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永遠に愛する大切な人 



【リリアーベル視点】


 ビッガートル家の庭園を一人で散策。


 綺麗なお花を見ていると、心が穏やかになり、とても気持ちが落ち着くの。


 昨日は、あの子に酷いことを言って泣かせてしまったから、少しだけ胸が痛む。

 

 でも、セドリック殿下は、ビアトリスの婚約者でしょう。それなのに、ビアトリスに内緒で、あの子が視察に同行している事に、何だか胸がモヤモヤしたの。


「はぁ…。」


 つい、溜め息が溢れる。


「リリアーベル、一人とは珍しいな。どうしたんだ?」


 突然、後方から話しかけられて、驚いて振り返ると、そこには笑顔の精霊王様が立っていた。

 一旦、精霊国に帰ったはずなのに、どうして、ここにいるのかしら。


「こんにちは、精霊王様。私だって、一人になりたい時もあるのよ。精霊王様は、どうしてここに?精霊国に帰ったと思っていました。」


 驚いて尋ねる私に、綺麗な笑顔を見せながら私の隣に立つと、屈んで視線を合わせる。


「一度は帰ったのだが、私の愛し子が何やら悩んでいる様なので、戻ってきたんだよ。」


 視線を合わせたまま、私の頭を優しく撫でる精霊王様に、私は更に驚いた。

 私が、悩んでいることを知っているなんて、やっぱり精霊王様くらいになると、何でもお見通しなのね。

 そして、わざわざ私の為に戻ってきてくれるなんて、優しい方だわ。


「リリアーベルが悩んでいると、皆が心配して大変だからな。特に、ユーリアスが心配して屋敷中を歩き回っているぞ。一人になりたいと庭に出てきたのだろう。」


 そうなの。付いて来ようとするユーリに、一人になりたいと言って、無理やり出てきたのよね。心配するとは思っていたけど、屋敷中を歩き回る程だなんて、後で心配をかけた事を謝らないといけないわね。


「可愛いリリアーベル。あそこで一緒に休憩しようか。」


 精霊王様が指差す方に、ガゼボが見える。頷く私に精霊王が、手を差し出した。


(これは、エスコートしてくれると言うことかしら?)


 私は、精霊王様の手に自分の手を重ねる。すると、精霊王様が優しくエスコートしてくれる。


 ガゼボに着くと、二人並んで座る。涼しい風が通り抜け、とても心地がいいわ。


「それで?私の愛し子は何を悩んでいるんだい?」


 精霊王様が、私を見て優しく問いかけてくれる。


 私自身、何がこんなに心をザワつかせるのか分からない。

 でも、昨日の事を思い出すと、胸がモヤモヤでいっぱいになって、嫌な気持ちになってしまうの。

 

 それで昨日は、ユーリにずっとくっついてみたり、デザートのフルーツタルトをいつもより多く食べてみたり、ベルを沢山モフモフしてみたけど、心は落ち着かなかった。


「そうですね。実は私も分からないのです。でも、親友の婚約者のセドリック殿下が、あの子を視察に同行させて、楽しそうに湖で過ごしているのを見て、心がずっと落ち着かないのです。」


 私の言葉に、精霊王様が少し考える。


「リリアーベルは、あの王子が親友を裏切って不貞をしていると思っているのか?それが嫌なのか。だが、あやつらを見ていても、絶対にそんなことはないと思うが…。」


「えっ、セドリック殿下に限って不貞は無いと思います。殿下は、ビアトリスに対して、とても優しくて、仲も良い婚約者同士なんですよ。」


 私は、直ぐにセドリック殿下の不貞疑惑を否定する。セドリック殿下は、誠実で優しい人で、ビアトリスを裏切るなんて有り得ないわ。


「なんだ、そうなのか?それじゃあ、単純に信じていた人の有り得ない行動が、ショックだったのか。リリアーベルは、王子が婚約者を大切にしていると思っていたのに、他の女性と仲良くしているのが許せなかったんだな。」


 そう…なのかな。セドリック殿下が、あの子と楽しそうにしているのを見て、モヤモヤしていたのは、ショックだったの?


