いろんな意味で、勝負のピクニック ①
キラキラと陽の光を反射した水面に、釣糸を垂らし、男たちが真剣勝負の時を迎えた。
「みんな、勝負は始まってるよ。負けないように頑張ってね。私とチェリーちゃんは、優勝者への褒美を作ってきます。お昼になったら終了ね。」
リリが、みんなに声をかけると、チェリーちゃんの待つ木陰へと移動する。
(体調は、問題なさそうだな。)
今朝から楽しいの連続なので、リリの魔力が溢れないか心配だったが、問題ないようだ。
今も楽しそうに、チェリーちゃんと花を摘んでいる。リリの笑顔が相変わらず眩しい。
なんて、可愛いんだろう。
リリの周りだけ別世界。まるで、花の妖精だ。リリは天使だと思っていたが、妖精でもあったのか。《注:リリの可愛さにユーリの思考がバグり中。》
あそこだけ、実は異世界に繋がっていて、可愛いの世界だってことはないか。
可愛いしか存在しない、可愛いだけの世界。有りとあらゆる可愛いが集まった世界だ。その中でも、超絶に可愛い、可愛いの頂点に君臨するリリが、全ての可愛いを統べる女王だ。
リリの可愛さの秘密は、天使で、妖精で、可愛い世界の女王ってことだな。
「おい!ユーリアス!引いてるぞ!」
リヒトの大声で、我に返ると、釣糸が引っ張られる。
「……うわっ!ちょっと待って。逃げるなよ。」
可愛いリリを見つめていたら、魚が釣れた。まずは一匹。幸先いいな。
それからも、釣りを続けていると、みんな一匹、二匹と釣れていく。
今年は、誰が勝ってもおかしくないくらい接戦だ。
しばらくは、誰かが魚を釣り上げて、歓声が上がり、男性陣も楽しい時が過ぎていく。
こういう男だけの賑やかな時間も、案外楽しいものだ。
少しすると、魚の引きが落ち着いてきた。そうすると、穏やかな時間が流れる。
ふと、リリの方を見ると、出来上がった花冠を、チェリーちゃんと交換して頭に乗せている。うん、可愛い。
「ユーリアスは、本当にリリアーベルが好きだな。」
精霊王様が、優しい笑顔で当たり前の事を言ってくる。
「当然です。リリは可愛くて大事な俺の姉ですから、大好きに決まってます。」
精霊王様が、大きな声で笑った。
「アハハハ、そうだな。リリアーベルは、可愛いな。私にとっても、可愛くて大事な愛し子だ。そんな可愛いリリアーベルが、小さな体で耐えるには、あの魔力は大きすぎるな。」
急に真剣な声音に変わり、リリを見つめる精霊王様の表情は、俺からは見えない。
でも、リリの事を心配してる気持ちは伝わってくる。
「ここに来るまで、リリアーベルと手を繋いでいたが、湖が見えた瞬間の魔力の跳ね上がり方は凄かったな。魔力器官が働かないと言うのは、リリアーベルに取っては、本当に酷なことだな。」
精霊王様がリリと手を繋ぐと言った時は、面白くなかったが、結果は正解だったようだ。
「俺が必ず、リリの体を治します。リリがちゃんと安心して過ごせるように、以前の生活を送れるように必ず…。そして、大好きな魔法を取り戻してみせます。」
精霊王様が、俺の決意を聞いて、リリから視線を俺に移す。その瞳は、何かを探るように、じっと俺を凝視する。
「ユーリアスは、ずっとリリアーベルを守り続けるのか?もし、リリアーベルに好いた奴が現れたら、どうする?ユーリアスにも他に守りたい人が現れたら?お前たちは仲の良い姉弟だが、ずっと一緒には居られないだろう。」
リリに好きな人が出来る?
その事を考えなかった事はない。実際、リック兄様が、リリの平民発言を無かったことにしたあの日から、リリの態度が変わった。
今まで異性として意識してなかった友人たちを、明らかに男性として接するようになった。友人の距離から、異性としての距離感へ。その中に、恋心が混じっているかは、分からない。気づきたくないという思いもあるが、その時が来たら、心の準備は出来ている。
「俺が、リリの他に守りたい人が現れるのは、当分無いと思いますが、そうですね。リリに好きな人が出来たら、リリの隣に立てるだけの実力が無いと認められないので、俺に勝つまでリリは渡せません。」
精霊王様が、驚いた顔で俺を見て、また大きな声で笑った。
「アハハハ、そうか。ユーリアスに勝てる男か。どんな奴か私も見てみたいな。それで?既に候補はいるのか?」
「それは、リリが決めることなので内緒です。」
「アハハハ、それもそうだな。」
リリを大切に思い、リリを守りたいと思う人はたくさんいる。
その中で、リリの近くで守れる栄誉を、まだ俺が独占したい。弟の特権をまだ奪われたくない。
リリの幸せは、未来は、俺が守ると誓った幼いあの日から、リリはずっと可愛い、俺の大切な姉なのだから。
ここまで、読んでいただき、ありがとうございます。
折角のユーリの決意を、そのまま綺麗に終わらせたかったので、例の方たちの出番は次回へ。
結局は、ユーリの苦労が次回へ延期されただけですが、頑張れユーリ。




