向こうはそんな事お構いなしに続ける

 「変態チックかどうか分からりませんけど、顔を真っ赤にして私の体をまじまじと見てたのは間違いないですわよ」

 「ぐはぁ!」

 「雷堂、GJだ!」

湯舟にそのまま沈む雷堂に繰り出される蒲生のガッツポーズが

 「………全然、嬉しくない」

 (ああ、俺の塾内での地位が完全に堕ちてしまった……)

 その時の夜空は『もう無理ポ』とでも言いたげにとても美しく澄み渡っていた


 「お〜いい風呂だお」

 しみじみと雰囲気をぶち壊して現れたのはムチムチの筋肉野郎『ドゥーン』だ

 「……なんでよりにもよって今来るのがお前なんだよ」

 〔ドゥーンの出現により風呂場の熱苦しさは3上昇隆次の気分は2低下〕

 「いきなりなんだお!っていうかこのデータ何だお?そもそもおっちゃんは別に熱苦しくないお!」

 「五月蝿い、黙れ」

 騒ぎ散らすドゥーンに蒲生が一言で一蹴し場の雰囲気は一気に静まり返る


 しかし、ここで大人しくなるDQNではない

 ドゥーンは浴槽に浸かろうとせずに壁際に寄り何やら怪しげな機械を取り付け始める

 「……何してんだ?」

 嫌な予感が過ぎりながらもつい好奇心に駆られた隆次が声をかけるとドゥーンはやけに上機嫌な声になる

 「これはおっちゃん特製の『透きぬけ〜る君』だお」

 「ろくな機械ではなさそうだな」

 呆れ果てた蒲生の一言にもめげずにドゥーンは説明を続ける

 「この『透きぬけ〜る君』は一枚隔てた向こう側を見通せる優れものなんだお!」

 「な、なんだってぇ!?」

 「要するに覗き道具か……とことん才能の無駄遣いをしているな。」

 「まあいいんだお。よし、これで完成だお!」

 そう言ってドゥーンが壁際から離れると機械から

ウィーーン!ガガガガガ!

 奇想天外な音が溢れ薄暗く光を発し始め隆次と蒲生が気になって近づくと

 「あれ?二人とも、何してるんだよ?」

 「谷津冶!?お前部屋に戻ったんじゃないのかよ!」

 「いや〜なんかまた風呂に入りたくなってさ。それになんか呼び出しがあって」

 「呼び出し?」

 そう言って谷津冶から手渡された手紙には

 [男風呂で待つ]

 とだけ書かれている

 「一体誰がそんな事を書いたんだ?」

 「それを知るために来たんだよ。そういえば、それ何だ?」

 谷津冶が指差したのは先程ドゥーンが取り付けた機械『透きぬけ〜る君』だ

 「ああ、これはあいつが作ったむぐ!?」

 隆次が答えようとするとドゥーンは慌てて口を塞ぐ

 「ん?どうした?」

 不思議がる谷津冶が近づく中ドゥーン、隆次、蒲生の三人はこそこそと密談をする

 「なんで谷津冶に話さないんだよ!」

 「今ヤッツーに話せばおっちゃんの企みがばらされるお!」

 「ふざけんなよ!なんで俺らまで巻き込まれなくちゃいけないんだよ」

 「いや、雷堂。ここは従うべきだ」

 「…おい蒲生。お前まで堕ちたのか」

 「それは断じて違う。」

 「ならなんで!」

 「考えてもみろ谷津冶がここに現れて最初に目にしたのがこの『透きぬけ〜る君』を覗きこんでいる俺達だったんだぞ。単純に考えればこいつと共犯だと取られてもおかしくはない」

