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第6章 境界線

「俺、部活辞める」

航太が言うと

「実は俺も思ってた」

恭太が返事した。


「え?2人とも辞めるの?亮も辞めてお前たちも辞めるとなぁ...つまんねーしなぁ」

結局、同じ小学校だったバスケ部員は全員辞めた。

小学校時代、強豪で知られたあのチームが。


中学のバスケ部に残ったのは、お世辞にもバスケが上手い子と言える者はいなくなった。


元バスケ部員となった亮たちは

集団で放課後遊び回るようになる。


その中の一人が言った

「兄貴がボクシングしてて俺もやろうかなーって」


「おお!ボクシングいいなぁ!」

「俺もやろっかな」

「俺も!」


一気に火がついた。




「パパ」

「ん?どうした?」

「僕、ボクシングを習いたいんだけど...」

「亮がか?」


「うん」

「良いんじゃないか」


「ありがとうパパ。こうちゃんも恭太くんも他の友達もみんなで習うんだ」

「元バスケ部員全員か?」

「うん」



「スポーツに打ち込むのは良いことだ」

「ただ...」

「パパと約束して欲しい」


亮はゴクリと唾を飲み込み、父親を真っ直ぐ見た。


「ボクシングで習った事を絶対に他人には使わない」

「約束して欲しい。出来るか?」


「使わない!約束するからっ」




授業が終わると毎日ジムに通い出した。


基礎、基礎、基礎

基礎を徹底的に教え込まれた。


縄跳び、スクワット、腹筋、走り込み。


それだけの毎日でも誰も辞めようと思う者は居なかった。

バスケで培った根性が根付いていた。



気づけば

1000回の縄跳びも腹筋も

10kmランも

こなせるようになっていた。


基礎運動でヘトヘトの身体に追い打ちをかけるように、ミット打ちやサンドバッグ。


その繰り返しは、

亮たちの中にあった小さな反抗心を、少しずつ削ぎ落としていった。




ある日の帰り道。

自転車に乗り

連なって帰っている途中で

塾帰りのゆりあと、その友達が男に絡まれているのが見えた。


亮はブレーキもかけずに

自転車を投げ捨て妹の所へ走り出した。


仲間たちも後に続いた。


「ゆぅ!どうした?」


「りょーちゃん...」


ゆりあの目を見た瞬間

父との約束が頭から消えた。



「てめぇー、なんだぁ、あー?」

イキながら相手が言い終わる前に

亮は拳を叩き込む。


「うぅ...」


よろめく相手に、更に詰め寄り


「誰の妹に手出してんだ」

ドスの効いた低い声。


「ほら、来いよ。相手してやんぜ」

亮の目は、完全に変わっていた。


豹変した。


相手が倒れても、亮は止まらなかった。


馬乗りになり、顔面を殴り続けた。



「亮!やめろ!もう良いだろう!」

「りょーちゃん、もう終わってぇ...!」



だが亮の耳には

仲間の声も妹の声も届かなかった。



拳を振り下ろすたびに、

えも言えぬ感覚が心地よかった。



そして

力で相手をねじ伏せる快楽が

亮の何かを変えた。


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