入学式前日は大忙し
俺たち双子は15歳を過ぎ、今年四の月で学園に通う年齢になりました。
ついにこの時が来てしまった。
乙女ゲームか恋愛小説か知らないが、取り合えず何かしらの物語が、ここから始まる…はず。
出来ることなら入学免除にして欲しかった。
正直、俺もリリも既に学園レベルの学習内容は修了しているので、学園に通う意味がない。
ここで問題なのは、学園に通わないと貴族として認められないと言うことだ。この面倒な制度のせいで、俺もリリも意味がなくても学園に通わざるを得ない。
まあ、リリは、ビアトリス嬢と学園でも一緒なので喜んでいるのだが、守る会のメンバーとしては、暫くは油断できない日が続くだろう。
♢♢♢♢♢♢
「ユーリ!ちょっとお願い。一緒に魔法塔まで荷物を運ぶのを手伝って欲しいの。」
「いいけど、明日の入学式の準備は終わったの?」
「もちろん、そっちは大丈夫よ。エナがやってくれてるから。」
「それは、大丈夫じゃないね。エナにばかり任せてないで、先に明日の準備を終えてから、魔法塔に行こう。ほら、リリ。」
「うぅぅ…。わかったわ。エナ、私がやるから足りないところを手伝ってくれる?」
ぷくっと頬を膨らませ、可愛く不機嫌になったのも一瞬で、明日の準備を始めたリリ。
準備と言っても、学園の制服や身に付ける物、学園で使う教科書の確認など、学園生活に必要な物を確認するだけだから、すぐに終わる。
ただ、リリの頭の中は魔法塔のことでいっぱいで、それ以外の事は煩わしいだけ。
幼い頃から変わらず魔法が大好きで、魔法第一主義だ。
「ユーリ!終わったよ。今度こそ大丈夫だから、早く手伝って。急がないと今日が終わっちゃう。」
「プッ、大丈夫だよ。まだお昼前でしょ。魔法塔は逃げないから落ち着いて。」
実は、リリの学園入学に合わせて、学園の隣に魔法塔が建てられた。
そう、まさかの魔法塔を建てちゃったのだ。さすが王家だ。考えることが違う。
国の魔法技術発展の為、と言うのが主な理由だが、リリが学園に通いながら今まで通り研究出来るようにと、セドリック殿下の案で建てちゃったのだ。
しかも、魔法塔の所長はリック兄様で、魔法師団副団長と兼任で勤めている。
リリは何時でも出入り自由で、既に魔法塔の研究者として登録されている。
ちょうど今日から塔が開放されるため、家にある研究資料や本、開発途中の魔道具などを全て運び込む予定になっている。荷物が多い分、学園の準備より大変だ。
「リリは学園の入学式より、魔法塔へ入れることの方が嬉しそうだね。」
「そうね。でも、明日も楽しみだよ。久しぶりにビアトリス様にも会えるし、学園ってどんなところか興味はあるのよ。」
「俺も居るし、ビアトリス嬢やリヒトも居るから、きっと楽しいよ。よし!それじゃあ荷物を運んでしまおうか。」
「やった!早く行こう。」
待ちきれなくて魔動車まで走り出す。魔動車の扉の前で振り返り、煌めく笑顔を俺に向けて手招きするリリは、昔から変わらず可愛らしい天使だ。いや、成長した分、天使の輝きが更に増した。
免疫がない人が直視すると、余りの可愛さに死人が出るレベルで可愛い。
こんなに可愛くて、悪役令嬢なんて務まるのだろうか。
こんなに可愛いリリに、婚約破棄や国外追放を言い渡す者がいるのか。
俺には無理だ。そんな酷いことを天使に向かって宣言するなんて出来るわけがない。
そもそも、リリには婚約者がいないから、悪役令嬢も婚約破棄も無理なんだけどな。
俺は…もしかして、無意識にリリのバットエンドを回避していたのかもな。
攻略対象だと思っていた3人は、結局リリとは友人関係で、一番警戒していたセドリック殿下には別の婚約者がいる。
リヒトも神のようにリリを崇めているだけで、特に進展はない。
まだ油断は出来ないが、他の貴族を確認しても、攻略対象になりそうな貴族令息はいなかった。
リリを守る会メンバーの働きが良い方に作用して、未来を変えたのかもしれない。
作ってよかった守る会。これからも、リリを守れるよう最善を尽くそう。
「ユーリ、何か考え事?もうすぐ塔に着くけど大丈夫?」
「あっ…ごめん。大丈夫だよ。ちょっとこれからの事考えてた。明日から楽しみだなって…」
「フフ、私は今から楽しみだよ。ほら、着いたよ。早く行こう!」
いつの間にか、目的地に到着していて、外にはリック兄様が待っていてくれた。
「可愛い双子達、よく来たね。ここが魔法塔だよ。さぁ、まずは彼らに荷物を運んで貰ってる間に、中を案内しよう。」
塔の中には使用人達もいて、彼らが荷物を運んでくれるようだ。
先に走り出したリリを追いかけて、俺も塔の中へ足を踏み入れた。
結局、その日は塔の案内やリリの研究室の片付けなどで夜までかかってしまった。
明日は、入学式。
まずは、これからの学園生活が楽しいものになるように、気を引き締めていこう。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。




