花祭りと花火
ユーリアス視点になります。
リリが無事に戻ってきた。
「リリ!リリ、良かった。どこも何ともない?ああ、無事で本当に良かった。心配したよ。」
「ユーリ、心配かけてごめんなさい。エリオット様が助けてくれたから大丈夫よ。」
戻ってきたリリを、ギュウと抱き締める。そこにリリが居ることを実感でき、安堵する。
「リリが人混みに紛れて居なくなったと聞いて、どれだけ心配したか…。もう、一人で勝手に行くのは禁止だからね。エリオットもリリを見つけてくれてありがとう。」
「いや、それより殿下達も心配してるだろうから、そのままカフェに戻ろう。オリヴァー達も何もなければ、そこに戻って来るだろう。」
エリオットの言葉に、リリと二人頷いて、歩き出す。勿論、リリの手はしっかり繋いで離さない。
カフェに戻る途中で、リリが裏通りに居たことや、男たちに連れて行かれる寸前だったこと、エリオットが助けてくれたことなど話を聞いた。
「エリオットが間に合って本当に良かった。改めて、感謝する、本当にありがとう。」
もし、エリオットがいなければ、リリは確実に誘拐されていただろう。それを思うと恐怖で胸が押し潰されそうだ。
それから、カフェに戻ると、リリを見て安心した顔のセドリック殿下に、泣きながらリリを抱きしめるビアトリス嬢。その後ろで、無事を喜ぶアンジュ嬢にと、その場が皆の安堵の笑顔に包まれた。
「みなさん、心配かけてごめんなさい。それで、これは、心配かけたお詫びに…友情の花飾りを贈ります。」
リリがエリオットと戻る途中、皆へ贈る花飾りを準備していたようで、一人一人に手渡す。
「これは…ありがとう、リリアーベル。とても嬉しいよ。まさか、こんなサプライズが待ってたなんて、本当に嬉しいよ。」
セドリック殿下が、優しく目を細め、リリからの花飾りを大事に受け取る。
「ありがとう、リリアーベル。大事にするわね。フフ、あなたに似て綺麗で可愛い花飾りだわ。」
ピンクや白のカンパニュラの花飾りに、嬉しそうなビアトリス嬢。
「わた…わたしにまで、花飾りをありがとうございます。リリアーベル様。」
恐縮しながら、花飾りを受け取るアンジュ嬢は、感激でうっすら涙を浮かべている。
「オリヴァー様は、まだ戻ってないのね。どうしましょう。探しに行った方がいいかしら。」
リリは、窓の外を覗いて、心配そうにオリヴァーの事を気にかけている
「必要ない。こちらの護衛が呼びに行っている。リリアーベルが気にする必要はないよ。その花飾りも私が預かろう。ちゃんとオリヴァーにも渡しておくよ。それより、色々あって疲れたんじゃない?リリアーベルを休ませる為に、そろそろ帰った方がいい。」
「でも、私を探しているオリヴァー様を置いて帰るのは失礼よ。私もオリヴァー様が戻るまで待っているわ。」
セドリック殿下の提案に、リリが待つと主張するが、セドリック殿下は首を横に振る。
「頼むリリアーベル。私は、君が居なくなって、何かあったらと不安で、どうにかなりそうだった。今も君が目の前にいるのに、あの時の恐怖を思いだし、心臓が早鐘のように鳴り響いている。だから、私の心の平穏の為にも、今は安全な場所にいて欲しいんだよ。」
セドリック殿下が、リリの右手を取り、自分の左胸の方へと持っていく。
セドリック殿下の胸にリリの掌が、そっと触れると、リリが驚きで目を見開いた。
「わ…わかりました。今日は、もう帰りますから、殿下、手を離して…。オリヴァー様には、後日お詫びを致しますから、先にこの花飾りは、殿下に預けておきますね。」
真っ赤になったリリが、セドリック殿下から手を引き抜くと、少し残念そうにリリを見つめる。
