第13章 小さな世界
「あいつが湯川亮か」
亮たちが放課後、ゲーセンで屯っている所を相田が見ていた。
「相田さん、どうします?」
遠藤が聞いた。
「お前のもう片方の目も無くなって良いなら、やってやるぞ」
「相田さん...」
「あいつの顔をよく見てみろ。周りの奴と違うのが分からねーか?」
「え?」
「あー、お前は片目だからな笑」
相田の嗅覚が、直感が
「関わるな」と言っている。
「遠藤、お前は負けたんだ。仕返しなんかすんな。今度は命取られっぞ。あいつの目の奥見てみろ。笑ってねーし、感情ねーし。ああ言うのが一番厄介なんだ」
「悔しいんです俺」
「あのな、遠藤、お前マジで...」
「なんですか?」
「いや...」
「なんですか?途中でやめられたら気になります」
「ふぅー。遠藤、お前じゃ、どうにもなんねぇー相手だって事だ。お前はこれから先、大人しく生きろって事だ。湯川絡みで俺を頼って来んな。テメーでやれ」
遠藤を見切った。
「俺の人生まで滅茶苦茶にされてたまっかって!」
「あれ?」
「どうした航太」
「あれ、あいつ」
「うわっ。亮に気付かれたらやばくね?」
航太と恭太は遠藤と相田を見掛けてしまったのだ。
「ちっと、俺等便所行って来るわ」
航太と恭太は仲間の輪から外れ遠藤たちの所へ行った。
「な、なんだよ」
遠藤が言った。
「俺らはゲーセン楽しんでるだけだ。亮に手出しすんじゃねーぞ。亮はいつでも捨て身になれる奴なんだ」
「お前誰だよ?」
相田が口を開いた。
「そう言うアンタこそ誰だよ?」
航太は言い返した。
「あ?俺に喧嘩売ってんのか?」
相田の存在を知らない航太たちにイライラして来た。
「喧嘩なんか売る気は毛頭ない。ただ、俺を知っての口の聞き方かって聞いてんだ!」
「アンタなんか知らねーし、知る気もない!」
「それと世の中の人がアンタのことを知ってると思ってんのダセーぞ」
「アンタらの小さなコミュニティで威張り散らしてる分には構わない。が、俺等にまでそれを押し付けるな」
航太も恭太も臨戦態勢だ。
「ふっ」
相田は笑みとも取れぬ笑みをこぼし
「ああ、俺は今さっき遠藤に単にあいつが湯川亮だと聞かされただけだ。それだけの事でガタガタ言いに来てんのはテメー等の方じゃねえのか?」
「たまたま入ったゲーセンにテメー等がいた。遠藤が教えた。ただそれだけだ。何かしたんなら言われても良いが。何もしてねーのに、テメー等言葉気を付けろよって話だ」
「ああー、思い出した。確かぁ...テメー等の仲間が病院送りになったんだよなぁ。今は何もしてねぇ俺に喧嘩売った形だぞ。俺は、俺に失礼な態度を取る奴が大っ嫌いでねぇ。男ならテメーの発した言動に責任とれよなっ!楽しみが増えたぜっ」
言うだけ言って相田はゲーセンから出て行った。
残った遠藤に向かって
「お前はどうなんだ?」
航太が遠藤に詰め寄ると
「な、なにもしねーよっ」
「妹にも、俺等にもか?」
「テメー等なんかに関わんねーよ!」
「お前が何もしなければコッチも関わらない」
「相田さんを怒らせたツケは俺とは別軸で有る事だけは覚えとけよっ!」
逃げるように遠藤もゲーセンを後にした。
「折角、亮が帰って来たのにな。もう二度とああ言う思いはしたくないよな」
恭太が言うと
「うん、だな。遠藤じゃ無い奴...アイツ、何か仕掛けてくっかな?」
航太が言うと
「そん時はそん時っしょ」
恭太は気にもしていなかった。
航太も恭太も仲間内の世界だけで充実した日々を送りたいだけだった。
その後、相田からの仕返しが有るのかと内心思っていたが何も起こらなかった。
放課後、遊んだり勉強したりバランス良く過ごしていくうち中学3年の2学期を迎えた。
仲間たちは似たような成績を収められる様になり
「バイトして小遣い増やしたいから
やっぱ公立だよな俺等」
「どの辺、狙う?」
会話の中に当たり前の様に進学先の話が入って来るようになった。
「ぼ、僕、情報処理系に進みたいって考えてて。みんなは将来何になりたいとかあるの?」
亮は自分の進みたい道に無理に仲間を引き入れることに躊躇していた。
「俺は何も考えてなくて。亮は凄いな。ちゃんと見据えてて」
「そんなんじゃないけど高校出てその後は専門に行って情報処理的な仕事に就きたいなって思ってて。みんなのなりたい夢があるなら、それに近い高校へ進むのが良いのかなって」
「俺はねーーー単純にみんなと一緒が良いだけなんだ。将来は高校入ってから決める」
「俺もそんな感じー」
「だったら亮の行きたい高校を目標にしね?」
「あ!それいいっ!やっぱ亮と別々になんのはなーーー。正直寂しいよなっ」
浅い考えの末に受験の本命校が決まった。




