第19章 二度目のサイレン
「次は体育だね、ゆりあちゃん」
「うん」
「一緒に着替えよう」
「恥ずかしいよぉー笑」
「なにー、今更ゆりあちゃん」
「成長期につき笑」
「分かったから、行こっ」
更衣室で着替えていると友達が見てしまったのだ。
「ゆりあちゃん...」
「言わないで...」
ゆりあの身体中が痣だらけだったのだ。
「誰が?」
「ぶつかっただけなの」
「ぶつかっただけで、こんなになる?」
「お願い、誰にも言わないで」
「でも...」
「お願い!言ったら友達辞めちゃうからっ」
「ママー。今日体育の時、ゆりあちゃんと一緒に着替えたんだけど身体中に痣がいっぱいあって」
「えー?」
「ゆりあちゃんのお兄ちゃんって前にさぁ」
「こらっ!滅多な事を言うもんじゃありません」
「でも。だったら誰がやったって言うの?」
「分からないし、憶測で言う事じゃないの。分かる?これは誰にも言っちゃダメよ」
「うん、分かった」
「もしもし、いつも娘がお世話になっております。あのうクラスメイトの湯川ゆりあちゃんについて、先生へお知らせしたい事がありまして」
ゆりあが必死に懇願したのにも関わらず
全ては学校の知るところとなった。
「どうして?どうしてバラしたの?」
「言ってないよ」
「うそっ!嘘つき!」
ふふっ……
黒いゆりあがチラリと顔を覗かせた。
ゆりあが眼帯をしスーパーでの買い物帰りに恭太に偶然会った。
「よっ、ゆりあちゃん!」
ゆりあは顔を隠すように俯き
「恭太君、こんにちわ」
「ゆりあちゃん、どうしたの?元気無いじゃ...ゆりあちゃん...これは...」
「何でも無いの」
「そんなわけ無いじゃん!誰がやったの?
ねえ、誰にやられたの?」
「勝手にぶつかっただけなの」
「そんなわけ無いじゃん!腕とかにも...」
「お願い、見なかったことにして」
「誰?誰がこんな事を?もしかして...俺の頭に浮かんでる人で合ってる?」
「違うよ、違う」
「じゃあ、違うなら亮に言ってもいいね?」
「お願い恭太くん言わないで!」
「なんで?」
「言ったら、もっとゆりあ、りょーちゃんに叩かれる...」
「やっぱり。亮か...いつから?」
「...。」
「いつからなの?ゆりあちゃん」
「パパとママがいなくなってから」
「原因は?急に?」
「きっと、ゆりあがいけないの。料理も下手だし洗濯とかも。全部ゆりあが悪いから」
「そんなわけ無いじゃんっ!ゆりあちゃんは未だ中学一年生なんだよ!出来なくて当たり前なんだ」
「お願い、りょーちゃんに言わないで」
「何も解決しないよ」
「ゆりあがちゃんとしたら、きっと、前のりょーちゃんに戻ると思うの」
「ゆりあちゃん、もし俺が自分の母ちゃんに折檻されてたとすんじゃん。ゆりあちゃんが知ったらどうする」
「恭太くんを助ける...」
「それと今、同じ事が起きているんだよ。わかる?」
「でも怖いの。りょーちゃん怒ると怖いの」
「あーーーーチキショーーーー!」
恭太は頭を掻きむしった。
「航太、今、ゆりあちゃんと三角公園に居るんだけど来れるか?」
恭太は航太へLINEを送った。
「恭太!ゆぅーちゃん!」
航太は直ぐ公園へ来た。
「航太、見ろよ。ゆりあちゃん...」
「!!!」
「どうしたの?」
「亮がやったらしい」
「えっ?」
「結構頻繁にゆりあちゃんに手を挙げてるらしい」
航太は足の力が抜け、へたり込んだ。
「ゆりあちゃん、ひとりで辛かったね」
「大丈夫です。ゆりあが悪いから」
泣きながら答えた。
「何があっても暴力は良く無いんだ。これは手を挙げた亮が悪いんだよ」
「俺等から亮に言う」
「お願い!それだけはやめて!」
「大丈夫。絶対にゆりあちゃんに手を出させない様にするから」
「そんなの無理!やめてっ!」
「ただいまー。腹減ったー!ゆぅちゃーん!」
「お帰り亮」
「こうちゃん!来てたの!てか、みんないる!どーしたのー!!パーティーでもするのっ??」
「亮」
航太の低い声がリビングに響いた。
「こうちゃん...?」
「亮、なんでだ?」
「え?」
「ゆぅーちゃん」
「ゆぅーちゃんの事?え?なに?」
「知らないなんて言わせねーぜ!恭太!」
恭太がゆりあをガードしながら一緒にリビングへ入った。
「なあ、亮。なんでだ?2人しかいない家族だろーが」
航太は泣きながら
「なんで、こんな事を...なんでだよ!」
「ゆりあちゃんのこの顔をみたら大人は通報するぞ。ゆりあちゃんの望んでいない事だ。亮、今日は航太の家で寝ろ。ゆりあちゃんの怪我が治るまで航太の家だ!」
恭太は亮に告げた。
「亮、それでも俺等はお前を友達だと思ってる。二度としないって信じてっから。俺ん家、行くぞ、ホラ」
航太に連れられ亮は家を出た。
「ゆりあちゃん、もし良かったら俺がお世話になってる従兄弟の兄ちゃんのとこに来ない?」
「大河くん...」
「中学にも近いよ」
「み、みなさん、有難うございます。実はアタシ、いつか、りょーちゃんに殺されるんだろうなって思ってました」
「なんで、そんな...」
「パパとママがいなくなってから
りょーちゃんが時々怖くて。
でもそれはゆりあが悪いからだって分かってるんです。でも、りょーちゃんは朝方までゆりあを叩き続けるから、きっと殺されるって」
「亮のやつ、どうしちゃったんだよ!」
「ゆりあちゃんも知ってると思うけど、本当の亮は優しい奴だよ。なんで...」
皆がゆりあを慰める。
「取り敢えず、友明兄ちゃんとこに行こう!」
「急にこんな腫れ上がった顔の女の子が来たら迷惑だと思うので。りょーちゃんも居ないし。ここで大丈夫です」
「何かあったら直ぐ連絡ちょーだい。絶対にだよ!」
仲間たちそれぞれが
ゆりあとLINE交換した。
「どんな事でもすぐに連絡してね!」
「はい、有難うございます」
皆が帰りひとり寝静まっていると
ゆりあの前に亮が立っていた。
「ゆうちゃん...」
「きゃーーーーーー!!」
救急車やパトカーが家の前へ来るのは
これで2回目だ。
ゆりあは緊急搬送され
亮は現行犯逮捕となった。
近所の人が通報したのだ。