「殿下、勝手にリリに触れるのは止めて下さい。可愛いリリが混乱するでしょう。」
「私の心を知って貰いたかっただけだよ。別に減るものじゃないしいいだろう。」
「いや、殿下が触れると、何か減る気がするので、触らないで下さい。」
そんなやり取りに、日常が戻って来た気がして、リリが傍にいる事に安心できて、改めてホッとする。
♢♢♢♢♢♢♢
そんな、大変な日から一夜明け、今日は花祭り最終日。
今日は、恋人達の祭りの為、リリと俺は家で過ごすことにする。
昨日、帰宅後しばらくして、オリヴァーが戻ってリリの花飾りを受け取ったと連絡が来た。オリヴァーの事を心配していたので、無事に殿下達と合流できて、リリも安心できたようだ。
「ねえ、ユーリ。今日は魔法塔で、昨日壊れた魔道具を修理したいの。一緒に行ってくれる?」
リリからの可愛いお願いに、迷うことなく返事は決まっている。
「勿論だよ。改善点も含めて、俺も手伝うよ。」
「ありがとうユーリ。それじゃあ行きましょう。」
リリと一緒に、魔動車へ乗り込み魔法塔を目指して出発する。
王都は、昨日と同じで人が多いが、よく見ると、どこを見てもカップルだらけ。
みんな腕を組み、幸せそうな顔で歩いている。通りも、昨日とは飾りつけが少し変わり、ハートが付いた看板に、ハート型のスイーツに、花祭りもバラが多い。
「みんな幸せそうね。私まで笑顔になるわ。昨日は、みんなに迷惑かけたけど、友達と参加した花祭りは楽しかったわ。今年は、リヒトが居なくて残念だったけれど、来年は一緒に参加出来たらいいわね。」
「そうだね。来年も、きっと、友人達と花祭りに行こう。」
窓の外を眺めて、可愛い明るい笑顔を見せるリリだが、国に帰っているリヒトを思い、残念そうに少し寂しい笑顔に変わる。
リヒトが我が家に来てから、家族のようにいつも一緒にいるので、たまに帰国すると、俺も少し寂しく思う。
リリを元気づけたくて、魔道具の話をすると、一瞬で笑顔に戻る。
可愛い天使には、暗い顔より笑った顔がよく似合う。
この笑顔をずっと守れるなら、俺は、どんなことにも負けないよ。
――ドーン!パラパラパラ…。ドーン!
「ユーリ、花火始まったわ。わぁ、綺麗ね。」
「本当だ。綺麗だね。ここからだと、花火がよく見えるな。」
魔法塔で、魔道具を改良しているうちに、外はすっかり真っ暗で夜になっていた。
普段なら、時間を忘れて、いつまでも作業するのはリリで、俺がそんなリリに注意するのに、俺まで夢中になっていた。
肝心なときに壊れて使えなかった魔道具を次こそ確実に使えるように、改良に改良を重ねて、最高の出来に仕上げていく。
「外は夜になってたのね。全然気づかなかったわ。また、セバスに怒られちゃうわね。」
大きな音に手を止めて、外を見てみれば、空には綺麗な花火がいくつも上がっている。
「きっとセバスに怒られるね。だけど、リリと夢中になってたお陰で、特等席で花火が見られたから、俺としては幸運だったよ。リリに感謝だね。」
初めての魔法塔からの花火は、目の前に大きく広がり、空に咲く大輪の花のように綺麗で、思わず感嘆の溜め息が漏れる。
「はぁ、綺麗だね。来年も、そのまた次も、ずっとずっと、リリと一緒に花火を見たいな。」
「きっと、ずっと一緒に見られるわよ。来年もこの特等席で一緒に花火を見ましょう。」
いつまでも、空に咲き続ける綺麗な花火を見ながら、隣には可愛い天使なリリに、俺は幸せに包まれていた。
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次は、明日の夜に投稿予定です。よろしくお願いします。




