忘れていた過去 《リリアーベル視点》
【リリアーベル視点】
私には、双子の弟がいる。
弟の名前は、ユーリアス。大好きで、私の大切な可愛い弟。
私たち双子は、元々仲良しで、いつも一緒に居ることが多かったけれど、性格は少し違っていたの。
私は、体を動かすことが大好きで活発な性格。弟は、部屋の中で積み木や絵本を読んでもらう事が好きな穏やかな性格だった。
そんな弟が、私達が3歳の頃に、突然人が変わったように、いろんな事に挑戦するようになった。
普通は5歳から始める本格的な勉強も3歳から始め、家庭教師からは天才だと褒め称えられていたわ。剣術の稽古も始めたら、すぐに才能を発揮して、大人を驚かせていたの。
何より、私よりもしっかりしていたし、どの3歳児よりも大人びて見えたわ。
そんな凄い弟が、誇らしくて、格好良くて、自慢だったの。
そんな私達が、3歳の頃に初めて従姉の誕生会に参加することになった。
そこで、宿敵アンナマリーと出会った。
今、思い出しても腹が立つし、アンナマリーは、本当に大嫌い。私の大事な弟を傷つけて、私の事も馬鹿にした。
悔しくて悔しくて、その日は家に帰ってからも涙が止まらなくて、部屋で一人たくさん泣いたわ。
一番悔しかったのは、ユーリをちゃんと守れなかったことよ。
私が馬鹿にされたことで、優しいユーリは心を痛めて悲しそうな顔をしていた。お姉ちゃんなのに、大事な弟にそんな顔をさせてしまって、私はそれが悔しくて、悲しかった。
だから、次こそは、ユーリを絶対に守ろうと誓って、私も勉強を頑張った。
もう、誰にも馬鹿にされないように、言葉使いも、勉強も、マナーも完璧に出来るようにと、一生懸命頑張って、みんなから小さな淑女だと評価を貰った時は嬉しかったな。
もう、何があってもユーリの事は守れると思ったのに、宿敵アンナマリーは、簡単には倒せなかった。
私達の4歳の誕生日。双子の運命を変える出来事が起こったの。
宿敵アンナマリーの強引な接触で、ユーリは、同年代の女の子が苦手になってしまった。そして、私は魔力過多症を発症してしまったの。
またしても、ユーリを守ることが出来なかったし、魔力暴走を起こしそうになって、逆にユーリを傷つけてしまった。
それに、私の魔力過多症はユーリのせいでは無いのに、優しいユーリは、ずっと責任を感じているようだった。
私は、ユーリを守るどころか、いつもユーリを傷つけてしまう。
お姉ちゃんなのに、大好きな弟を守れないなんて、お姉ちゃん失格よ。
こんな駄目なお姉ちゃんは嫌いだと言われたら、どうしよう。
それだけは、絶対にイヤ。ユーリに嫌われたくない。嫌われないように、ユーリを守れるように、強いお姉ちゃんにならなくちゃ。
そして、私は魔力過多症の治療と強くなるために、リック兄様から魔法を教わることにしたの。
思ってたよりも魔法は楽しくて、新しい魔法を作ったり、研究することは苦にならなかった。むしろ楽しすぎて寝食を忘れてしまうこともあったの。それで、よくユーリに怒られてたのよね。
宿敵アンナマリーの事があってからは、他家との接触も避けて過ごしていたので、ユーリも私も、その後は安心して幼少期を過ごせたわ。
5歳の頃の小さなお茶会でも、友人が出来て、ユーリもビアトリスと普通に話せたので、家族みんな安心していたの。
それが、間違いだったと思い知らされたのは、私達が7歳の頃。
王宮でセドリック殿下と同年代の子を招待したお茶会が開かれることになったの。
勿論、私たち双子も参加することになったの。ユーリと接触禁止令が出されている宿敵アンナマリーは、当然招待されなかったわ。だから、大丈夫だと思って油断してた。
