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第8章 幼き判断の悲しみ


「こうちゃん、おはよー」

「おう!亮!怪我とかしてないか?大丈夫か?」

「うん」

「ゆぅちゃんは?」

「朝練が有るからって結構前に行っちゃった」

「あーーーー。テニス部って朝練あんだよなぁ。俺、寝てたいから絶対テニス部無理、笑」

「僕も朝から無理」

「偉いよなぁー、ゆぅちゃん」

「偉いんか、どうか分からないけど、よくやるよって感じ」


そんな会話をしながら学校へ着いた。


教室へ行くと仲間が亮の机の周りで駄弁ってた。

「うーすっ!」

「あれー?大河は?」

「居ないんだよ。休みかな?」

「珍しくね?」

「なっ」


翌日も木本大河は休んだ。


「俺、大河ん家に行ってみようかな」

航太が言うと、皆が行こう、行こうと言い出した。


大河の家は共働きだ。

チャイムを鳴らしても誰も出ない。


「親戚に何か有って休んでんのかな...」

大河に会えず帰った。


更に翌日も大河は休んだ。


「先生!」

「なんだ、どうした航太」

「はい、大河は何で休んでんですか?」

「あー。お前たち仲良いから気になるか」

「はい」

亮と航太は返事をした。

「大河なー、怪我して入院してんだよ」

「ええーーーー!!!」

「しっーーー!こらっ!職員室で大きな声を出すな」

「すみません」

「先生、どこの病院ですか?」

「湯川ん家の前の通りを真っ直ぐ行った所の病院だ」

「ああ!あそこかっ!亮、今日見舞いに行こうぜ」

「うん」

「コラコラお前たち。見舞いに行くのは良いが病院では静かにすんだぞ」

「はい。分かりました。先生、有難うございます」

亮と航太は職員室を後にした。



「大河が入院ってマジかーーー」

恭太等仲間がザワついた。


放課後、見舞いへ行った。


病室を覗くと右脚にギブスで固定され吊るされていた。

左腕もギブス。

顔面も包帯で覆われていた。


「たいが...」


「やっほー」


「どうした?」

「うん、急に何人かに襲われてさ」

「え?」

「鉄パイプでボコボコにされて、このザマよ」


「誰がやったか分かるか?」


「多分だけど、この間の奴。ボコボコにされている時、あいつが居たんだよな」


しばらく沈黙が続いた。


亮が沈黙を破るように

「僕のせいだ...ごめん大河くん」

亮はポロポロ泣き出した。


「仕返しって事かよ!」

誰かが発狂するように叫んだ。


「大河くん本当にごめんね。僕が...僕のせいで...」

「亮、気にすんな。母ちゃんがメッチャ優しくしてくれんだぜっ!ラッキー」

「大河くん...」



見舞いの帰り道

「仕返しだとしたら個人行動をしないで

極力俺等固まって動こうぜ」

航太が言うと


「だよな。でもマジで今ムカついてて俺。やっちまいたい気分」

恭太が苛付いていた。


亮は自分のせいで大河が酷い目に遭ってしまった事で気持ちが落ち、言葉を発せられずにいた。



家に着いて部屋で亮は考えた。

「僕が囮になって、奴らを誘き寄せよう。奴らを僕が叩きのめそう。大河くんの仇打ちだ」


計画も無いまま亮は

日曜日、一人で街をふらついた。

案の定、亮の後ろを一定間隔で付いて来る奴等がいた。

「うん、よし。土手だ。この間の土手まで行こう」


歩きながら

仇打ちと言いながらも怖さも有った。


「どうしよう...」

今更になって亮の心は不安で一杯だった。



土手付近で亮は振り返り、震える声で

「何か用なわけ?男なら来いよ」

挑発した。


鉄パイプやら金属バットを持った輩がゾロゾロと出てきた。


亮が想像していたより多い人数で一瞬

「うわっ、多い...どうしよう...僕、死んじゃうのかな...」

思った反面、体の奥底から興奮する亮がいた。


「うおりやーーーー」


四方八方から亮に向かって攻撃に掛かる。


頭を殴られ倒れ込んだ。

頭から流れ出る血を見た瞬間にスイッチが入った。


相手の鉄パイプを奪い反撃に出る。

金属バットを持った奴が襲いかかる。

スッと寝そべり

相手の弁慶の泣き所を強く殴打した。

「うう...」

倒れ込んだと同時に金属バットを奪い

なりふり構わず殴りまくった。


「どいつだ?どいつが親玉だ?アイツか?」


親玉らしい奴に飛びかかり殴りまくった。

その時

包帯だらけの遠藤の姿が視界を捉えた。


「お前のせいで大河くんがっ!このヤロー!」

遠藤を叩きまくる。


遠藤はピクリとも動かなくなった。


日曜だったせいもあり

土手で遊んでいた子供連れの大人が警察へ通報した。

そのまま亮は捕まった。


傷の浅い亮に対して相手方のほとんどは負傷した。


遠藤に関しては片目を失明する事になった。





留置所に居る亮を心配し両親が飛んで来た。

母親は泣き崩れ

父親は青ざめていた。

「今日は息子には会いません」

そう言って返って行った。


裁判にすら来なかった。


来る勇気が両親は持てなかったのだ。


少年院行きになった亮を航太と恭太が

護送車に乗る寸前の亮に

「りょーーーー!!」声を掛けた。


亮は二人の顔を見る事が出来なかった。


亮は護送車の中で泣いた。


航太や恭太、仲間達と毎日楽しく過ごしていた事が頭を過り

もう二度と、その中へ戻れないのだと感じた瞬間、泣いた。


少年院へ入って1ヶ月後にようやく両親が面会に来た。


「亮」

「...」

母親は泣き崩れ言葉が出なかった。


「いいか亮。

お前はなにが有っても私たちの子供だ。

お前の事が好きで愛おしくて。

まさかこんな事が起きるなんて

想像してなかったんだ。

ママは寝込むし、パパも眠れない日を沢山過ごした。

ごめんな。

亮の苦しみとか考えてあげれなくて」


父親が何とか言葉を繋いだ。


「僕に構わないで」

本心では無い。

申し訳無さが込み上げ

そう言うしか無かったのだ。


亮の視界に、うっすらと入る両親は

やつれていた。


「亮、待ってるからな。腐るな」


「だからさ...」


「いいか、亮。お前はパパとママの大切な宝物だ。構わないで居れるわけが無いんだ」


「なにが有ってもだ」


亮は俯き声を出さずに泣いた。


亮の固く結んだ拳に涙が落ちた。





遠藤への慰謝料などを両親が工面した事を留置所で聞いていたからこそ尚更、何も言えず、亮のことなど捨てて欲しいとさえ思っていたのだ。

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