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第5章 本当は誰も見えていない

「と言うことですのでバスケ部を辞めて頂きますので」

「大変申し訳ございませんでした。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」

航太の親も恭太の親も平謝りに謝った。


亮の父親が振替休日で、たまたま家にいた。

「そうですか。承知しました」

「ひとつ先生へ伺ってもよろしいでしょうか?」

「はい、何でしょうか?」


「暴力は確かに良くないです。

ですが、そもそもの発端は

うちの亮を執拗にイジメ、挑発していたのが原因です。学校側ではその事を把握されていましたか?

また指導はされましたか?」


「え...と...」


「把握し指導されての判断ですか?」


「いや...あのう」


「歯切れ悪いですよ先生。答えてくださいよ。

指導はされてい、た、の、で、す、か?

私の申してます事をご理解されてます?」


「はい。理解はしておりますが、あのーー、そうですねぇ...えっとですねぇ...」


「先生、私が質問した事に対して答えてくださいよ。先ほどから、えっと、あのう、ばかりで。

把握されていたんですか?指導されたんですか?」


「す、すみません。今初めて知りまして」


「と、言う事は当事者それぞれに話を聞いていないと言う事ですね?」


「申し訳ございません」


「それで退部ですか?

本来、退部すべき子は違うと思いますが」


「何故

こう言う事が起きたのか確認もせず

怪我をした子の話だけで

処理されたと理解してよろしいですね?」


「で、ですから...」

「なんでしょうか?」


「暴力は良くないので」


「先生の仰る通りです。

暴力は良くないですよ。

うちの亮は小学生の頃からイジメられ

体中が痣だらけでした。

学校へ相談しところ更にイジメに遭い

今現在、生きていなかったかも知れないほどでした」


「先生、再度確認です。

暴力はいけないんですよね?」


「あ、あのう湯川さん、当校入学以前の問題は手前どもでは分かりませんので」


「いえいえいえ、先生。

うちの亮は中学に入ってからも

定規を折られたり、体操服を破られたり

上履きはズタズタにされましてね。

これは物に対する暴力と言うか

亮のメンタルを傷付けると言う暴力ですよね?

違いますかね?

暴力の定義を教えてくださいよ先生。

教育者なら保護者が納得いく教えをくださいよ。

亮のバスケ部退部は受け入れますよ。

ただ、航太くん恭太くんは亮が余りにも不憫で見ていられずに出てしまった行動です。

中学生と言え、まだ子供です。亮の物を壊すと言う暴力を振るった子がバスケ部に残るなら

2人も残れるんじゃないですか?

違いますか?

コッチの暴力はダメで

アッチの暴力は良い

どう言う事ですか先生」


「は、はあ...」


「先生は何が問題かご理解されてますか?

正直に申し上げて先生との会話ほど

不毛な物はないですよ。

時間の無駄に感じますね。

もはや教育委員会へ報告した方が早いと感じました」


「そ、それは...」


「あのですね先生。

この通話は全て録音させて貰ってましてね。

言った言わないが無い様に。

ネットにアップしても構わないんですよ。

世間に問うのが良いかも知れませんね。

この教師の判断は有りなのかどうかを」



謝る気など更々なく学校側へ圧とも脅迫とも似た物言いで、更に教師の指導に問題が有ると話をすり替えたのである。



航太と恭太の退部は撤回された。



菓子折りを持ちイジメっ子の家へ父親と亮は出向いた。


「見てくださいよ、うちの子の前歯が折れたんですよ!どうしてくれるんですか!」

「私はね、許しませんよ。お帰りください」


息巻く親に向かって亮の父親は口を開いた。


「分かりました。ただ、一言よろしいですか?」


「話しても無駄ですよ!」


「取り敢えず伝えますね。

うちの亮は小学生の頃、転校するまでお宅のお子さんに沢山の暴力とイジメに遭い体中が痣だらけでした。

写真も撮って有ります。ノートや教科書に落書きをされました。それも取ってあります。

そして中学になってからも亮の体操服をやぶいたり上履きをボロボロにしたり」


「そ、そんな...。うちの子がやったと言う証拠が何処にあるんですかっ!」


「お子さんは取り巻き何人かと一緒に亮に向かってこう言ったんですよ」


「このカッターはジャージも靴も切れる優れ物だよなぁーって」


「ふざけて言っただけで実際にやったかどうかなんて分かりませんよね?」


「何を仰ってるんですか。

取り巻きの子達へのヒアリングは済んでいるんですよ。

お宅のお子さんがやったと!

