↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
125/156

いろんな意味で、勝負のピクニック ②



「みんな、そろそろお昼時間なので、魚釣りは終わりにして、昼食にしますよ。」


 リリの可愛い呼びかけに、みんなが釣りを止めて、自分のバケツを覗き込む。


「今年は、誰が優勝かしら。リリ姉様は誰だと思う?私は、最初に釣ってたユーリ兄様だと思うわ。」


「誰だろうね。今年は、誰が優勝でもおかしくないくらい、みんな沢山釣っていたわね。」


 チェリーちゃんとリリの可愛い二人が、楽しそうにしながら、俺たちのバケツを覗いている。


「うわぁ、みんな沢山釣ったのね。えーと、ユーリとリヒトは4匹に、凄いわ!タイガ君が5匹に、精霊王様が7匹!うわぁ、凄いですね。釣り名人よ。」


 リリの驚く様子に、精霊王様がドヤ顔で胸を張る。


「リリアーベル、もっと褒めてもいいぞ。ほら、私は格好いいだろう。釣りも得意なんだよ。他にもリリアーベルが望むなら、何でも叶えてあげるよ。」


 精霊王様の態度と言葉に、リリが可愛らしく笑う。そのまま、天使の笑顔で、精霊王様の前に立ち賛辞を贈る。


「精霊王様、優勝おめでとうございます。釣り名人の格好いい精霊王様に、私とチェリーちゃんから、優勝の花冠を贈ります。」


 背の低いリリが、精一杯の背伸びをして、精霊王様に向かって、花冠を差し出す。

 一生懸命、つま先立ちで立っているのに、全く頭に届かない。

 

 まるで、子リスだ。可愛い子リスが、高い枝にある木の実を取るため、足をフルフルさせて頑張っている姿だ。何これ、めちゃくちゃ可愛すぎる。

 

 そんなリリを見て、精霊王様が口元を押さえて、何かに堪えている。


 分かる。精霊王の気持ちがよく分かるよ。リリの可愛さを間近で見ると、そうなるよな。


「あ…あの、精霊王様。も…申し訳…ないのですが、少しだけ、屈んで頂けると…助かります。」


 リリが足だけでなく、両手もフルフル震えさせて、そろそろ限界みたいだ。

 精霊王様が、慌てて屈んで頭を軽く下げる。


「優勝おめでとうございます。精霊王様。」


 リリとチェリーちゃんの手作り花冠が、無事に頭に乗せられた。


「ありがとう、リリアーベルにチェリルーダ。これは、永遠に大事にするよ。」


 精霊王様が、嬉しそうに微笑んで二人を抱きしめる。 

 花冠なので、普通なら枯れてしまうだろうが、精霊王様なら、永遠にそのままの形で保管できそうだ。

 

 それにしても、イケメンは何をしてもイケメンだな。頭に乗せた花冠が似合いすぎて、本物の王冠に見えてくるよ。


「それじゃあ、みんな頑張ったから、お腹空いたでしょう。お昼にしましょう。ほら、ユーリも行くわよ。」


 リリが俺の手を引っ張って、昼食の用意された木陰に案内する。


「俺もお腹空いたけど、リリの方が待ちきれないって感じだな。」


 優勝を逃して、リリの花冠を貰えなかったのは残念だけど、可愛いリリの姿に、心が満たされる。


「だって、すごく美味しそうだったの。デザートもあるのよ。私の大好きな…」


「「フルーツタルト!」」


 リリに合わせて声を上げると、二人の言葉がピッタリ重なった。


「ハハハ、やっぱりリリは、フルーツタルトだよね。食べ過ぎちゃ駄目だよ。」


「みんなの分も沢山あるから、ちょっとだけなら、多めに食べても許してくれる?」


 リリの可愛いおねだりに、気分を良くした俺に、無情にもルミナから現実を突きつけられる。


「ユーリ、貴方気づいてて無視してるの?それとも、リリしか見てないから、アレが見えてないだけなの?どっち?」


 リリの首に巻き付いたルミナが、不機嫌に尻尾で湖の奥を指し示す。


 そんなの、気づいてて無視してたに決まってる。釣りをしている時から気づいていた。


「えっ?なに?何かあるの?」


 リリが、尻尾の指す方へ視線を向けるのを阻止して、直ぐにみんなの所へ連れていく。


「リリが、気にすることは何もないよ。見なくていいから、早く食べよう。お腹空いただろう。」


 木陰に用意された美味しそうな昼食を前に、リリの興味が美味しそうなサンドイッチに向かう。


「ルミナ、ちょっと来てくれる?」


 俺は、リリの首からルミナを連れだし、少し離れた場所へと移動する。


「ルミナ、結界は問題なく張れてる?」


「勿論よ。だから、ほら、近づいてこないでしょう。不思議よね。ガーデンパーティーでは、問題なく入れたのに、今日は結界に弾かれて近づけないわ。何なのかしらあの子。」


 セドリック殿下といつものメンバーが居ると聞いて、念のためにルミナに俺たちの周囲に結界に張ってもらった。

 