宿敵アンナマリーは、特別おかしな子だと思ってたの。あんな失礼な子が他にいるわけないと思ってた。でもね、恋する女の子は、何よりも恐ろしいと、この時初めて知ったわ。
見た目が最高に格好いい私の弟は、お茶会に参加した女の子に大人気だった。
まるで獲物を狙う肉食獣のような、ギラギラした目つきで此方を見てくる姿は、私でも少し怖かったわ。
基本的に、私たち双子はどこでも一緒にいるので、お茶会の時も、それで話しかけてくる人は居なかった。遠巻きに隙あらばと見張ってる子は居たけどね。
ユーリと私は、なるべく目立たないように隅っこで二人一緒にお茶を楽しんでいたの。
その時、ユーリが一人の女の子をじっと見つめて動かなくなった。
私もその子に視線を移す。その子は、ピンク色の髪をした可愛らしい女の子だった。
一人で緊張した様子で俯いている女の子が、他の子とは違って見えて、気になった私は、ユーリを引っ張ってその子に声をかけたの。
「あの、ご機嫌よう。私はリリアーベル・ゴルドリッチです。こっちは、双子の弟でユーリアス。こちらの席に一緒にいいですか?」
「は…はい!ど…ど…どうぞ!」
緊張したその子は、顔を真っ赤にして可愛らしい声で答えてくれた。
そこからは、三人でおしゃべりしながら楽しく過ごして、お友達になる約束もできたの。本当に楽しい時間だったな。
その様子を見てた他の女の子が、今なら仲間に入れると思ったのか、ユーリに声をかけてきた。
一気に、楽しい雰囲気が消え去り、ユーリの顔も強張る。
女の子を邪険にすることも出来ず、仕方なく返事をしていたら、勘違いした一人の子がユーリの腕に抱きついてきた。
私もユーリも咄嗟の事で、反応することが出来なかった。
次の瞬間、ユーリの顔色が悪くなり、ガクガク震えだし、呼吸が速くなる。
「ぅ……や…め…気持ち…わる…。」
涙目になり、顔面蒼白で具合が悪そうなユーリに、抱きついた女の子も困惑していた。
「ちょっと、弟から離れて。」
女の子を退かして、ユーリと視線を合わせ安心するよう声をかけ続けた。
「ユーリ大丈夫だよ。ゆっくり息をして。私を見て、ユーリ大丈夫よ。」
「はぁ…はぁ…気持ち…悪い…。リリ…ごめん…ね…。」
ユーリは、そう言うと、そのまま目を閉じて意識を失った。
すぐにお医者様に診てもらったら、急なストレスからくる過呼吸発作の診断だった。
あの宿敵アンナマリーのせいで、ユーリは、酷く心を傷つけられ、過呼吸を起こすくらいアンナマリーの行動がトラウマになっていたの。
私達が考えているよりも、ユーリは深く心に傷を負っていた。
宿敵アンナマリー、本当に許せないわ。
ユーリは、お茶会の日から二日後に目を覚ましたけど、お茶会の事は全く覚えてなかったわ。
折角、可愛いお友達が出来たと思ったのに、結局あの日からあの子との交流は無くなってしまった。
ユーリもあの子とは楽しそうに話していたのに、お茶会での嫌な記憶と一緒に消えてしまったの。
もし、また何処かで会えるなら、また友達になってくれるかしら。
彼女なら…もしかしたら………。
♢♢♢♢♢♢♢
「私の大事な弟に何してるの!」
宿敵アンナマリー、接近禁止令が出てるのに、学園の中だからバレないと思ってるのね。本当にしつこい女だわ。
これ以上、私の大事な可愛い弟に手を出したら許さないわ。
次こそは、絶対にユーリを守る。
大好きで大事な弟を守るのは、お姉ちゃんの大切な役目なんだからね。
宿敵アンナマリー見てなさい。大事な弟を苦しめた貴方を、今度こそ倒してみせるわ。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
次は、いよいよリリと宿敵の対決です。




