ビッガートル領 ②
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「リリ姉様、ユーリ兄様、リヒト様、おかえりなさい。会えるの楽しみに待っていたのよ。」
ビッガートル家に到着し、屋敷の扉を開くと、元気いっぱいなチェリーちゃんの歓迎の声が響き渡る。
それと同時に、俺の隣に居るリリへと抱きついた。余りの勢いに倒れそうになるリリの腰を支える。
「はぁ、姉様、そんな急に抱きついたら、リリ姉さんが倒れちゃうだろう。まったく、淑女らしく落ち着いて出迎えろよな。」
その後ろから、溜め息混じりに呆れたようなタイガの声が聞こえる。
「何よ、タイガだって楽しみ過ぎて、昨日は眠れなかったくせに、今朝だって部屋中ウロウロ動き回って、落ち着きがないのはタイガも一緒でしょう。」
リリに抱きつきながら、顔だけタイガへ振り向いて、チェリーちゃんが反撃する。
楽しみにしていたことを姉に暴露され、顔を赤くしたタイガが、口をパクパクさせている。
「フフ、ただいま皆さん。今年もお世話になります。実は私も、二人に会えるのが楽しみすぎて、昨日は眠れなかったのよ。タイガ君とお揃いね。」
リリが可愛く微笑んで、タイガに視線を向ける。リリから、お揃いだと言われたタイガは、真っ赤な笑顔で喜びに満ちたドヤ顔を、チェリーちゃんに披露していた。
少し悔しそうなチェリーちゃんの腕に力が入る。抱きしめられるリリから、「うぅ…」と声が漏れた。
「チェリーちゃん、リリが苦しそうだから、力を緩めてあげて。」
俺の声に、リリの様子に気づいたチェリーちゃんが、慌ててリリから離れる。
「キャー、ごめんなさい、リリ姉様!」
「だ…大丈夫よ。チェリーちゃんに会えて私も嬉しいから、私からも嬉しいハグのお返しよ。」
今度は、リリからチェリーちゃんに思い切り抱きついた。
可愛い姉+可愛い従妹=可愛い∞
可愛いの公式の出来上がりだ。癒し効果もプラスされ、俺の心は、ほんわか温か穏やかだ。
「姉様だけズルい…。」
ポツリと、タイガの口から小さい呟きが聞こえた。
ここは、従兄の頼れるお兄さんの出番だな。
「俺もタイガに会えて嬉しいから、嬉しいのハグでお返しだ。ただいま、タイガ。今年もお世話になります。一緒にたくさん楽しもうな。」
タイガを思い切り抱きしめると、タイガが嬉しさで体を震わせる。
「俺も、嬉しいのハグ!」
タイガが、俺の背中に腕を回して、思い切り抱きついた。
チェリーちゃんへの発言と言い、大人びた態度を見せていると思っていたが、やはりまだ12歳の男の子。
リリより少しだけ背が高いが、まだまだ小さな体で、背伸びして一生懸命抱きつく姿は、年相応で微笑ましい。
「まあまあ、嬉しいのは分かったけれど、チェリーもタイガも、それくらいにして、長距離移動で疲れた三人を休ませてあげましょう。三人ともおかえりなさい。まずは、ゆっくり出来るよう部屋に案内するわね。」
優しい声で出迎えてくれたのは、お祖母様だ。いつも優しい笑顔で迎えてくれる。
この笑顔を見ると、ビッガートル家に帰ってきたなって安心する。
「三人ともおかえりなさい。うちの子供達が、ごめんなさいね。二人とも楽しみすぎて、ここ最近は、ずっとソワソワ落ち着かなかったのよ。だから、大目に見てあげてね。」
ソフィア様も相変わらず、優しい眼差しでチェリーちゃんとタイガの様子を見ている。
「俺もリリも同じだから、気にしないで下さい。リリは、楽しみすぎてお土産たくさん用意したからね。」
「みんなの事を考えてたら、お土産を選ぶ手が止まらなくなっちゃったの。たくさん有るから、気に入ってくれると嬉しいな。」
お土産の言葉に、チェリーちゃんの瞳が期待で輝きを増す。
「それじゃあ、お土産も楽しみにして、まずは、お部屋へ…ね。リヒト様も、さあどうぞ。」
ソフィア様が、メイドへ合図をして部屋へ案内するよう伝える。
「挨拶が遅れて申し訳ありません。今年もお世話になります。」
リヒトが、簡潔に挨拶を済ませて、部屋へと向かおうとすると、お祖母様が呼び止める。
「そうだわ。あのね、本当はお祖父様やレオナルドもお出迎えの予定だったのよ。でもね、少々領内で問題が起こってしまって、その対応に向かったの。早ければ夕方には戻れるから、みんなで夕食にしましょう。それまでは、ゆっくりと旅の疲れを癒してちょうだい。」
「「ありがとうございます。お祖母様。」」
リリと二人で感謝の言葉を伝えると、そのまま俺達三人は部屋へと案内された。
「領内で問題って、大丈夫かしら。心配ね。」
「お祖母様が、落ち着いているって事は、深刻な問題では無いってことだよ。きっと大丈夫だよ。」
領内に入ってから、特に変わった所は無かった。領民達も変わらず働いていたし、領内の騎士の動きも落ち着いていた。
だから、問題と言っても危険な事では無いのだろう。
「リリアーベル、心配なのは分かるが、夕方までには戻れると言っていたから大丈夫だ。不安なのは分かるが、まずはゆっくり休んだ方がいい。ユーリアスも一緒なら平気だろう。少し眠るんだ。」
リヒトが、リリの頭を優しく撫でる。すると、自然にリリから欠伸が漏れた。
「リリ眠たかったの?疲れた?」
リヒトが、俺よりも先にリリの体調に気づいたことに驚きつつ悔しく思う。
「どうかな…疲れたのかな?急に眠くなってきたかも。昨日は、余り眠れなかったから……ふぁぁ。」
もう一つ特大の欠伸をして、リリがソファに横になる。
「あっ、そこで寝たら風邪を引くよ。リリ?」
小さい子供並みの早さで眠りについてしまった。
それより、さっきタイガに言っていた、楽しみすぎて眠れなかったと言う話が、真実だったことに、リリらしくて可愛らしく思う。
「相当、疲れてたんだな。仕方ない。このままベットに運ぶか。リヒトも、夕食までゆっくりしてくれ。」
「ありがとう。そうさせてもらう。」
俺は、リリを抱きかかえると、リリを部屋のベットへと運んだ後、自分の部屋へと戻った。
気付いたら、俺もそのまま眠っていたようで、夕食に呼びに来たタイガの声に起こされることになる。
補足 : ビッガートル家では、親愛の意味を込めて、家族や親しい人には、「おかえりなさい」と出迎えてくれる習慣があります。
次は、明日の夜に投稿予定です。よろしくお願いします。




