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最高に可愛い童顔令嬢は、最強の守護者達に守られている  作者: 文月みい


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可愛い天使の爆弾投下



「ユーリ、私ね、考えたのだけど、学園を退学して、魔法塔で魔法研究を続けようと思うの。」


 朝の登校時間。俺が考えていた予想の更に上をいく恐怖の一言。


 リリが、何だかソワソワと落ち着かないので気になっていたら、先程の爆弾発言を、さらっと口にする。


 余りの衝撃に、暫く思考停止して固まる。そんな俺に、追い打ちをかけるようにリリが言葉を続けていく。


「学園の授業は、入学前に既に学んだことだから、無理して通わなくても良いと思うの。今の私の状況では、そもそも教室に入れないでしょう。だから、この際スッキリと学園を辞めて、魔法塔で魔法研究に集中した方が、絶対に良いと思うの。」


 キラキラした笑顔が眩しすぎる。


 恐れていたその何百倍も破壊力のある言葉に、俺の心は瀕死の状態。


 向かいに座っているリヒトも言葉を失い、茫然とリリを見つめている。


「お父様にも事情を説明した手紙を書いたの。こういうのは、早い方が良いでしょう。明日には、手紙を出そうかと思ってるから、早ければ今週中には退学届けを出せるかしら。」


 お父様にも手紙を書いたと聞いて、思考停止の状態から一気に頭が覚醒する。

 お父様にまで、状況が知られたら後戻りが出来なくなる。


「ちょっと待ってリリ。少し落ち着こう。学園を辞めるのは絶対に駄目だよ。」


 リリが可愛い顔して、不思議そうに首を傾げる。天使の可愛さに、つい気が緩みそうになる。

 くっ…。可愛いけれど、気を強く持って、リリの可愛さに負けては駄目だ。何が何でも阻止しないと、がんばれ俺。


「学園を辞めると言うことは、貴族と認められず、平民になると言うことだよ。そんなの絶対に駄目だよ。お父様もお母様も許すわけない。」


 通う必要のない学園に、わざわざ入学したのは、学園を卒業しないと貴族として認められないからだ。

 リリも、その事はきちんと理解しているはず。それなのに、そんなことを言うなんて、嫌な予感しかしない。


「知ってる。私、別に平民でもいいかなって思ってるの。ユーリがいるから、ゴルドリッチ家は心配ないし、私が貴族でいる意味も特にないよね。」


 こんな時の嫌な予感は、絶対に外れてくれない。さっきよりも大きな爆弾が落とされ、俺とリヒトまでもが、リリの予想外の言葉に倒れる寸前だ。


 リリの良さでもある、考えるよりも気持ちのままに即行動という性格が、今回はとても悪い方へと向かっている。


「リリ、それでも、学園を辞めるのは駄目だ。平民になるなんて、そんな簡単に言うものじゃないよ。リリが考えるよりも、平民の生活は大変なんだよ。それに、こんなに可愛い天使が街に居たら、すぐに誘拐されてしまう。絶対に駄目だ。何が何でも退学だけは許さないよ。」


 こんなに可愛いリリが街を歩くだけで、男達からの視線は、リリに釘付けになるだろう。それに、可愛すぎて悪い男に誘拐される最悪の未来が想像できる。

 嗚呼、そんなこと考えただけで、怒りで今すぐ街を破壊してしまいそうだ。


「仕方ないわね。ユーリが言うならもう少し考えてみるわ。あっ!着いたわよ。じゃあ、今日も魔法研究がんばるね。ユーリとリヒトも勉強頑張ってね。」


 可愛く手を振って、眠るルミナを首にクルクル巻き付けて、今日も嬉しそうに魔法塔へと走り出す。

 

「帰りはすぐに迎えに行くから、絶対一緒に帰ろう。約束だよ、リリ!」


 俺の声に、リリが振り返り笑顔で頷くと、また目的地に向かって走り出す。


「これは、リック兄様にも相談しておくか。」


 リリが勝手に退学届けを出してしまわないように、リック兄様にも話しておこうと決めた。

 取り敢えず、リリが平民になる事は一旦無くなったので、街を破壊しなくて済みそうだ。

 向かいで顔面蒼白でショックを受けているリヒトを何とか正気に戻して、俺たちも教室へと向かう。



♢♢♢♢♢




「おはようございます。ユーリアス様、リヒト様。」


 リリが教室を出ることになった元凶の一つ。


 笑顔で挨拶をするアンジュ嬢に、俺はイラつきながらも、作り笑いで挨拶を返す。

 

「おはようございます。アンジュ嬢。」


 先程のリリの退学発言を思い出して、理不尽だとは思うが、アンジュ嬢に怒りが沸いてくる。


「おはよう。コルトブル男爵令嬢。君に名を呼ばれるほど仲良くないので、家名で呼んでくれと言っているだろう。」


 リヒトは、アンジュ嬢に名を呼ばれ、不機嫌に言葉を返す。


 リヒトの言葉に、両手を胸の前で組み、悲しそうな顔をして、アンジュ嬢が言葉を返す。


「そんな、折角同じクラスになれたのですから、私みんなと仲良くなりたくて、他の方も名前で呼んでいますし、リヒト様も名前で呼ばせて下さい。」


 リヒトの眉間の皺が凄いことになっている。何度言っても、名前で呼んでくるアンジュ嬢に、リヒトのイライラも頂点に達したようだ。


「悪いが、君とは仲良くするつもりはない。俺が望む女性は、唯一人だけだ。君ではない。だから、馴れ馴れしくされると不愉快だ。」


 今度は、リヒトの言葉に、アンジュ嬢の顔が僅かに歪む…が、それも一瞬で、すぐに笑顔に戻る。


「分かりました。これから気をつけますね。」


 あの廊下で抱きついて来た女性がアンジュ嬢だと知り、リリの悪い噂にも関わってると知ってから、リヒトはアンジュ嬢を嫌っている。

 アンジュ嬢は、リヒトも自分の側に置きたいようだが、まず無理だろう。


「あっ!セドリック殿下にエリオット様、おはようございます。」


 教室に入ってきたセドリック殿下とエリオットの元に、アンジュ嬢がワントーン高い甘えた声を出し、透かさず走って行った。


 いつもの張り付けたような作り笑いでセドリック殿下が、彼女の機嫌を取っている。


 その隣では、エリオットもピクリとも表情を変えず、彼女に対応している。


 リリが居なくなった教室は、本当に退屈で、輝きを失ったその場所は、見るもの全部が灰色に染まる。

 

 嗚呼、今日もまた、可愛い天使が傍に居ない。つまらない一日が始まる。

 

 

 


 


ここまで、読んでいただきありがとうございます。

 次から、楽しいこと大好きなリック兄様が登場です。リリの事を相談して、真面目にアドバイスしてくれたら良いのですが……。


 次は、明日(6/23)の夜に投稿予定です。

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