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第十六日[波風打ち立ち夏空終わる]

矢「き、気分が悪い…」

梨「どうしたんだんだ名似何?何か悪いもんでも食ったかの?」

雷「世の中には、聞かなくていい事もあるんだよ……」

時は少し遡る。

 「ぅうっ、うーん…!」

 深宮は気持ち良さそうに大きく伸びをした。

 「眠かった…」

 深宮は感慨に浸りながら辺りを見回した。

 「…確かに、伊勢海老は大事だな」

 深宮は微笑んだ。まるで異教徒を穏やかに見るかのように。

 あと、明らかに勘違いしているが気にする気にもならない。

 「…まっ!そんなもんだなっ!」

 深宮は体を捻った。

 「…で、スタンプを集めるんだっけか?」

 「えぇ、そうよ」

 「…誰?」

 深宮は声のする方を向いた。

 そこには深宮の知らない少女がいた。少女は高1辺りだろう。

 「初めまして」

 少女はにっこりと微笑んだ。

 「魔女。私はみんなにそう呼ばせているわ」

 「魔女ぉ!?」

 深宮は怪訝な顔をしたが魔女は微笑を口に浮かべているだけだった。

 「…それより、早くスタンプを集めないと、日が暮れちゃうんじゃない?」

 「…それもそうだな」

 「…これを、飲んでみない?」

 魔女は手の上に錠剤を載せた。

 「…それ何のサプリメントだ?」

 「…身体能力の増強」

 魔女は囁くように言うとフフッと微笑んだ。

(…怪しい)

 羊をモチーフにしたようには見えない某少女を思い浮かべる人はどれ程いるだろうか。

 「なんでそんなの俺にくれんだよ?」

 「…知り合いじゃ駄目なのよ」

 魔女はつまらなさそうに言った。

 「こんなの周りに使ったら、データを取られちゃうじゃない。そんなことであちらの戦力上げても面白くないわ」

 「…何の話だ?」

 「ふふ…内緒」

 魔女は愉快そうに小さく笑みをつくった。

 「それより、飲むの?飲まないの?」

 「…飲む!」

 「いい子ね」

 魔女は満足そうに微笑んで、錠剤を深宮に渡した。

 「水無しで飲めるわ」

 「分かった」

 深宮はそれを飲んだ。

 それからすぐに、身体中に力が駆け巡る気がした。

 「おぉっ…!」

 早く動けと心がじれる。

 早く動かせ体が急かす。

 「ぬぉぃぃぃいいい!!」

 深宮は、太陽が沈む早さと比べるとどれだけ違うかは全く分からないが、とにかく小学校の徒競走の時以上にダッシュした。



「あー…だぁ」

どうも、風邪気味のようだ。海から出て始めて気づいた。

心当たりなら某ポキモン(ネイティブの言い方だとこう聞こえる。ついでにポケットモンスターと呼ぶのは色々とまずいらしい)の映画15回に全部出演した人にして某廃れた芸人の溜まり場兼顔面を白をベースに塗った人の活躍の場である朝6:45の番組の皆勤賞的司会のあの人の名字の一番最初の漢字のようにあるので原因を追及したりなんかしない。

名似何は出来るだけ病気にかからないように野菜を意識して摂取しているが、それも結局は自棄医師に深宮だったりする。

基本的に生活が堕落しているのだ。お菓子をチマチマ食べていると、結構な量が忽然と消えているし、運動は年を重ねる毎にしなくなってきている。

というわけでもうそこら辺は大方諦めているので、名似何はふらふらと目的地に向かった。

「…よし、速攻しりとりだ」

名似何は宣言した。

速攻しりとりなんて高校の修学旅行以来だ。1人で暇だったのでやっていたが案外難しい。

「りんごゴリララッパパセリ栗鼠西瓜亀メダカ烏スルメメダじゃなくてメノクじゃなくてメリ、メリリ、目隠し柴バーサーカいかんこれは馬術釣り栗鼠は駄目りー、リンドウリンドウ牛し、尻尾…」

いつもの名似何ならば、周りに人がいなくて暇なら歌っていただろう。

しかし今の名似何はいつにも増して狂いたかった、と適当に記す。

速攻しりとりはそれなりに続いたが、何回もやっている内に既にその回に言った言葉なのかそうではないのか判断がつかなくなったので、なんかもうやめることにした。

暑い。夏休み中、冷房の効いたラウンジで勉強に見せかけた何かをしていた名似何にとって、このぬるま湯と熱湯の間位の水にずっと使っているかのような空気は結構厄介だった。

