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最高に可愛い童顔令嬢は、最強の守護者達に守られている  作者: 文月みい


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魔法が使えない天使の危機



 始めてのテストが終わって数日後。


「ユーリ、リヒト、今日のおやつは…、なんと!クリームたっぷりフルーツタルトです。うわぁ、美味しそう。ねえ、早く食べよう。」


 リリの提案で、天気が良いので自宅の庭でお茶をしようと準備してもらった。

 

 ガゼボまでは、リリに手を引かれながら、俺とリヒトと三人で席に着く。

 フルーツタルトを目の前にして、リリのテンションは爆上がりだ。


「本当だ。とても美味しそうだね。リリが好きそうな感じだ。このマカロンも美味しそうだ。リリも食べてみる?」


 マカロンを一つ取ってリリの口元に運ぶと、あーんと口を開けてパクッと食べた。雛鳥に、ご飯を食べさせる親鳥の気分。


 くぅあぁぁ、何これ、可愛すぎる。もう一つマカロンを口元に運ぶと、またあーんして、パクッと食べた。


 やっぱりダメだ。可愛すぎる。もう一つ…と、マカロンを手に取ると、リヒトからストップが掛かる。


「ユーリアス、やめろ。これ以上は、マカロンが喉に詰まるぞ。」


 その声に我に返り、リリを見ると、口いっぱいのマカロンを一生懸命モグモグしながら、俺を潤んだ瞳で見つめている。


「かわっ……。いや、ごめん。余りにも可愛すぎて、止まれなかった。リリ大丈夫?ゴックン出来るか?お茶飲む?」


 ふるふると首を横に振り、暫くモグモグとしていたが、ちゃんと飲み込めたようだ。


「ちょっと苦しかったけど、マカロン美味しかったよ。ユーリもリヒトも食べてみてよ。」


 今度は、リリがマカロンを両手に一つずつ持つと、俺とリヒトの口元にそれを近づける。

 リリの、「あーん」の声に釣られて、俺もリヒトも口を大きく開けると、リリがマカロンを口に入れてくれた。

 甘く柔らかな食感で、いつもより美味しく感じた。


「フフ、美味しい?」


「特別、美味しく感じる。ありがとう、リリ。」


「とても、美味しかった。俺からもお返しした方がいいか?」


 フルーツタルトをフォークで小さく切り分け、リヒトがリリに手を伸ばす……のを、俺が邪魔して食べてやった。


「リヒトは、リリへの過度な接触は禁止だと言っただろう。あーん、なんて以ての外だ。」


 リヒトとリリの間に席を移動して、シッシッと手を振って、近づくなと牽制する。


「もう、ユーリ意地悪しないの。リヒトとは仲直りしたでしょ。折角の美味しいおやつなんだから、仲良く食べよう。ほら、早く食べないと、私が全部食べちゃうよ。」


 フルーツタルトを頬張りながら、幸せそうな顔で笑う天使が降臨。はぁぁ可愛すぎて、その笑顔だけで胸いっぱい。


「待って、俺も食べるから。」


「リリアーベル、もう一度マカロンが食べたい。マカロンを食べさせ…」


「リヒトには、俺が食べさせてあげるよ。」


 リヒトの口にマカロンを詰め込む。それを見て、リリが可笑しそうに笑った。


「二人が仲良しで私も嬉しいよ。」



 


 これから、どうなるのか不安も多いが、今のところ、リリ自身は普段と変わらない。


 魔力は溢れないように、ルミナやベルが定期的に吸収し、それでも足りない分を魔道具を使って吸収する。そして、他にも……。


 魔法が使えなくて、魔力が溢れ続けるリリは、幼い頃の魔力過多症を思い出させ、俺の心は不安で押し潰されそうになる。


 でも、今は、あの頃とは違う。


 だから、きっと大丈夫だ。


 


♢♢♢♢♢♢



 テスト最後の日、殿下の口から信じられない言葉を聞いて、その場に崩れ落ちた。


「リリが、魔法を使えないって…実技試験に落ちたって…。これからどうなるんですか?まさか、Sクラスからも脱落ですか?」


 あんなに頑張っていたのに、こんなことになってリリが悲しむ。その事が俺の心を痛めた。


「いや、リリアーベルの実力は先生方も知っている。クラスを下げる事は無いだろう。そこは、学園長とも相談する。それより、リリアーベルが、急に魔法を使えなくなった理由が問題だ。そして、魔力量の件も、すぐに解決しなければ、リリアーベルが危ない。」


 先程から、殿下とリヒトが深刻な顔で話していた内容が、リリの魔法と魔力量の件だった。

 

