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最高に可愛い童顔令嬢は、最強の守護者達に守られている  作者: 文月みい


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黒髪の綺麗な男の子 ①



 リリが指差す方へと急いで向かう。横たわる男の子は、ピクリとも動かない。

 ゆっくりと体を動かして仰向けに体勢を変える。


「ユーリ、この子怪我してるみたい。血が出てる。顔色も悪いよ。」


 その子は頭から血を流し、切りつけられた様な傷が体中にあった。服も所々が破れてしまってボロボロだ。こんな酷い傷で、この高い塀を越えて来たのだろうか。きっとここまで来て、限界で倒れてしまったんだな。


 僕は、男の子の胸に耳を当てて、心音を確認する。トクントクンと確かに心臓は動いている。呼吸は弱いが、何とかなりそうだ。


「ルミナ、この子に回復魔法をかけてくれる?」


 僕は、リリの首に巻き付いていたルミナにお願いする。


「いいけど、この子に光魔法の効果なんて有るかしら。一応やってみるけど、あまり期待しないでね。」


 珍しく自信なさげなルミナに、不思議に思うが、回復魔法をかけると、眩しい光が辺りを照らす。力はいつも通りで変わりはない。

 

 男の子の全身が光に包まれる―――。


「……ルミナ大丈夫?いつもより時間がかかってる気がするんだけど、体は平気?」


 いつもなら、一瞬で治せるはずなのに、なかなか傷が塞がらない。ただ、出血は治まった様に見える。


「……ハァァ、もう…無理!ちょっと休憩させて。ガッツリ魔力を持っていかれたわ。リリ悪いけど、少しだけ魔力を補充させて。はぁ、死ぬかと思った。」


 出血は止まったけど、傷はまだ残っている。ルミナの回復魔法を使って治せないなんて、一体どういうことだ。


「ユーリアス様!リリアーベル様!無事ですか?」


 ゴルドリッチ家の護衛が数人、慌てて此方に走って来るのが見えた。

 

「はぁ、よかった。ルミナ様の光魔法の反応があったので、何かあったのかと。二人ともお怪我はないですか?」


「僕たちは大丈夫だよ。心配かけてごめんね。ルミナの魔法も僕たちに使った訳じゃないんだよ。」


 僕の言葉に無事を確認して、安心した護衛の一人が、横たわる男の子に気づいて、一瞬で警戒モードに気配が変わった。


「待って!この子は怪我してるの。乱暴は止めて!私達は、この子を助けてあげたいの!だから、お願い屋敷に運ぶの手伝ってちょうだい。」


 リリの言葉に戸惑う護衛達だが、相手が怪我した子供で意識が無いため、今のところ害は無いと判断して、一旦警戒を解いてくれた。


「分かりました。この子は私が運びますので、お二人は離れて護衛の後ろから付いてきて下さい。」


 万が一、意識が戻って攻撃してきたらと判断しての事か。僕達の身を案じての事だし、ここは護衛に従おう。


「リリ、彼の言葉に従って行こうか。あの子が本当に悪い人じゃないって保障はないからね。」


「うん。わかったわ。早く怪我の手当てをしてあげなくちゃ、急いで屋敷に戻りましょう。」


 護衛達に手伝ってもらって僕とリリは急いで屋敷に戻った。

 お母様に事情を説明して、客室を一つ使わせてもらった。

 お母様は、怪我した男の子を見て、とても驚いて少しだけ動揺していたが、直ぐにセバスに指示を出して医者を呼んでくれた。


 他にも何かセバスに指示を出していたが、お母様の声が小さくて何を言っていたのか聞こえなかった。


「リリ、お医者様も命に別状は無いと言っていたから大丈夫だよ。ルミナの回復魔法のお陰で、止血出来たことが大きかったね。」


「本当によかったわ。この子私たちと同じくらいでしょ。こんなに酷い怪我をして、きっと大変な目にあったのね。辛かったわよね。早く良くなってね。」


 リリは、話しながら悲しそうな顔を見せたが、早く良くなるようにと願いを込めて、優しく頭を撫でてあげる。

 ずっと眉間に皺を寄せて、苦しそうだった男の子の表情が緩んだ気がした。


 そして、その日の夜にお父様が帰ってきた。慌てた様子で帰ってきて、お母様から事情を聞くと、何故かあの男の子が休んでいる客間へと急いだ。


「ユーリ、私たちも一緒に行ってみよう。」


「そうだね。僕も気になるから行ってみよう」


 僕たちは、お父様の後について、客間へと入った。


「ああ、ご無事でよかった。傷はあるが命に別状は無いんだな?」


 お父様が、男の子の無事に安堵した表情を見せる。

 久しぶりに帰宅したお父様は少し疲れが見えた。


「ええ、大丈夫よ。双子ちゃん達が見つけて、すぐにルミナが回復魔法をかけたの。やっぱり光魔法に抵抗があったみたいで、止血は出来たのだけど、傷を治すことは出来なかったみたい。完治までには時間がかかるかもしれないけれど、そのうち目を覚ますと思うわ。」


 お母様の言葉を聞いて、お父様は力が抜けたようで、その場でフラフラと倒れそうになり、お母様に支えられる。


「お父様大丈夫!具合が悪いの?椅子に…ここに座って下さい。」


 リリが直ぐに椅子を引っ張って来て、お父様がそれに腰かける。


「ハハ…すまないね。少し安心して力が抜けただけだよ。二人とも今日は彼を救ってくれてありがとう。君たちのお陰で、色んなことが解決出来て救われた。本当にありがとう。」


 これまでの不安や心配が一気に解決できた様で、お父様は心の底からの安堵の表情を見せた。


「テオ、少しだけ休んだ方がいいわ。今日は此方で過ごせるのでしょう?」


「そうだね。明日戻って現状の報告をする予定だ。今日は久しぶりに此方に居られる。」


 お父様は、ゆっくりと立ち上がり、僕たち家族の顔を見て嬉しそうに笑った。


「それならお父様、先に夕食を召し上がりますか?美味しい食事で元気になりますよ。」


 僕の言葉に、お父様が喜んで答える。


「我が家の料理は最高だからな。先に食事にしようか。みんなもまだなら、一緒に夕食にしようか。」


 僕たちは、まだ目覚めない彼に挨拶をして、部屋を出た。

 

 今日は久しぶりに家族で過ごし、お父様が居なかった間の出来事を、たくさん話すことができた。やっぱり家族みんなが揃うって幸せだ。お母様も今日は特別に嬉しそうだ。


 お父様が居ない間、屋敷を守る為にお母様も必死で頑張っていた。きっとお父様の事が心配で不安もあったろうに、微塵もそんな事は見せずに気丈に振る舞っていた。


 でも、僕は知っている。お父様が居ない間、お母様が寂しそうに王宮の方を見つめていたこと。

 そして今日、お父様が帰ってきた姿を見て、ほっとして瞳に涙を溜めて見つめていたこと。

 両親仲良しで、いつも一緒に居るのが当たり前なんだ。これからも、ずっと一緒に居て欲しい。だから、お父様がいつものように帰って来られるよう、早く通常の状態に戻って欲しい。

 

 神様、どうかこれ以上、この国に悪いことが起こりませんように。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


明日は大体21時以降の投稿予定です。よろしくお願いします。

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