第16章 掬い、また零れる
亮たちは高校2年生になっていた。
小学校からの面子で飽きもせずつるんで遊んでいた。
ゆりあは小学校6年生になっていた。
母親のしつこい中学受験要請をどう交わすか日々考えていた。
ゆりあの目下の楽しみは図書館通いだ。
ある日図書館へ行くと見覚えのある顔があった。
「大河くん?」
ノートにペンを走らせている手が止まり
顔をあげた。
「あ!ゆりあちゃん」
「よかったーー!人違いだったらどうしよかなって」
「僕のこと、覚えててくれてたんだね」
「そりゃー、勿論です!今日は、りょーちゃんと一緒じゃないんですね」
「あ、うん。って言うか中学卒業の少し前から、ずっと会ってないんだ」
「えっ??」
「亮に聞いてない?」
「はい。何も。ええーー」
「ちょっとさ家で色々有って、実家を出たんだ」
「いつですか?」
「高校の合格発表があった後にすぐかな」
「転校したんですか?」
「ううん。うちの親、俺が家出した事とか恥ずかしいって多分そのままにしてたと思う」
「え?どういう...」
「ゆりあちゃんには難しい話かな」
「理解出来てます!ただ、転校もしないでそのまま在籍してたけど学校に全く登校してなかったって事ですよね?」
「さすが亮の妹だ。飲み込み早いね。賢い」
「いえ、そんな。大河くんは親と揉めて家を出て。行き先はわかってるんですか?」
「多分、知らない」
「家出人捜索って言うか、警察に...」
「ないない。うちの親、俺のことなんか
これっぽっちも心配して無いんだ」
「そんな...」
「そう言う親なんだ」
「すみません」
「どうして?」
「色々聞いちゃって」
「本当の事だから構わないよ。ゆりあちゃん知ってたら教えて欲しいんだけど、亮はどこの大学に進むとか聞いてる?」
「りょーちゃんですか?」
「うん」
「りょーちゃん、多分、大学に行かないと思います」
「そうなんだ」
「あっ、それから、お願いなんだけど俺と会ったこと誰にも言わないで欲しいんだ」
「りょーちゃんにもですか?」
「うん」
「りょーちゃん、多分、大河君のこと気にかけていると思います」
「誰にも何も言わないで消えたからね俺」
「りょーちゃんとか、こうちゃんとか知ったらきっと喜ぶはずなのに」
「亮も航太も優し過ぎるくらい優しいからな。今は亮や航太、仲間たちに会うのは難しいんだ。大学で再会する為に必死に勉強してるんだ」
「だから、さっき聞いたんですね」
「そそ」
「また、ここに来ますか?」
「うん、来るよ」
「そしたらアタシ、ちょくちょく
りょーちゃんたちの情報を伝えに来ますね」
「嬉しいけど、家から遠いじゃんここ。家の人が心配するんじゃない?」
「そんな事ないです。うちだってアタシが居なくなっても平気な親だと思います」
「それは無いだろーー」
「愛されて無いのは本当です」
以来、図書館で大河と会うようになって行った。
ある日、ゆりあが学校から帰宅すると
両親が血塗れになって倒れていた。
「きゃーーーー」
ゆりあは驚き震え後退りした。
「どうして?どうして?」
「りょ、りょーちゃんに電話しなくちゃ」
スマホを握りしばらくすると
聞き覚えのある着信音がすぐ近くで鳴っていた。
脱衣所だ。
行ってみると亮も倒れていた。
「りょーーーちゃんっ!!!」
「何か、朝、家に押し入った人が居るらしいのよ」
「ゆりあちゃんだけ無事だったそうよ」
「小学校の飼育係か何かの当番で早めに家を出たのが救いだったみたい」
「3人ともアレなのかしら?」
近所の人たちがヒソヒソと話していた。
パトカーと救急車とが
亮の自宅前にランプを光らせながら停車していた。
黒山の人だかりだ。
亮だけが担架に乗せられ救急車が発進した。
「んー?今日、ゆりあちゃん図書館来るって言ってた日だよな...」
「来れなくなったか。まっ、いっか」
まさか亮の家で大事件が起きてるなど大河は知る由も無かった。




