第14章 それぞれの大切なもの
「やったぁーーー!!!」
「おっし!!」
皆が同じ高校に合格した。
だが実際には大河だけは進学しなかった。
「公立行くなら月謝は出さない。制服代も出さない。自分でやって」
母親が冷たく大河を突き放したのだ。
どうしても亮から引き離したかったのだ。
「折角、私立にも受かってるんだから、先を見据えて私立へ進んで欲しい」
母親は口実を作り説得する。
大河は航太に打ち明けた。
「俺、高校行かないと思う」
「え?なんで?」
「母ちゃんが亮と同じ高校行くなら月謝も制服代も全部出さないって」
「なんで亮と同じじゃダメなんだ?」
「母ちゃんは俺がボコられて入院したじゃん。そっから亮と関わるのを嫌がってたんだ、実は」
「そっかぁ。親だったら、そうなるかもな」
「うん。でも俺は亮も航太もみんな大好きなんだ。亮が少年院に行ったのも俺の仇打ちが原因だと思っているんだ。それでも亮は前と変わらない態度でずっと俺に優しい良い奴なんだ」
「確かにな。でも難しいよなぁ」
「母ちゃんに亮のお陰で成績上がった事も言ってんのに感謝の気持ちも無いし。俺に金なんか無いの知ってて、わざと出さないって言ってんだよ。だったら俺は高校行かないで働く。働いて家を出る。高卒認定取って働きながら勉強して大学か専門かどっかで
またみんなと合流する」
「もう一回、おばちゃんに言って納得してもらうしか無いよな...」
「無理だよ、うちの母ちゃん、思い込むと違う角度から物事見れないから。いいんだ、もう」
航太は自分の母親に聞いた。
「俺が亮と仲良くしてんのって内心嫌だったりすんの?」
「急になによ?どーしたの?」
笑って答えをはぐらかす。
「嫌だったりすんの?教えて!」
「んーー。そうね。半分半分よ」
「嫌な思いをしてんだ」
「そうねぇ。成績が上がった事は本当に感謝してるし、元々ママの生徒さんだったでしょ。凄く素直で良い子だって言うのも分かる。航太と喧嘩もしないでよく付き合ってくれて本当に有難いって思う反面ね。航太がもし大河君の立場だったらって思うとね。我が子に怪我負わされて喜ぶ親は居ないから」
「みんなの母ちゃんもそう思うのかな?」
「よそのお宅の事は分からないけどさ」
「大河、高校受かったのに亮と同じ学校だからお金出さないって言われたんだって。おばちゃんが私立行けって」
「そう...大河くんは私立も受けたの?」
「うん」
「そう」
「でも大河、俺等と同じ高校に行くのにお金出してくれないんだったら、どこの高校にも行かないって」
「行かないでどうするの?」
「働くって」
「働くって言っても中卒じゃ、どんな仕事があるのかしら?心配だわ」
「分かんないけど、働きながら高卒認定取って大学か専門かで俺等と合流するって」
「ママがもし大河くんなら我慢して私立へ行くかなぁ」
「なんで?」
「んー...。新しい友達との出会いもあるし
素晴らしい先生との出会いがあるかも知れないでしょ。3年間だけでしょみんなと離れるのは」
「もしまた大河くんと話す機会が有ったら3年後また合流しよう!って言ってあげなさい。近所なんだし遊ぼうなって。私立はどんなとこか教えてくれって」
「う...ん」
「よそのお宅の事情には航太もママも入れないのよ」
「俺も私立受けようか」
「あら。二次募集で受けてみる?」
「大河だけ別って何か...可哀想だし。淋しいだろうなぁ大河」
「ひと晩寝て答えを出したら?」
「うん、そうする。おやすみ」
「はい、おやすみー。明日ちゃんと早く起きるのよーーー!」
「はーい」
「母ちゃん、そんなに公立行かせたく無いんだったら俺はどこの高校にも行かない!」
「大河!」
「母ちゃんマジでうぜぇー!俺就職すっから!家も出る。もう二度と母ちゃんとは関わらない!」
バチン!
大河の父親が叩いた。
「好きにしろ。なんで母ちゃんの気持ち理解しようとしないんだ!」
「何なら今すぐ出て行ってくれても構わないぞっ」
「父ちゃんも直ぐ手を出せば良いって思ってんだろ!力でねじ伏せようって!それって俺をボコった奴等と一緒じゃんかよ!」
「俺ばっかりだ!俺ばっかり親ガチャ失敗して!母ちゃんの気持ち理解する前に親なら子供の気持ち理解しろよっ!」
大河は家を飛び出した。
その日を境に、自宅へ帰って来る事は無かった。
中学の卒業式にも大河の姿はなかった。




