初めてのテスト ⑥
初日に大盛況だったはずの勉強会も、日を追うごとに参加人数が減っていった。
Sクラスの人達は、問題なく参加をしていたが、Aクラス以下の生徒達は、付いていけない者が多かった。
俺達の会話を口をあんぐり開けて茫然と見つめている人や、質問をする生徒に返答しても、説明の意味が分からず笑って誤魔化す人までいる。
そういう人は、大体翌日には来なくなっていた。
「試験まであと3日だっけ?勉強会も翌日には、半分以上が来なかったもんな。昨日も、コルトブル男爵令嬢と先輩方が数人くらいだったか?今日は、どこまで減るか楽しみだな。」
オリヴァーが、楽しそうに勉強会での出来事を俺達に話して聞かせている。
昨日は、先輩と魔法実践をしてオリヴァーが勝ったようだ。その先輩は今日は来ないだろうな。
「コルトブル男爵令嬢は、意外としぶといですね。こちらの会話も理解しているようですし、頭は悪くはないのでしょう。」
溜め息を吐いて、エリオットが疲れた様子で、アンジュ嬢の話をする。
続く言葉に「態度は悪い」って聞こえてきそうな雰囲気に苦笑いする。
初日に、俺が塩対応をしたお陰か、アンジュ嬢は、俺以外の人の所へ出向いて、可愛さアピールに全力を出していた。
♢♢♢♢♢♢♢♢
「エリオット様、ここが分からないのですが、今いいですか?」
エリオットと領地経営について話していると、アンジュ嬢がエリオットの隣の椅子に腰掛け、エリオットの制服の袖を引っ張った。
キュルルンと効果音が聞こえてきそうな程、瞳を潤ませ上目使いでエリオットを見つめている。
「……。質問ですか?何でしょうか?」
エリオットが、驚くほど低い声に、女子に向けるには有り得ないくらいの冷めた視線を向けながら彼女に答える。掴まれた袖を払うのも忘れていない。
「…え…えっと、ここなんですけど――」
笑顔が若干ひきつったが、何とか耐えたアンジュ嬢は、果敢にもエリオットに質問をし続ける。
俺の時と同様に、触れるか触れないかの距離を常にキープして、笑顔は忘れない。
答えが分かると、あのキュルルン笑顔で、鼻にかかる甘えた声を出し、感謝の言葉を口にする。
「エリオット様の教え方、すごく分かりやすかったです。ありがとうございます。やっぱり、真面目で努力家のエリオット様だから、沢山お勉強をして、こんなに丁寧に分かりやすく教えることが出来るのですね。わたし尊敬します。」
そう言うと、またエリオットの袖をそっと掴みながら、うっとりとした表情で見つめている。
エリオットは、眉間にギュウと皺を寄せて、不機嫌に彼女を横目で見ると、さっきよりも分かりやすく袖を掴んだ手を払い落とした。
「もう質問がないなら邪魔なので、あちらで自習でもしていたらどうですか?私は、ユーリアスと大切な話の続きがあるので、もういいですよね。」
明らかな拒絶に、アンジュ嬢が少しだけ表情を曇らせるが、すぐに立て直して満面の笑顔を作る。
「分かりました。二人の邪魔をしてすみません。また分からないことがあったら教えてくださいね。」
アンジュ嬢は、そのまま席を立ち俺達から離れた。
「エリオット、お前って凄いな。女性に対して、あそこまで冷たく出来るなんて見習いたいよ。」
俺が、感心して尊敬の念で見ていると、エリオットが怪訝な顔をして俺を見る。
「貴方も似たような物ですよね。リリアーベル以外の女性に対しては、人を見る目とは思えない程、嫌悪感に満ちていますよ。女性にあんな視線を向けるなんて、私もユーリアスを尊敬しますよ。」
自分では上手く隠しているつもりだったが無駄だったか。全身を駆け巡る嫌悪感は、隠そうと思っても隠せないらしい。
「そうか。顔に出てるか。仕方ないな。ベタベタ媚を売る女は嫌いだから…。」
「私も、嫌いですよ。」
エリオットが、アンジュ嬢の去っていった方向に視線を向ける。
どうやら、エリオットのアンジュ嬢への評価は、最低まで落ちてしまったみたいだ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
もう少しテスト期間続きます。最後までお付き合いよろしくお願いします。
次話は、明日の夜に投稿予定です。よろしくお願いします。




