愛してる
次回で完結です!
「……っ、マクノートンさんっ……!!」
私が叫ぶと、マクノートンさんは目を見開いてこちらを見る。そして、両手を口の側に当てて叫んだ。
「リリアン! 中から逃げられそうか!?」
「いいえ! 炎が廊下まで広がっていて、逃げられません!」
私が答えると、マクノートンさんは数秒考えた後、両手を広げていった。
「じゃあリリアン、その窓から飛び降りてくれ! 絶対に私が受け止める!!」
「え……」
私は一瞬躊躇った。マクノートンさんは、真剣な瞳で言葉を続ける。
「リリアン、先日はすまない! レックス殿に嫉妬するあまり、君を傷付けるような事を言ってしまった!……でも、本気で君を愛してるんだ! 番だからじゃない!……いや、最初は番だから君に求婚した。でも、君が真面目に植物の勉強をする姿や、孤児院の子供達を心配する姿を見て、君自身を愛しいと思うようになったんだ! 私は、君を失いたくない。だから……この腕に、飛び込んできてくれ!!」
私の目に涙が浮かんだ。マクノートンさんは、不甲斐ない私の事をこんなに愛してくれている。……信じられる。彼の事なら、信じられる!!
私は、窓枠に足を乗せると、思い切ってジャンプした。
どんどん落下していく身体。肌に重力を感じてとても怖い。でも、両手を広げて私を見つめるマクノートンさんを見ると、何故か安心出来た。
やがて、私の身体はスポンとマクノートンさんの腕に収まる。横抱きにされたまま、私は声を漏らした。
「うぐ……ひっく……マクノートンさん、ありがとうございます。こんな私を、助けに来てくれてっ……! 怖かった……。二度とあなたに、会えなくなるかもしれないと思うと、本当に怖かった……! 愛してます、マクノートンさん……いいえ、ヴァージル様……!!」
マクノートンさんは、目を見開いた後、私を強く抱き締めた。
「……ありがとう、リリアン。私も……君の事を、愛している」
◆ ◆ ◆
それからすぐ、レックスさんが自警団を連れて事務所に駆け付けた。自警団のお陰で無事鎮火したけれど、事務所は半壊している。私は夜が明けるまで、近くにある酒場にお邪魔させてもらう事になった。
酒場のご主人が、ご厚意でハーブティーを淹れてくれる。私は、客席でハーブティーを一口飲んで言った。
「まさか、家事に巻き込まれるなんて思いませんでした……」
私の向かいに座ったレックスさんが、困ったような顔で言う。
「うちの植物園、以前から夜中に不良達がたむろしたりしてたんだよね。今までは実害が無いから放っておいたけど……。不良が吸い終わった葉巻を事務所の側にポイ捨てしたのが火事の原因らしいから、対処しないといけないね」
私の隣に座ったヴァージル様が、私の手を握りながら言う。
「全く。私の愛しいリリアンがいなくなる所だったんだぞ。その不良を今すぐ処刑したい所だ」
私は苦笑した後、ふと疑問に思って聞いた。
「そう言えば、ヴァージル様はどうして私がここにいると分かったんですか?」
「ああ、それは、ミラベル殿に聞いたんだ」
話によると、ヴァージル様は私と花屋で会えなくなって随分と焦ったらしい。私に嫌われたかもしれないと思いつつ、ヴァージル様は私の事を諦めきれなかった。
それで、ミラベルさんに私の居場所を聞いたらしい。ミラベルさんには私が植物園で勉強をする事を話していたので、ヴァージル様は私の居場所を知る事が出来た。
そして、やっと事務所に辿り着いたと思ったら、事務所が燃えていたというわけだ。
「そうだったんですか……」
私が目を伏せると、ヴァージル様は真剣な目で私に聞いた。
「リリアン。君はどうして私を避けるように薬草の勉強を? 自惚れでなければ、君は以前から私に好意を持ってくれていたと思うんだが」
私は、気まずいながらも全てを話した。オリアーナ様にヴァージル様の出自を聞いた事。身分差があるから、ヴァージル様から離れようと決心した事。
すると、ヴァージル様は溜息を吐いて言った。
「オリアーナ様……余計な事を……。いいか、リリアン。私は、何としてでも君と結婚する気だ。身分差があっても、番同士なら結婚は許されるし、いざとなったら私のツテで君を貴族の養子にしても良いしな。……とにかく、もう二度と私から離れないでくれ」
「はい……」
私とヴァージル様が見つめ合っていると、レックスさんがホッとした顔で言った。
「いやー、良かった良かった。妹のように思っていたリリアンが幸せになれるか心配だったけれど、これで僕も心置きなく結婚出来るよ」
「へ?」
キョトンとした顔をするヴァージル様に、私は説明する。
「私も先日知ったばかりなんですけど、レックスさん、近々結婚する予定なんです。お相手は彼と同じ薬師だそうです」
先日レックスさんが実家である花屋に戻っていたのも、彼女をミラベルさんに紹介する日程を決めていたとの事。
全てを聞いたヴァージル様は、脱力したように肩を落とした。
「……私の嫉妬は一体……」
私は苦笑してヴァージル様を見つめた。真面目で、優しくて、可愛い所のあるヴァージル様。私は、一生この人を支えていこう。そう決意して、私はハーブティーを一口飲んだ。
最後までお付き合い頂けると嬉しいです^^




