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最高に可愛い童顔令嬢は、最強の守護者達に守られている  作者: 文月みい


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新入生歓迎会 ②



 今日は、新入生歓迎会の一日目。


 俺達は、午前中に騎士科を見学して、午後に魔法科を見学予定だ。


「先輩達の魔法が見られるのは楽しみね。何か新しい発見があるといいな。」


「そうだな。リリの研究に役立つ情報があるといいな。」


 昨日は様子がおかしくて気になっていたが、今日は特に変わりはないようだ。いつものリリに安心する。


 魔法が大好きなリリは、午後の魔法科見学が楽しみ過ぎて、魔動車に乗ってからもソワソワ落ち着かない。

 

「リリが魔法科見学を楽しみにしてるなら、今日一日、魔法科だけの見学でもいいよ。俺は、騎士団の訓練にも参加してるから、学園よりも高度な訓練受けてるし、特に授業内容には興味があるわけではないからね。」

 

 俺の提案に、リリが一瞬だけ喜んだ顔を見せたが、すぐに却下された。


「駄目よ。ちゃんと騎士科も見学するのよ。ユーリが興味なくても、私はユーリが何を学ぶのか気になるわ。それに、先輩達の剣技は気になっているのでしょう。だから、予定どおり午前中は騎士科に行きましょう。」


「そう?それじゃあ、騎士科は少し見学して魔法科に行こうか。もしも、飽きたら先にリヒト達と魔法科に行ってもいいからね。」


「それは絶対に駄目!言ったでしょ!新入生歓迎会の間は一人にならないで!」


 突然リリが大きな声で注意する。リリの魔力が体から漏れ、ピリッと電気が走ったように少し体に痺れが起こる。


「あっ!ご…ごめんなさい。魔力制御が乱れちゃった。みんな、痛かったわよね。体は大丈夫?本当に、ごめんなさい。」


「いや、少しピリッとしたけど、平気だよ。リヒト達は平気か?」


 俺は、分かりやすく落ち込んで俯くリリの頭を撫でながら、リヒト達の様子を確かめる。


「このくらい何でもない。リリアーベル平気だから、顔を上げて。」


「我も平気だ。」


「そうよ。私達は大丈夫よ。それよりリリは?何だかいつもより緊張してるわね。」


 屋敷を出る時までは、いつも通りだったのに、やっぱりリリが変だ。

 初めての学園の行事に緊張してるのか?いや、さっきまでは、楽しみにしている様子だった。変わったのは、俺が先に魔法科に行くように言ったから?