 楽しいピクニックを邪魔されたくないのもあるが、リリの害になりそうな人は近づけたく無かった。


「結界内に入れないと言うことは、そういうことだよな。」


 悪意があれば入れない結界。そこに、入れないと言うことは、彼女はリリを害そうとしている証拠だ。


「他の三人は?まさか、彼らも入れないとかは無いよな。」


「どうかしら?彼らは入れないというか、あの子を抑えるのに必死みたいね。こちらには、精霊王様がいるから、怒らせると大変だと思ってるんじゃない。」


 確かに、愛し子のリリを害することがあれば、この国は終わりだ。

 国のために、必死に彼女の機嫌取りをしてるんだろう。


「ねえ、ユーリ他人事のように見てるけど、少しマズいわよ。」


 幼馴染み三人を憐れんでいると、ルミナが例の彼らを指して、不穏な事を言う。


「マズいって?嫌なことを言わないでくれよ。」


 この流れは、いつもの嫌な予感に辿り着きそう。何とか、いい流れに変化して欲しい。


「あの子が結界を壊そうとしてるわ。ユーリの名前を連呼してるから、リリも気づいてしまうかも。あっ、精霊王様が気づいて、物凄い顔をしているわ。ああ、チェリーとタイガが怯えて可哀想だわ。」


 彼らの方を見てみると、見えない壁を叩きながら、俺の名前を呼ぶ彼女が見える。

 そして、それを必死に宥める三人の幼馴染み。


 楽しいピクニック中のビッガートル側は、昼食を楽しむリリをリヒトが上手く隠している。そして、眉間に深い皺を寄せ、遠くの彼らを睨み付けている精霊王様。それに、怯える可哀相な従姉弟がいる。


「これは、俺が行かないと駄目なヤツ?」


「ユーリが行かないと駄目なヤツね。」


 折角、リリとの楽しいピクニックなのに、何故、俺がヒロインの相手をしないといけないんだ。

 あっちには、攻略対象者が三人もいるんだぞ。それで十分だろう。


「あっ、早くしないと精霊王様が限界よ。」


「はぁぁ、分かったよ。ルミナも一緒に来てくれよ。何かあったら俺を守って。」


 リリに気づかれる前に走って、彼らのところへ向かう。

 走ってきた俺の姿に、勘違いした彼女の嬉しそうな顔が見える。


(回れ右して天使の元に帰りたい。)


 何度も足が逆に向きそうになるのを、必死に我慢して、彼らの所へ辿り着いた。


「ああ、ユーリアス様、やっと会えたわ。こちらに居らしてると聞いて会いたかったの。私を見つけて急いで来てくれたのですね。嬉しいです。」


 俺は、会いたくなかったけどな。既に、有り得ない勘違いをしているので、無表情のまま言葉を交わす。


「別に、アンジュ嬢に会いに来たわけではないですよ。勘違いしないで下さいね。セドリック殿下にオリヴァーとエリオットも、少しマズいことになってるから、ここから離れてくれませんか。」


 後ろの方から、ひしひしと怒りのオーラが伝わってくる。精霊王様が、かなりご立腹だ。


「やあ、ユーリアス、折角のピクニックを邪魔して悪いね。私たちは、このまま帰ることにするよ。それで一つ確認なんだけど、もしかして、ここにルミナの例のものが用意されている?」


 セドリック殿下も、ルミナの結界の事は知っている。俺はすぐに頷いた。


「やはりそうか。彼女は今回は入れないんだね。」


「そうですね。まさかとは思いますが、三人は大丈夫ですよね?」


 念の為、確認しておく。幼馴染みの中に裏切者がいるとは思えないが、結界がちゃんと作動してるのかの確認にもなる。


「私たちは入れるよ。オリヴァー、エリオット見せて上げて。」


 セドリック殿下の呼びかけに二人が俺の側まで移動する。セドリック殿下は彼女の側に居るが、体を半分だけ結界内に入れる。

 拒絶反応は無く、結界が反応してるのは、アンジュ嬢だけだった。 


「えっ?どうして二人はユーリアス様に近づけるの?私は、これ以上進めないのに、どうして。」


 アンジュ嬢が、見えない壁を叩いたり、俺に向かって手を伸ばそうと躍起になっている。


「コルトブル男爵令嬢、もう諦めて帰りましょう。ユーリアスにも会えたから満足ですよね。」


 エリオットが、若干投げ遣りに言いながら、結界から出る。

 真面目なエリオットにしては、雑な対応だ。珍しい。


「ユーリアス迷惑掛けたな。ここは良いから、お前はもう戻れ。」


 オリヴァーが、俺の肩に手を乗せて軽く後ろに押し返す。


「駄目よ!オリヴァー様、勝手なことを言わないで。ユーリアス様は、私とお昼を食べるのよ。ねえ、ユーリアス様、こちらへ来てください。」


 自分が結界内に入れないので、俺が出ろと言うことか。

 本当に、どうしてヒロインというものは、攻略対象者を自分の傍に置きたがるんだよ。


 純粋なヒロインは、攻略対象者一人一人と交流するものじゃないのか。それとも、逆ハー狙いか。

 

 どっちにしても、俺にとっては迷惑だ。


「はぁ、帰りたい。ルミナどうにか出来ないか?」


 目の前で、オリヴァーと言い合いを始めたヒロインを見ながら、溜め息しか出ない。


「そうね。どうにも出来ないわね。何か、きっかけがあれば、現状が動くかもしれないわよ。」


 ルミナの言葉に、何か引っ掛かる。


「きっかけ…?」


 ヒロインと攻略対象者が揃えば、次に出てくる登場人物は…?


 この流れは、今日イチ悪い状況では?



ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 次回も読んでもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。