 リリのテストの順番は最後だった。そして、リリの番が回ってきて、いざ本番という時、リリはウトウトし出した様だ。

 そして、意識がはっきりしない中、普段と違う方法で魔法を使った結果、失敗して魔力暴走を起こしかけた。

 救出した時のリリは意識は無く、ぐっすり眠っていた様だ。

 そして、試験会場を全て調査した結果、試験を待つ生徒の控え室に薬を使った痕跡が見つかった。


「つまり、リリが魔法を使えなくなったのは、誰かの干渉があったと言うことですか?」


「その可能性が高い。ただ、控え室は他の生徒も、勿論私も使っていたが、その時は怪しいところはなかった。何か仕掛けたとしたら、リリアーベルが一人で待っていた、ほんの数分のことだと思う。」


 他の人に影響が無かったのであれば、リリを狙ったことは確実だ。


「薬とはどんなものか解析は済んでいるのですか?」


「詳しいことは分かっていない。ただ、影の話では、もしかしたらネムネム草が使われたのではないかと言うことだ。そして、甘い匂いが残っていたようで、これは、アマロ草の特徴的な匂いに似ていたようだ。」


「ネムネム草?アマロ草?」


 薬学には詳しくないので、薬草の名前を聞いても分からない。ネムネム草は、名前から眠りに関する薬草っぽいが、アマロ草は全く予想できない。


「ネムネム草は、不眠症の患者に使われたりする薬草だ。睡眠薬などに使われる。アマロ草は、魔法を使うものには毒になる薬草だ。魔力器官を刺激して、魔力を乱す効果があるんだよ。」 


 まだ、詳しいことは分からないようだが、リリの状態から、その二つの薬草が使用された可能性があると言う。


「誰かが、その薬草を使ってリリがテストに落ちるように画策したと言うことですか?それか、命を狙っていたのか。魔力暴走が起これば、リリは死んでいたかも…。クソッ!」


 座り込んだまま、ドンッと、床を思い切り両手で殴る。リリを、傷つけようとする者が近くにいる。

 嫌な気配がするとルミナが言っていたのに、結局また、リリを危険な目に合わせてしまった。


「ユーリアス、今回の事は、生徒の安全を確保出来なかった学園にも問題はある。だから、学園側が責任を以て調査を行うと約束してくれた。そして、もう一つ、これはリリアーベルの命に関わることだ。魔力器官が薬の影響で上手く機能してない。今のままでは魔力が制御出来ず、体から溢れ魔力暴走を起こしてしまう。だから、定期的に魔力を外に出す必要があるんだよ。ルミナとベルだけで、対応できればいいが、無理なら他の対策を考えなければならない。」


 セドリック殿下の説明に、咄嗟に無理だと思った。幼い頃は、ルミナが魔力を吸収して、リリ自身が制御もしていたから、魔力が安定していた。リリが制御出来ないなら、溢れる規格外の魔力量をルミナ一人が抑えるのは無理だ。


「セドリック殿下…、多分、ルミナだけでは無理です。幼い頃のリリの魔力量でもルミナ一人では無理だったんだ。成長したリリの魔力を、リリの制御なくルミナ一人で抑えるのは無理でしょう。」


 力なく答える俺に、その場が静まり返る。


 解決策は、リリの魔力をどうにか減らして、暴走しないようにする事だけ。

 でも、普通の魔道具では役に立たない。リリの莫大な魔力では、すぐに使い物にならなくなる。


「ユーリアス、大丈夫だ。俺がリリアーベルの魔力を吸い出す。ルミナ一人で無理なら、他の者も使えばいい。」


 リヒトが、力強く俺の背中を叩いて、気合いを入れてくれる。


「そうだな。俺も少しなら力になれるぞ。ユーリアス、大丈夫だ。俺が力を貸すんだから、絶対に大丈夫だ。」


 オリヴァーも、任せろと胸を張り、いつもの得意気な顔で俺を見る。

 いつものオリヴァーの様子に元気をもらう。


「私も勿論、力を貸すよ。学園でも上位の魔法師達が揃ってるんだよ。ユーリアス大丈夫だよ。みんなでリリアーベルを守ろう。」


 リリを守る会のメンバーでもあるセドリック殿下の言葉は、何より信用できる。


 みんなの、友人たちの言葉がこれ程にも心強く、不思議とリリは大丈夫だと思わせてくれる。


「みんな、リリのためにありがとう。どうか、リリを助けてくれ。」


 まだ静かに眠る可愛い天使が、目覚めて後に不安にならないように、事実を知って悲しまないように、それだけを思いながら、天使の目覚めを待っていた。




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