 「なら事情を説明すればいいじゃないか。」

 「忘れたのか、谷津冶の声はただでさえ大きいんだ。今知られれば向こう側の女子達に間違いなく知られる。そうなったら」

 蒲生が言い出すまでもなく隆次が答える

 「殺されるな……」

 言葉を交わす事なく顔を見合わせた二人は急いで立ち上がり谷津冶と向き合う

 「お、どうした?早くそれ見せてくれよ」

 「なあ谷津冶。風呂に入りに来たんだろ?なら入ろうぜ」

 「フハハハハハ!俺達をあの祝福の泉が待ちわびているぞ!」

 「…別にいいけど」

 隆次と蒲生に押されて谷津冶は渋々風呂に入ろうとするが

 「フルッフー!相も変わらず良い風呂だのう!そうは思わぬかぁ少年」

 「エボン!?入院してたんじゃないのかよ!」

 ゆっくりと風呂に浸るエボンは悠々と手を振る

 「それよりも少年。その機械について知りたくはないか?」

 「「「ギクッ!」」」

 「…まあ、知りたいは知りけど。どうせ取り引きでも持ちかけるつもりなんだろ」

 「フルッフー!良く分かったな。だが、今回は対価は必要ないぞい」

 「お前にしては気が利いてるな。何を企んでるんだ?」

 「フルッフー!無闇に疑うのは良くないぞい少年。」

 「日頃の行いが悪いからだろ」

 「まあよい。貴様にヒーローになる機会をやろうと思ったが、もう遅かったみたいだのう」

 「はぁ?何言ってんだよお前」

 「後ろだ」

 言われた通りに谷津冶が振り返るとすでに隆次、蒲生、ドゥーンの三人の姿はなく代わりに脱衣所から慌ただしい声が響いてくる

 「雷堂、覚悟は出来てるんだろうな」

 「ま、待て涅月!話せば分かる!」

 「そうだ!これは組織の陰謀で」

 「言い訳は見苦しいですわよ。」

 「歯、食いしばれ」

 ドガ!バキ!バガーン!


 「…………一体何が起きてるんだ」

 「フルッフー!またよきかなよきかな」

 そんなやり取りを交わしていると脱衣所の扉が開き中から涅月が顔だけ出す

 「すまん。騒がせた」

 「…なんか、あったのか?」

 「何もなかった。いやなかった事にしてくれ」

 「……あ、ああ」

 そのまま涅月は扉の中に入っていってしまった


 「何だったんだ」

 「まあ良いではないか。それよりも少年、明日我が実験の被験者にならないか?」

 「…勘弁してくれ。」

 ため息をつく谷津冶だが、間髪入れずにまた脱衣所の扉が開かれる

 「あ、梨田君。こんなところにいたんら〜」

 「なんでお前がいるんだよ柳垣!つーか、服を着ろ!」

 忠告も空しくタオル一枚で身を包んだまま酔っ払った様子の柳垣は谷津冶に近づく

 「おいエボン!何とかならないのか!」

 隣で湯に浸かるエボン助けを求めたが、

 「フルッフー!少年よ、より取り見取りではないか。……うらやましいぞ!」

 と告げて急いで脱衣所に向かってしまった

 「おいおい何でこんな時だけ逃げるんだよ」

 現実逃避をしかける谷津冶に背中から柳垣が抱き着く

 「おい柳垣!当たってる!当たってるって!」

 「えへへへ〜つからえた〜」

 「とにかく、脱衣所に運ぶか………」

 全く安定しない話し方をした柳垣に抱き着かれたせいで下手に身動きが取れなくなった谷津冶はその後二十分かけて脱衣所に辿り着いたのだが、偶然壁にめり込んでいた隆次と蒲生に目撃されてしまい。

 翌日、塾生達の間では『ヤンキーが女子高生を風呂に連れ込んだ』という噂で持ち切りになった

 え〜、まず内容について触れる前に一つ情けない言い訳をさせて下さい

 前回の後書き部分にて自分は、翌日について書きたいと書かせていただきました。ですが、様々な事情がありまして……書き損ねてしまいました

 これについては申し訳ないとしかいいようがありません

 嘘ついちゃってごめんなさ〜い





 はい!私めのつまらぬ冗談はさておき、では今回について話そうと思います。 今回は、谷津冶君の事について少し触れたいなと思います。

 彼自身は年がら年中からまれ体質でチキンなのは確かなのですが、今回の最後の部分での彼の行動はチキン行為ではなくあくまで紳士として行動したと取ってもらえれば幸いです。

 ちなみに補足しますと、谷津冶君は真夕さんの裸を全く見てません!残念ながら彼にはそんな度胸ありません、だってチキンだから!


そんな彼が一体どのようなイジリに遭うのか、そのような所に期待を込めていただければより一層お楽しみいただけると思います!


 それでは、またお会いしましょう!

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