人身売買 1
リリアンは、マクノートンさんとのデート(?)当日を迎えますが……。
良く晴れたある日。私は朝から街にある公園を訪れていた。今日は、マクノートンさんと一緒に植物園に出掛ける日だ。
噴水の前で、私は自分の服装をチェックする。緑色のワンピースに茶色いブーツ。うん、多分私に似合っている。
そして今日、私はいつも緩い三つ編みにしている髪を解いている。頭に生えている小さくて長い耳の名残には、花をモチーフとした黄色い髪飾り。
マクノートンさん、褒めてくれるかな。可愛いって言ってくれるかな。……って、何考えてるの、私! 今回のお出かけは、デートじゃない。
これはそう、えっと……お礼よ! いつも花を買ってくれるお礼! 決して、マクノートンさんとの結婚を承諾したわけじゃ無いのよ!
私はそんな事を考えながらブンブンと首を横に振った。そして、近くにある時計塔を見上げる。現在八時三十五分。マクノートンさんとの待ち合わせの時間は九時だから、あと二十五分もある。
早く来過ぎちゃったな。近くのお菓子屋で何か買って時間を潰そうか。
そして私は、大通りを歩きながら辺りを見渡す。この街は王都の中にある為、とても栄えている。今も、果物を売る店や魚を売る店の従業員が威勢の良い声で呼び込みをしている。
お菓子を買ったら、マクノートンさんにもお裾分けしよう。そんな事を考えながら歩いていると、目の前の道路をリンゴが転がっていくのが見えた。何だろうと思っていると、遠くから声が聞こえる。
「待ってー! 私のリンゴー!!」
見ると、年配の女性が息を切らしながら走って来る。女性の手には紙袋。そうか、あの人、買ったリンゴを落としちゃったんだ。
私は、大きな声でその女性に言った。
「私がリンゴを取って来ますから、おばあさんはそこで休んでいて下さーい!!」
そして、私はリンゴを追いかけて小さな路地へと入って行く。
思ったよりリンゴが転がるのが速く、私は息を切らしながらやっとの事でリンゴを捕まえた。そして、立ち上がると辺りをキョロキョロと見渡す。
……ここはどこだろう。知らない路地裏に来てしまった。とにかく、大通りに出よう。そう思って私が歩き出した時、曲がり角の向こうから声が聞こえた。
「おい、もう船の準備は出来てるんだろうな」
「ああ、もうガキ共を船に乗せる準備は出来てる」
「そうか……今回は、何人くらい用意出来たんだ?」
「男が五人と女が三人。本当はもっとガキを搔っ攫って来たかったんだが、騎士団の巡回が多くなってこれ以上は無理だった」
「……まあ、仕方ない。人身売買の罪で捕まっちまったら元も子も無いからな」
私は、息を呑んだ。姿は見えないけれど、角の向こう側にいるのは少なくとも二人の男。それも、人身売買をする危険な男達だ。
そう言えば、マクノートンさんが言っていた。最近人身売買をする組織が活動してるって。この人達の事だったんだ。
早くマクノートンさんに知らせないと! 駆け出した私は、石畳の道にある段差に躓いてしまった。
「あっ!!」
私は、思わず声を上げて道にべしゃりと転んだ。痛む膝を押さえながら立ち上がろうとした私は、そっと後ろを見る。
そこには案の定、私の声を聞いて駆け付けて来た人身売買の男達がいて、真っ直ぐこちらを見下ろしていた。
男は二人いて、一人は熊の獣人。もう一人は狐の獣人。熊の獣人が、怖い笑顔で私に言う。
「ウサギ獣人のお嬢ちゃん。今の会話、聞いてたよな。聞いてないわけ無いよな?」
……誤魔化すのは、無理そうだった。
リリアンのピンチ!
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