 リリは俺が一人になるのが、そんなに不安なのか。


「リリは、俺が離れるのが不安なの?それなら、ちゃんと傍にいるから安心して。今日は、ちゃんと一緒に楽しもう。」


「そうよね。まだ何か起こると決まった訳じゃないし、楽しまないと損だよね。」


 リリが笑顔に戻ったら、タイミングよく学園に着いたところだった。



♢♢♢♢♢♢



「何だか、女性の見学者が多いな。」


 新入生は、自由に何処でも見学することが出来るため、ほぼ男だらけの騎士科も女性の見学は可能だ。

 見学者の女生徒は、みんなお目当ての先輩がいるのか、練習試合の様子をキャーキャー言いながら見ている。


「うるさいな。静かに見学出来ないのか。」


 リヒトが眉間に皺を寄せて、女生徒達を睨んでいる。


「仕方がないよ。騎士科は女性ファンが多いんだ。こんな時にしか見学出来ないから、みんな張り切って応援してるんだよ。」


「そうなんですね。…って、何故セドリック殿下も一緒にいるんです?」


 聞き覚えのある声が聞こえて、そちらを覗く。すると、いつの間にか俺達の横にセドリック殿下が座っていて、会話に加わっていた。

 約束したわけでも無いのに、何故ここにいるんだ。王子と一緒に居るだけで目立って仕方ない。どこか他所に行ってくれないだろうか。


「私も、見学に来たんだけどね。君達を見つけたから、一緒にどうかと思ってね。」


 リリに向かって、セドリック殿下が微笑んだ。質問したのは俺なんだから、俺に向かって答えて欲しい。


「わぁ、嬉しいです。一緒に見学しましょう。」


「ありがとう。リリアーベルなら、そう言ってくれると思ったよ。」


「ちょっと勝手に決めないで下さいよ。殿下は護衛と一緒にあちらの方で見学なさったらいかがですか?」


 俺は、遠くの方を指差し、殿下が離れるようにと念を送る。

 セドリック殿下は、ニコッといつもの胡散臭い笑顔を作って、護衛に少し離れるように指示を出す。


「ユーリアス達と、ゆっくり見学したいから、少し離れてくれ。君達が居ると、彼らも落ち着いて見学できないからね。」


「しかし、それでは殿下の護衛が…」


「少しだけ離れてくれればいいよ。遠くに行けと言ってるわけではない。」


 護衛が言いきる前に、有無を言わさず指示を出す。少し空気がヒヤッとした。殿下の目が笑ってないから、それだけで恐ろしい。

 殿下の様子に気圧されて、護衛達は少し離れたところで待機する。


「これで、何も気にせず見学出来るだろう。ユーリアス一緒に居てもいいよね。」


 ここまでされたら、断ることなんて出来ないだろう。


「そう…ですね。仕方ありません。」


 もう既に、今のやり取りだけでも目立ってしまい、何人かの女生徒がこちらを見て騒いでいる。女生徒の視線が煩わしい。

 

 もう騎士科はいいから、魔法科に行こうかと考えていると、前方から騎士科の先輩に声をかけられた。


「失礼、君はゴルドリッチ侯爵のご子息か?もしよければ、私と手合わせして貰えないだろうか。」


 急な手合わせの申し出に、断りたくて返事をどう返すか悩んでいると、リリが期待した顔で俺をじっと見ていた。

 あの顔を見たら、断るのが心苦しくなる。


「…はぁ、分かりました。少しだけならいいですよ。」


「ありがとう。では、よろしく頼む。」


 そう言うと、先輩は訓練場へ下りていった。


「ユーリ先輩から声が掛かるなんてすごいね。応援してるから頑張ってね。」


「頑張る…よ。」


 相手は、3年の先輩で伯爵家の次男らしい。卒業したら騎士団の入団希望との事で、父の事も知っていた。


 あぁ、手合わせするのはいいけれど、どっちが正解だ。

 騎士として手を抜くことは相手に失礼になる。だからと言って実力を出せば、一瞬で勝負がついてしまう。

 相手は先輩だし、少し打ち合って勝つ?負ける?

 相手に分からないように力を調整して、失礼にならない程度で力を弱めよう。


「よろしく頼む。」


「こちらこそ。お願いします。」


「それでは、始め!」


 声が掛かると同時に、先輩からの一撃が入る。俺は、それを受けて後ろへ飛び退く。

 即座に、相手から攻撃が来るが、全て受け止めながら、守備に徹する。

 流石、3年生と言うべきか。一振一振が重く、パワーがある。だが、これくらいなら騎士団の新人よりも劣る。

 動きが遅く、大振りなので攻撃も丸見え。簡単に攻撃を受け流すことが出来てしまう。

 俺が力を調整して、わざと隙を作っているが、それにも気付いてないようだ。

 守りに徹する俺を見て先輩は勝てると思ったのか、段々と攻撃が雑になってきた。


 (あぁ、これどうしよう。負ける?引き分けにしようか…。うわぁ…どっち?)


 そろそろ終わりたいと思い始めて、ふと見学席のリリを見ると、セドリック殿下がリリの耳元に顔を寄せているのが見えた。

 

 瞬間、全身から殺気が漏れ出る。


「…っ!!」


 それまで攻撃し続けていた先輩が、俺の殺気に反応して、一気に後ろに下がった。

 リリとセドリック殿下の様子に、力の調整をミスって、危うく先輩を力任せに切りつけるところだった。


 それよりも、あの二人何してるんだ。リヒトの奴、リリの隣に居るのに役に立たない。

 

 二人が気になり手合わせどころではない。先輩も、俺の殺気に警戒して攻撃する手を止めた。

 さっさと終らせて早くリリの所に戻りたい。深呼吸して気持ちを落ち着け、力を先程と同様弱めて隙を作る。


「さっきのは、何だったんだ…」


「どうしたんですか先輩?もう終わりですか?はぁ、こんなものか、期待してたのに残念です。」


 俺の言葉に先輩の顔つきが変わった。こっちは、早く終わって可愛い天使の元に帰りたいんだ。勝敗はどちらでもいいから、もう終りにしよう。


――その時だった。


「ユーリ!頑張って!絶対に勝って!負けたら許さないからね!」


 天使の応援で力に満ち溢れた俺は、気がついたら本気で木剣を振り下ろしていた。

 その瞬間、目の前には白目を剥いて、ぶっ倒れている先輩がいた。


「…うわぁ、やっちゃった…」


 しんと静まり返った訓練場に、俺の呟きだけが、こだました。


 


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

 

次は木曜日の夜に投稿予定です。よろしくお願いします。


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