その場に居た子全員が言ってましたけど。

コチラは、おおごとにしても構いませんよ。

当事者と、その保護者とを集めて。

むしろ、その方が誰が謝罪すべきかハッキリ分かって良いかも知れませんね」


「...」


「お宅の息子さんがやっていないと言うなら、今、私たちの前に出したらどうですか?」

「息子は今ちょっと...」


「今はちょっとと仰るなら、いつが良いんですか?良くなるまで此処で待たせて貰いますけど。

私どもが待つのは困るんですよね?

言い逃れ出来無いことを分かっているから困るんですよね?

うちも、お宅同様、許しませんよ。

出るとこ出ましょうか?

お子さんを犯罪者にしてさしあげましょうか?」


「うちはこうして菓子折り持って、不本意ですが謝罪に来ました。

お宅は小学生の頃、学校に呼ばれ保護者として自分の子が何をしでかしたか担任や学年主任から聞かされましたよね?

それでも謝罪に来ませんでしたよね?」


「そ、それは子供がやった事ですし」


「ならば今回の件も子供がやった事じゃないですか!何が違うんですか!中学生と言えど

つい2〜3ヶ月前までランドセルを背負ってた子供ですよ」


「被害者ぶるのも結構。

可哀想な我が子と酔いしれるのも結構。

但し!

現実見て下さいよ!

どれだけ

お宅のお子さんが他人を傷付けていたか。

うちの子達がバスケ部を辞めざる負えないと言うなら私もお宅のお子さんの悪行を学校へ報告します。本来バスケ部を辞めるべきは

お宅のお子さんですよ。分かってますか?

どんな育て方をしたら、そんな子供になるんですか?

他人をイジメ傷付けるのが楽しい子供に育つなど、親として私は不思議で仕方ありませんよ。

親としてきっちり責任持って子育てしてないから

どうしようもない子供に育つんですよ!

お宅の謝罪もコチラは受け入れませんから。

全て学校へ報告するまでです。失礼します」



「亮、帰るぞ」


言うだけ言い、外にでた。



「パパ...」


「亮!」

(うっ、怒られる...)


「亮、腹減らないか?」

「パパ」

「ラーメンでも食って帰ろうぜ」

「うんっ」

「あいつん家の親、ムカつくな。亮は何も気にするな」

「パパ」


「こうちゃんと恭太くんはバスケ部に戻れる事になった。亮はダメだ。仕方無い」

「うん...」


「やり方を間違えたかも知れないけど、亮の為に2人はやってくれたんだ。良い友達だな。大切にしろよ」

「パパ...」

「亮の優しい心がパパは好きだ。家族や友達、大切な人を守れる男になれ」


亮は泣きながらラーメン屋まで歩いた。


家に着くと母親がいつも通り笑顔で

「お帰りなさい。遅かったじゃない」

「ああ、亮とラーメン食べて来たよ」


「パパとりょーちゃんズルいーーー!ゆぅも食べたい!」

「ゆりあ、パパがお土産に餃子買って来てくれたよ」

亮が渡すと

「ママーー!ギョーザーーーー!今食べたいーーーー」


いつもと変わらぬ風景だった。




亮の父親は航太と恭太の親へ電話をした。


「うちの愚息が、ご迷惑をお掛けして大変申し訳ございません。全ては亮の意気地の無さから起きた事です。ご子息さまとご両親さまに大変なご迷惑をお掛けしお詫びのしようもございません」

「全て学校へ伝えバスケ部の退部は破棄されましたので」

「大変申し訳ございませんでした」

「ただ、愚息の為に間違ってやり方だとしても動いてくれた心意気は正直、親としてグッと来るものが有るのも事実です。どうぞこれからも亮と友達でいてくださると嬉しいです」


「何を仰るんですか湯川さん。うちのバカがやらかした事で逆に亮ちゃんに迷惑掛けてしまって」



どちらの親も、そう返答するしかなかった。


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