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満月と炎の花 ②



「ああ、そうだ、ドラゴンだよ。」


 信じられない言葉に、呆然と固まってしまう。


(今、ドラゴンって聞こえた?)


 ドラゴンって、あの伝説上の生き物で、世界最強と言われるドラゴンのことかな。


 精霊王様の言うドラゴンは、俺が知ってるドラゴンと同一の生物だろうか。


「あの、ドラネコとかじゃないですよね?」


 違うとは分かっているけど、念のため、聞き間違いって事もあるし、精霊王様に聞いてみる。


「ネコ?そんなわけない。ドラゴンって言ったろう。詳しく言うなら、ファイアードラゴンだな。」


 間違いなくドラゴンだった。しかも、火属性のドラゴンだ。かなり燃えそうだな。


「番人って言っても、そこにいるだけだから、大丈夫。そんなに心配しなくて良い。」


 精霊王様が、笑顔でそう言うが、信用して良いのだろうか。


 番人って言われてるのに、そこにいるだけって有り得るのか?普通、番人はその場所を守っているんじゃないのかな。

 

「精霊王様、番人ってことは、花を守る役目があるんじゃないの?本当に平気ですか?」


 リリが、不安そうな顔で精霊王様に確認する。流石、リリだな。一番重要な質問だ。情報が間違っていたら、大惨事になる。

 

 精霊と人の危険度の認識がズレてないか、今すぐに詳細を確認する必要がある。


「リリアーベルが言うように、花を守る役目があるな。でも、まぁ、大丈夫じゃないか。数日前に会った時に、お前達が花を取りに行くことは伝えてあるから、死ぬほどの攻撃は、してこないだろう。」


 それは、死なない程度の、それなりの攻撃は有るってことではないのか。


「精霊王様、それだと攻撃はしてくるって事になりますが、本気ですか?」


 俺が、真面目な顔で問いかければ、精霊王様も、真面目な表情で不穏な答えをくれる。


「なるべく穏便にって話してあるけど、若いドラゴンで、真面目で融通が利かないのだよ。それに、ファイアードラゴンは血気盛んな奴が多くて、私が言ったことを覚えてるかどうか、覚えていても聞いてくれるかどうか分からない。でも、きっと大丈夫だよ。」


 今の言葉の何処に、大丈夫な要素があるのだろうか。

 セドリック殿下も、リヒトも考え込んで、二人とも難しい顔をしている。


 リリも不安そうで、可愛い笑顔が消えた。


「精霊王様のせいで、みんなが不安になってしまったわよ。この空気、どうするのよ。」


 ルミナが呆れて、精霊王様を睨んでいる。それでも精霊王様は、ルミナの言葉を聞いても動じない。


「でもね、番人は番人で変えることは出来ないし、攻撃はするかもしれないけど、お遊び程度だと思うよ。私の愛し子が、花を必要だって事は伝えてあるから、きっと採取はさせてくれるよ。」


 精霊王様の言葉に、リリが急に立ち上がる。


「そうよね。採取をすることは変わらないし、ドラゴンさんも変更が出来ないなら、対応するしかないわよね。私は、それでも魔法を取り戻すために行くわ。」


 さっきまでの不安な表情は消えて、力強い笑顔を見せるリリ。


「これは私の事だから、他の人は必ず参加でなくてもいいと思うの。危険なので、セドリック殿下は参加を考えた方が良くないかしら。水属性の魔法は、明日までに他の方法を考えて…。」


「私は参加するよ。」


 リリの言葉を遮り、セドリック殿下が参加の意思を示す。


「だけど、こんな危険なことに殿下を巻き込むのは、やっぱり駄目だと思うのです。」


 リリの言う通りだ。王族を巻き込んで、何かあれば、それこそ大変なことになる。

 水属性の魔法を使える殿下が、参加出来ないのはキツいけど、まだ少し時間はあるから、何か策を考えれば良いことだ。


「リリアーベルが心配してくれるのは嬉しいけど、私は大丈夫だよ。明日は私も参加する。私とユーリアスが居ないと、採取が出来ないだろう。」


 それでも、セドリック殿下は意見を曲げずに、参加の意思を伝える。


「本当に良いのですか?」


「勿論だよ。私にも、君の魔法を取り戻す手助けをさせて欲しい。リリアーベル、きっと大丈夫だよ。ここにいる全員、行かない選択をする人は居ないようだからね。必ず魔法を取り戻そう。」


 リリがみんなを見回すが、誰一人として不参加を伝える者は居なかった。


「みなさん、ありがとうございます。明日は、よろしくお願いします。」


 リリが、キラキラの可愛い笑顔で、頭を下げる。


「そうと決まれば、ドラゴン対策と採取の計画を立てよう。みんな協力してくれ。」


 俺の言葉に、みんなが頷き、リリも頭を上げて、やる気が漲る表情を見せる。

 

「これで、何の問題も無くなったね。それじゃあ、明日の夕方また来るね。」


 精霊王様がそう言って、今度こそ本当に帰って行った。


 不安がないといえば嘘になるけど、それでも、リリの言う通りやるしかない。


 上手くいくように、少しでも話の分かるドラゴンであることを願おう。

 



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