愛しい君へ
「今日は、予想外の事も起きたけど、とても素敵なパーティーになったね。」
「そうね。まさか、精霊王様が現れるなんて考えてもみなかったわ。フフ、精霊王様って、とても面白い方だったわね。それに、私たちの為に青空や虹まで見せてくれて、優しくて素敵な方だわ。」
あと数時間で、今日が終わる。
「俺たちの誕生日も、もうすぐ終わりか。」
「もうすぐ…終わりね。やっぱり、リヒトは間に合わなかったわね。」
リリが、寂しそうに笑った。
リヒトが、帰国して1ヶ月以上経つ。
今までこんなに長い期間、離れることは無かった。
それに、リヒトがこの家に来てから、毎年誕生日は一緒に祝ってくれた。だから、今日のパーティーには、必ず参加すると思っていたのに、リヒトは帰ってこなかった。
「誕生日には、間に合わなかったけど、きっと、もうすぐ帰ってくるよ。帰ってきたら、一緒に祝えなかった事を、絶対に悔しがるだろうな。俺は、リリのドレス姿が綺麗だったと自慢しようかな。」
寂しそうなリリに、少しでも元気になって欲しくて、明るく努めたら思ったより勢いがついて、最後に声が大きくなる。
クスクスと可愛らしく笑う声が隣から聞こえる。リリが可笑しそうに口元を押さえる。その可愛い顔には、輝きが戻っていた。
「ありがとうユーリ。そうね、きっと、すぐに帰ってくるわよね。」
窓の外は、すっかり暗くなり空を見上げると、キラリと光る多くの星が、空いっぱいに広がっている。
「リリ、もう休もうか。今日は疲れただろう。」
「疲れたけど、楽しかったわ。また、来年もみんなと一緒に、誕生日が出来たら良いな。」
「そうだね。来年も絶対、みんなと誕生日パーティーをしよう。そして、また、リリとお揃いの衣装を用意しよう。約束だよ。じゃあ、おやすみ、リリ。」
「おやすみなさい。ユーリ」
リリと別れてお互いの部屋へと戻る。
今日は、夢のような1日だったが、明日からは、日常が戻ってくる。
今まで以上に楽しい学園生活になるよう願ってベットに入る。
相当疲れてたのか、ベットに入ると直ぐに瞼が重くなる。抵抗できずに、俺はそのまま眠りについていた。
――コンコン
リリが部屋に戻って、暫くして誰かが扉をノックする。
「…だれ?ユーリ…?」
「リリアーベル、俺だ。」
リリが急いで扉を開けると、一番会いたかった人が目の前に立っていた。
♢♢♢♢♢♢♢♢
【リヒト視点】
「こんな時間にごめん。どうしても今日、渡したかったんだ。少し時間を貰えるか?」
どうしても今日、彼女に会いたくて、家族を説得して何とか帰ってきた。
パーティーには、残念ながら間に合わなかったが、日付けが変わる前に戻って来られた。
「リ…ヒト…。どうして…」
驚いた彼女の目には、うっすら涙が光る。
「今日はリリアーベルとユーリアスの誕生日だろう。だから、どうしても今日、会いたくて帰ってきた。リリアーベル、誕生日おめでとう。」
「あ…ありがとう。もう、今年は、誕生日一緒に祝えないと…思ってたから、リヒトに会えて…嬉しいよ。」
彼女が、いつもの可愛らしい笑顔で嬉しそうに手を伸ばし、俺のシャツをそっと握る。
「本当は、少し国に帰って、直ぐに戻ってくる予定だったんだ。それなのに、帰るのが遅くなってしまった。ごめんな、リリアーベル。もしかして、俺に会えなくて寂しかった?」
彼女の恥ずかしがる顔が見たくて、顔を覗き込み、小さく笑う。
「すごく、寂しかった。リヒトに会いたかったよ。花祭りも一緒に行きたかったし、今日も…リヒトが居ないのは…寂しかった。」
シャツを握る手に力が入り、何処にも行かないでと言われているようで、胸がぎゅっと苦しくなる。
揶揄うつもりで、そう言ったのに、予想外の反応に俺の方が動揺してしまう。
可愛い反応に、思わず抱き締めたくなる衝動を抑えて、ここに来た目的を彼女の前に差し出す。
「これを、今日中に渡したかったんだ。誕生日プレゼントだよ。」
彼女が、プレゼントと俺の顔を交互に見ながら、驚いた顔から、ぱぁっと明るい表情に変わる。
「リヒトからの…プレゼント…?」
大事な物を受け取るように、両手でそっとプレゼントの箱を包み込む。
「リリアーベルに似合うと思って、気に入ってくれたら嬉しい。」
「ありがとう。開けてもいい?」
俺が頷くのを見て、そっと箱を開ける。
「わあ、可愛い。」
「リリアーベルの為だけのピアスだよ。これには、俺の魔力が込められている。君に何かあれば、魔法が発動して君を守ってくれる。だから、ずっとつけていて欲しい。」
嬉しそうにプレゼントを眺める彼女に、喜んでくれたと安堵する。
俺の色を使った独占欲丸出しのピアスだが、きっと彼女は気づいてない。
それでも、拒絶されないことに、嬉しさを覚える。
「とても、可愛いわ。あの、つけてみてもいい?」
「いいよ。俺がつけてあげる。」
彼女の綺麗な髪を耳に掛け、ピアスを一つ取って、耳朶に触れる。
ピクッと体を震わせ、緊張する彼女は、耳や首筋まで真っ赤に染まる。
「何だか…照れちゃうね。えーと…どうかな?似合う?」
照れて笑う彼女が、愛おしくて、もっと俺を意識して欲しくて、彼女の耳元に口を寄せる。
「すごく似合ってるよ。リリアーベル、可愛い。」
「…ひゃ」
小さな悲鳴と、苺のように真っ赤になった彼女の反応に満足する。
「本当に、リヒトはたまに意地悪ね。」
不機嫌に横を向いた彼女に、もう一度俺を見て欲しくて、彼女の髪を一房手に取った。
「怒らないでリリアーベル。少しだけ俺を見て欲しくて、兄のようではなく、一人の男として、意識して欲しくて…だから、ほら、こっちを見て。」
そのまま手に取った髪へと口づけると、こちらを向いた彼女と視線が重なる。
「そんなの…そんな…ふうに思ったことない。リヒトは私の兄じゃないでしょ。」
また、彼女の予想外の言葉に、俺の方が動けなくなる。
「もう、ムリ。恥ずかしい。あの、プレゼント、ありがとう。おやすみなさい。」
彼女が視線を逸らし、そのまま扉を閉める。
「兄じゃ…ない。」
幼い頃から一緒にいて、兄のように慕われていると思ってたけど、違った?
彼女の言葉の意味を考えながら、今度は、俺の方が真っ赤になる。
その日は、愛しい彼女の事で頭がいっぱいで、なかなか寝つけなかった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
次から、学園生活に戻ります。誕生日が終わって、忘れていたテスト期間がやってきます。