「よく、分からないけど、そうなのかもしれません。婚約者がいるのに、いくら視察でも未婚の女性を同行させるのは、何だかモヤモヤします。」


 もしも、私がビアトリスの立場なら、絶対に嫌だと思ってしまうわ。


「ヤキモチかと思ったが、そうでもないのか。不憫だなあの王子。あいつらは、本当にただの視察だろう。リリアーベルには、どう見えたか分からないが、王子含め他の二人も面倒そうに見えたぞ。仲良く湖を楽しんでるようには見えなかった。」


 精霊王様には、そう見えるのね。あの子が楽しそうだったから、セドリック殿下も一緒に楽しんでいるのだと思っていたわ。


「仕事だと割り切っているから、一緒に同行しているのではないか?誠実な王子なら、これがプライベートなら、一緒に出掛けていないのでは無いか?」


 精霊王様の言葉に、ハッとする。


「確かにそうですね。仕事だから効率重視で、あの子を同行させているのかもしれません。さすが、精霊王様です。何だか気持ちがスッキリしました。ありがとうございます。」


 精霊王様の言う通りだわ。仕事だから一緒にいるのよ。プライベートなら、ビアトリス以外の女性と、泊まりがけの外出なんて有り得ないわ。

 

(そうよね。ああ、モヤモヤが消えていくわ。)


 スッキリした気持ちで横を向くと、精霊王様が、優しい笑顔で私を見つめている。


「リリアーベル、君は好きな人はいないのか?」


 突然の予想外の質問に驚いてしまう。


「………そんな人は、いませんよ。」


 戸惑ってしまって、返事が遅れてしまったわ。精霊王様がニコニコしていて、何だか気まずい。


「そうなんだね。リリアーベル、もしも、好きな人が出来たら、迷わず気持ちを伝えるんだよ。私はね、君には後悔しない恋愛をして欲しいんだ。」


 精霊王様が、私を見つめながらも、心は誰かを求めるように、愛おしそうな顔を向ける。


 『君には後悔しない恋愛』だなんて、まるで、精霊王様は、恋愛で後悔したことがあるような言い方ね。


「精霊王様も、誰か愛する人がいるのですか?後悔したことも?」


「いるよ。永遠に愛する大切な女性がいる。好きだと伝えるのが遅すぎて、私の傍から離れてしまったが、私の唯一の人だよ。」


 堂々として、力強く言いきる精霊王様の姿が、とても美しい。

 こんな風に、大切に愛される女性は、きっと幸せになれるわね。

 精霊王様の、揺るぎ無い愛の言葉に、少しだけ羨ましく思える。

 

「こんなに心から愛されると、きっと幸せでしょうね。」


 私が素直な気持ちを伝えると、精霊王様が小さく笑って、嬉しそうな顔を見せる。


「そう思うかい?私は、臆病なんだよ。だから、愛してると伝えた時には、彼女は私から離れる選択をした後だった。それでも、私と過ごしていた時の彼女は、幸せだっただろうか。」


「もちろん、幸せですよ。」


 私の言葉に、一瞬驚いた顔を見せるが、直ぐに嬉しそうに笑ってくれる。


「ありがとう、リリアーベル。君も、早く愛する人に気づけたらいいね。」


 私にも、いつか愛する人ができて、私を愛してくれる人が現れるのかしら。


(もしも、そうなら……。)


「もしかして、今、誰かを思い浮かべたかい?」


「浮かべてません。」


 精霊王様の言葉を慌てて否定する。


「だけど、リリアーベル。顔が真っ赤だよ。」


 精霊王様の言葉に、更に顔に熱が集まり、耳まで熱くなるのが分かる。もう、凄く恥ずかしいわ。


「この話は終わりです。精霊王様のお陰でモヤモヤも無くなったので、私は、戻ります。」


 精霊王様を残して、屋敷に小走りで向かう。失礼だったかしらと後で気付いたけれど、仕方ないわよね。


 屋敷に入ると、心配で屋敷中を歩き回っていたユーリと会えた。


 心配そうな顔で近寄ってくるユーリに、思い切り抱きしめられる。

 相当、心配かけたようで、申し訳なく思った私は、その後ずっとユーリと一緒に過ごしたの。

 大好きなユーリとの時間は、やっぱり心地よくて、優しい弟と一緒にいると安心するわ。



 それから数日後、心も落ち着いて、悩みも解消できた私は、自分の体を治すため、花の採取に向かう。


 私の為に、みんなが協力してくれるから、絶対に大丈夫よ。必ず、私は魔法を取り戻してみせるわ。


 




いつも読んでいただき、ありがとうございます。


次も読んでくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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