前世に使ったもので、欲しかったアレ
「おはよう、リリ。昨日はよく眠れた?」
「おはよう、ユーリ。しっかり眠って、朝から元気いっぱいよ。」
昨日の夜は、少し元気がなくて心配だったけど、もう大丈夫みたいだ。
普段通りの可愛い笑顔を見せる天使に、ホット胸を撫で下ろす。
やっぱり、リリには笑顔でいて欲しい。
「あれ?リリ、そのピアス初めて見るけど、昨日の贈り物?」
リリの耳に見たことないピアスがキラリと光る。
「あっ、それは…、昨日ね、リヒトに貰ったの。誕生日プレゼントだって。」
リリが恥ずかしそうに頬を染め、ピアスに触れながら微笑む。
「リヒトに会ったの?あれから?あいつ帰ってきてたのか。ねえ、リリ、結構夜も遅かったと思うんだけど、まさか部屋に入れたりしてないよね?」
リリの反応が気になり、二人の間に何かあったのかと勘繰ってしまう。
「そんなわけないでしょ。部屋の外で話したの。誕生日に渡したかったって、プレゼントを貰っただけよ。」
「それなら、いいけど…。」
淑女のリリなら、その辺はちゃんと分かっていると思うが、男が夜分に姉の部屋に訪れると言うのは、考えるだけで嫌だ。例えそれが、リヒトだとしても許せそうにない。
リリに近づく男は、リリに相応しいヤツか、俺とお父様でテストして、ちゃんと合格した男じゃ無いと許されない。
まずは俺に勝ち、俺よりも強い男でないと、リリを託すことは出来ない。
改めて、リリに悪い虫が付かないよう目を光らせておこうと決心する。
♢♢♢♢♢♢
「ユーリアス、頼まれてたもの出来たぞ。」
朝食の後、リヒトから呼び止められ、あるものを渡される。
「頼まれてた物?まさか……出来たのか?」
リヒトから、薄くて四角い小さな物体を渡される。
手のひらサイズのソレは、前世で馴染みのアレだ。
(うわぁ、懐かしい。触った感じも似てるな。)
「本当に苦労したぞ。帰るのが遅れた理由の一つは、これの為でもあるんだからな。」
「まさか、本当に作るなんて、凄いなリヒト。ありがとう、感謝するよ。それで、一つだけじゃないよな?」
笑顔で、もう片方の手を出すと、リヒトが溜め息を吐いて、呆れ顔でもう一台渡してくれた。
「はぁ、本当に感謝してるのかユーリアス。」
「勿論、感謝しかない。それより、帰るのが遅れた理由は他にもあったのか?俺、他にも何か頼んでたっけ?」
リヒトが、''しまった''と言う顔をして、口元を手で覆う。
じっと見つめる俺に、視線を合わそうとせず、目が泳いで怪しい。
「……いや、何もない……国のことだから気にするな。それより、リリアーベルにも渡さないと意味がないだろう。」
何かを隠してるようだが、国の事だと言われれば、これ以上聞くことはできない。
「そうだな。リリにも渡してくる。それで、機能は、どこまで再現できた?これを使って話すことは出来るのか?」
リヒトに頼んでたもの。それは、前世で使っていたスマホを作れないかということ。
あったら便利だな、くらいで話したら、リヒトが作りたいと名乗り出て、魔族の国協力の下で作ってしまったらしい。
「まだ改良が必要で、話すことは出来ない。だが、魔力を関知して居場所の把握や追跡に、文字を伝えることは出来る。使ってみて何かあれば教えてくれ。」
「それなら、前に作った魔力追跡の魔道具の代わりになるな。文字も送れるなら、話せなくても、離れた人と連絡も取れるし上出来だ。何台作ったの?」
「俺とユーリアスとリリアーベルの分は持ってきた。大量に作る予定は無いから、今はそれだけだ。」
元々、この世界に広める予定は無かった。ただ、リリの事が心配で、リリのために欲しかった物だから、今はそれでいい。
「それじゃあ、リリにも渡して、使い方も説明しないとな。ほら、リヒトも行くぞ。」
リリの名前を出すと、リヒトが少し戸惑う様子を見せる。
いつもと違う態度に、さっきのリリの反応を思い出し、何だか面白くない。
「そういえば、昨日の夜にリリの部屋に行ったんだって?」
真顔で固まったリヒトを、ジト目で見ると、それに気づいた彼が慌てて言い訳する。
「違うからな。ただプレゼントを渡しただけだ。あっ、そうだ、ユーリアスにもプレゼントがあるんだ。これ、渡しておく。遅くなったが、誕生日おめでとう。」
慌てたリヒトから、プレゼントを渡される。何かあったのがバレバレな態度に、問い詰めたくなるが、これ以上は何故だか、俺がダメージを受けそうなので我慢する。
「これも作って貰ったのに、別でプレゼント用意してくれたのか。ありがとう。」
「いや、これは俺も使うから、贈り物とは違うだろう。それより、もう大丈夫だ。リリアーベルの所に行こう。」
気持ちの整理がついたのか、いつものリヒトに戻り、リリの部屋へと歩き出す。
「ちょっと待って。急に一人で行くなよ。」
先に歩き足したリヒトに、小走りで付いていく。
この後、新しい魔道具として、リリに渡して使い方を説明すると、大興奮し感動していた。
前世の中学生の時、俺も初めてのスマホに大喜びしたことを思い出し、どこでも初めては一緒だなと感慨深い気持ちになった。