とはいうものの名似何は暑さ寒さは妥協する質なので、南谷幹也 (32)でなんちゃらしたが。

「…海だ」

名似何はふと右を見て呟いた。

右にはなんかキラキラしてる海があった。

「ぅあー…」

名似何が地図を見ながらこっちが正解な筈だとフラフラ海に近寄った。人生に絶望した人が入水自殺しているようにも見える。

名似何は海に近づいて、真正面から海を見た。

「…別に他のとこでも月は上るし日は沈むと思うんだが」

名似何はそう呟きながらヨタヨタと海辺を歩いた。

 「あのー…!」

 名似何は小さな女の子と思われる声のした海の方を見た。

 声の主が海から上がってきた。

 「え、と、ここって、どこですか?」

 「沖縄県」

 「そっそういうことじゃなくて!」

 「詳しい名前は知らぬ」

 「だいじょうぶ?おかおまっかっかだよ?」

 「実質的にはあんまり大丈夫じゃないけど比喩的には大丈夫」

 頭はじんじんするが気にしなければ問題でない。

 「…ん、え?」

 「気にするな。人類とて必死だ」

 名似何は以前に彼女に会い色々話したので、容赦は殆どしない。

 「…う、うん」

 「で、どうした?」

 「まゆちゃんどこかしらない?」

 「柳垣、は、多分建物の中だと思う」

 「うん。わかった。ありがと。じゃあね」

 「じゃあ」

 どうやら着替えてから柳垣の元に行くようだ。

 名似何はそれを大して見送らずぼぅっと前を見た。

 そしてシャードゥーのある言葉を思い出して、気づいた。

 「ここ、さっき3人で来たよね…」



「はぁぁぁぁぁ…」

未来は何度目になるか分からない長い溜め息をついた。

「…」

葉子は隣を気にせず、ただ淡々と海沿いを歩いた。

未来は集合場所に行く途中に人とぶつかり、そのせいで相手と同じデザインの自分の旅行用鞄を持っていかれてしまったらしい。

先程海で泳ごうとした時に初めて気づいたらしく、未来が泳げないのに自分だけ泳ぐのも気分が悪いので結局葉子も泳がないことにした。

「ごめんなさい、葉子先輩…」

「いやいいって。泳がなかったのは私の勝手だし」

「ぅぅ…ごめんなさい」

葉子は隣を気にせず、まだ淡々と海辺沿いに歩いていた。

「…矢手弓?」

葉子は目の前に、見覚えのある姿を見つけた。

「なんか…矢手弓先輩、明らかに大丈夫そうじゃないですよね?」

「そうだな」

葉子はそう言いながらも歩く速さは変えない。

「…あぁ、えっと、」

目の前の人が、名似何が振り向いた。

「これはこれは、人間の諸君」

「…大丈夫ですか?」

「熱でもあるんじゃないか?」

葉子は名似何の顔を見て言った。

「熱なら、、君もあるだろう?」

「…『涅月』だけに、とでも言うんですか?」

「…」

「…」

「…努力は評価する」

名似何は頷いた。

「えっ!?私、スベッたんですか!?」

未来は慌てたように自分を指差した。

「1文字余ってるのはいただけないな」

「別にどっちでもいいけど」

葉子は冷静だ。

「どうしたの?やけに遅いじゃん」

名似何は2人を少し虚ろに見た。

「それが…、私のせいなんです…」

未来は下を向いた。未来の全身には小さな擦り傷や切り傷が所々見える。

「…どうしたの?」

「いや…、色々と…」

未来はぐったりしたように言った。

「へぇ…」

名似何は少しつまらなそうに前を向いた。

 そして3人が歩き出そうとした時、

「にぃぁぁあぁあぁ!!」

聞き慣れた声と、その声の主に似つかわしくない爆走の音がした。

「え!?ちょっ、何なんですか!?」

「早く脇に避けろ!」

葉子はそう言うと名似何と未来を砂場の方に突き飛ばして自分は海の方へ退いた。

ビュンッ!

ザッ!

「…裂けた!?」

尻餅をついた未来は下を見た。

 未来の上に乗っている旅行用鞄は、中心の高さで横に一閃されていた。

 「え…!?」

 未来は呆然と呟いた。

 「人の、なのに…」

 「…今の、」

 名似何は最早誰もいない前方を指差した。

 「小康、だよね?」

名似何は前を見た。

「だろうな」

葉子は頷いた。



「というわけで優勝は、小康君でーす!」

現最高責任者の声と共に拍手が湧き起こった。

「マジかよ…。最下位の筆頭候補が優勝しちまったよ…」

隆次はまだ信じられないといった顔つきだ。

「柳垣が優勝すると思ったが…」

名似何はまだ死んじゃいないといった顔つきだ。

「なんか小康が柳垣を負傷させたらしくて、柳垣が一時期動けなかったらしいぞ」

「マジかよ」

「…噂をすればUltra Soul」

名似何の視線の先には柳垣がいた。そこに急いで小康が駆け寄る。

「ごめんな!本当にごめん!」

小康は頭を下げた。

「ヒャハァッ!気にすんなぁ!別に足があるんだから歩きゃよかったんだよ」

「で、でも…」

「傷のことは忘れろぉ。私特製のブルートゲトレンクっつう鉄分豊富なトマトジュースみたいなのを一口飲み干しゃヒャーハッハッハッハッハ!」

「そ、そうか」

「っつうわけだ!」

柳垣はそれだけ言うとスタスタと歩きだした。

「アノフタリメッチャナカイイナー。ツキアッチャウンジャナイカナー」

隆次は棒読みでそう言うと微妙にニヤリと笑って谷津冶を見た。

「えっ、俺?」

「なんだよなんか無いのかよ」

「なんかって…」

谷津冶は少し考えるような素振りをした後、ニヤリと笑った。

「いや別に俺と柳垣は特にそういう関係じゃないからな?」

「まだ言…」

「お前とシャードゥーとは違うんだよ」

「…おまっ!ホント洒落にならんからやめろ!」

隆次は慌てふためいた。

「そーだぞ梨田。恋ではない」

名似何はたしなめるように言った。

「矢手…」

「今回はただ単に一方的に雷堂が変態だったってだけだから」

「おいちょおま!」

「ホーゥ、なぁるほど」

「お前ら!やめろ!マジで、やめろ!」

「隆次くぅん…ねぇ」

谷津冶はニヤニヤしている。

「…」

名似何はもう興味が無くなったので携帯電話を弄りだした。

 はい!沖縄編、第三話となりました。まだ一日目しか行ってませんが、次の話からは二日目を描かせていただこうかなと思ってます。

 それでは!また未来で!

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