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ピクニックに行きましょう 



 今日は晴天、ピクニック日和。


 夏の暑い日差しの中、ちょうど良い涼しい風が、頬を撫でる。


「晴れて良かったね。今年は、精霊王様も一緒で、楽しくなりそう。ねえ、ユーリ。」


「そう…だねぇ…。ハハハ。」


 リリは、今日のために約束を守り、昨日1日大人しくしていた。そのお陰で、魔力は安定し、魔道具とリヒトが魔力を吸収するだけで、体調も問題なかった。


 今日は、朝から楽しみすぎて魔力が暴走しないように、魔道具を多めに身に付け、リヒトやお祖父様にも魔力を吸収してもらう。

 多少、漏れ出る魔力は多くなっていたが、体調は良好だ。


 そして、もちろん可愛さも良好。


 水色のワンピースに、帽子を被り、飛ばされないように結んでいるリボン姿が、お人形のように可愛らしい。


 今日も可愛すぎて、リリを見た瞬間、天から舞い降りた天使と見間違えたくらいだ。

 いや、それはいつもの事だった。リリは常に天使だから、見間違いではなく真実だ。


「私と一緒で楽しいとは、嬉しいことを言ってくれるね。私も、君達とのピクニックを楽しみにしていたよ。」


 精霊王様が、リリと手を繋いで歩きながら、嬉しそうに話している。


 ピクニック予定の湖までは、魔動車では行けない。近くまで魔動車で行き、そこからは歩いて湖まで向かう。


「私もですけど、ユーリもリヒトも毎年、湖に来るのが楽しみなんです。チェリーちゃんとは花冠を作ったり、タイガくんとは、魚釣り競争をして、そういえば、最後は誰が優勝したかしら?」


「確か、リヒトじゃなかったか?」


「多分、そうだった。」


 俺とリヒトが答えると、精霊王様が不敵な笑みを浮かべる。

 そして、俺たち二人に向かって指差し、大きな声で高らかに宣言する。


「今年は、私が優勝するぞ。釣りは得意なんだ。」


 その言葉に、ルミナがリリの首に巻き付きながら、呆れた顔で見ている。


 ルミナは、無事にベルを連れ帰り、昨日の夜遅くに帰ってきた。

 

 疲れているかと心配したが、リリから魔力を貰いながら、現在進行形で疲労回復中。ベルも、リリの隣で魔力を貰っている。

 ご機嫌でリリの隣を歩くベルは、どこからどう見ても、ペットの犬にしか見えない。安定のペット化だ。


「精霊王様って、怖い存在かと思ったけど、釣りが好きそうだし、案外良い人なのかも。」


 俺たちの後ろから、ずっと緊張しながらついてきているタイガから、ポツリと呟く声が聞こえる。


 タイガの良い人基準が、釣り好きかどうかの独特な判断で気になるが、少しでも緊張が解けるなら良いことだ。


「ああ、湖が見えてきたよ。」


 精霊王様の声に、みんなが前を見る。キラキラと光る湖が少しずつ近づいてくる。


「わぁ、光が反射して綺麗だわ。」


 リリが精霊王様の手をグイグイ引っ張って、今にも走り出しそうな勢いで前に進む。


「リリ、そんなに急いだら転んでしまう。湖は逃げないから、落ち着いて。」


 リリの隣へ移動して、反対側の手を繋ぐ。早く行きたいとワクワクしている気持ちが伝わる。


「もう、私は小さな子供じゃないから平気よ。ちゃんと落ち着いて行けるわ。ユーリってば心配性ね。」


 そう言いながらも、歩くスピードが小走りだ。だけど、小さな体に歩幅も小さいから、俺と精霊王様が、普通の一歩で余裕で付いていける。ウサギみたいで可愛い。


「そうだけど、早く行きたいって気持ちが溢れているよ。リリがお姉さんなのは分かるけど、余り気持ちが溢れると、魔力も乱れてしまうよ。」


 リリの歩くスピードが、少し落ちる。


「そうね。魔力が溢れてしまっては大変よね。ユーリの言う通り、湖は逃げないから慌てずゆっくり行きましょう。」


 気持ちを抑えて、淑女のリリに早変わり。だけど、両手を俺と精霊王様と繋いでいるので、それはそれで可愛すぎる。


 リリと手を繋ぎ、木々の影から先へ出る。すると、目の前に大きな湖と、白い花が咲き乱れる綺麗な光景が目に映る。


「着いたわ!わあ、キラキラしてて綺麗だわ。ユーリ、精霊王様、早く湖の近くまで行ってみましょう。」


 リリに手を引かれ、俺も精霊王様も湖の側まで一気に駆け寄る。


「フフ、綺麗だわ。水が冷たくて気持ちいいよ。二人とも触ってみて。」


 リリが、手を離して湖に触れる。パシャパシャと鳴る水音が、とても涼しげだ。

 はしゃぐリリは、天使の戯れの様に見えて可愛らしい。


「本当だな。冷たくて気持ちいい。ここは、変わらず静かで美しい所だな。」


 精霊王様が、寂しさを感じさせる様な小さな笑顔に、何かを懐かしむようにリリを見つめる。


「リリ、私も触ってみたいわ。リリの腕を水面に近づけてちょうだい。」


 ルミナも瞳をキラキラさせて、楽しそうだ。


「我も、触ってみるかな。」


 ベルも、恐る恐る湖に前足を少しつける。


「うほぉ、冷たい。暑かったからちょうど良いな。」

 

 水が怖いのかと思ったが、一度触れてしまえば何て事無い。ベルも水を飲んだり楽しそうだ。


「リリ姉様、あちらで花冠を作りましょう。優勝者への贈り物ですよ。」


「チェリーちゃん、今年は、豪華にしましょう。私、前より花冠を作るの上達したのよ。」


 毎年恒例の釣り競争は、優勝者にリリとチェリーちゃん手作りの花冠が贈られる。


「なに?優勝したら、リリアーベル手作りの花冠を貰えるのか。やはり、私が勝たねばならないな。」


 精霊王様が、張り切って釣り道具を準備している。

 前は、リヒトに負けて悔しい思いをしたから、今年は俺だって負けていられない。

 今年のリリの花冠は、絶対に俺が貰う。誰にも渡さないよ。


 久しぶりのピクニックに、みんなの気持ちが、楽しさでいっぱいで、折角いい雰囲気だったのに、そうだよな。

 

 俺たちだけじゃ、なかったな。


 それだけで、終わるほど、この世界は優しくないよな。


 




読んでいただき、ありがとうございます。

次も読んでもらえると、嬉しいです。

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