精霊小話 ルミナの悩み相談
双子のお出かけから数日後の、ルミナとリリのお話しです。
「リリ、少し良いかしら。」
ぼーっと、部屋の窓から外を眺めて動かない彼女に声をかける。
「………、へっ?あっ、ルミナ?何。どうしたの?」
リリが慌てて笑顔を作り、いつものように私を腕に巻き付ける。
「少し話があるのよ。」
「えーと、何かしら?」
優しく頭を撫でる手付きが、丁度良い力加減で、極上のナデナデに、ついウットリとして体を預ける。
「はぁぁ、リリのナデナデは最高ね。このまま眠ってしまいそうよ。」
「そう?それなら眠っても良いわよ。何時に起こす?」
「そうね………って、違うわよ。話があるのよ。」
リリの言葉に釣られて、そのまま眠ってしまうところだった。危なかったわ。
「あのね、話しと言うのは、あなた最近、何か悩んでない?私で良ければ話を聞くわ。」
リリが、何故分かったのかって、驚きの顔で私を見ているわ。
そりゃあ、分かるわよ。だって、だってね、リリの魔力がハンパないのよ。
吸収しても、吸収しても、どんどん溢れてくるのよ。
リリは、昔から悩み事や悲しいことがあったり、心が乱れると魔力に影響する子だったわ。それは、今も変わらない。
しかも、今は魔力器官が傷ついて、自分で制御も出来ないから大変よ。
魔力が乱れまくって、際限なく溢れてくるの。その都度、私が吸収してるのだけど、これ以上吸収したら、私、破裂しちゃうわ。
もう、お腹いっぱいよ。満腹で死にそうなの。こんなに沢山の魔力を取り込んだのは、生まれて初めてよ。
ベルも魔力を吸収し過ぎて、今は向こうで眠っているわ。
これは、由々しき事態よ。このままでは、私達の身が持たないわ。
なるべく早めに、リリの悩みを解決しないといけないの。
「さあ、リリの悩みを話して頂戴。何をそんなに悩んでいるの?」
私の言葉に躊躇していたリリだけど、諦めたのか少しずつ話し始めたの。
それは、この間ユーリと出掛けた日の出来事だったの。また、あのアンジュとか言う女と、ひと悶着あったようなのよ。
確かに、思えばあの日からリリの魔力が大変なことになっていたわ。
「ユーリは優しいから、本当の事が言えないのかもしれないわ。本当は、私の事が負担じゃないかしら。嫌われたらどうする?可愛い弟に嫌われたら、私は生きていけないわ。」
やってしまったわね。これは、俗に言う、テオドール現象よ。
テオドールは、双子の父親なんだけど、物凄く愛が重いのよ。
特に、双子の母親のクリスティーナが大好きで、彼女の言葉や態度一つで、情けない男に早変わりよ。
普段は、世界一の剣の達人で、元近衛騎士団の団長で、侯爵家当主の頼もしい男なの。勿論、双子の父親だから、顔も良いの。
でも、クリスティーナを想いすぎて、嫌われる事が、この世で一番の恐怖なの。
実家に遊びに行くって言っただけで、「寂しいからいかないでくれ。」って、泣きつく程よ。普段の凛々しさは、どこにいったのかしらって、ウジウジテオドールを見てたら、本当にがっかりよ。
「ルミナは、どう思う?ユーリは無理してないかな。こんな弱い姉なんていらないって思ってない?迷惑かけてばかりで、私は、ユーリと一緒に居てもいいのかな。」
有りもしない事で悩んで、無駄に魔力を溢れさせていたのね。
テオドールの遺伝子が、余計な仕事をしているわ。
「リリ、ユーリはね、本当にリリが大切で、大好きで、リリといることが幸せなのよ。ユーリが、リリを嫌いになることはないわ。天と地がひっくり返っても、それだけはない。」
まだ、不安そうね。テオドール遺伝子が発動中は、立ち直るのにも時間がかかるわ。
リリってば、性格はクリスティーナに似て、明るく活発で、考えるより先に体が動いちゃう行動派なのに、ユーリの事になると、好き過ぎて不安になるのね。(あと、テオドールのせいね。)
ユーリ以外の事は、悩む事もないのにね。
「リリ、あなたは、ユーリの事を迷惑だと思っているの?負担に思う?邪魔?一緒に居たくない?嫌いなの?」
「そんなこと有るわけ無いよ。ユーリのことが大好きだし、一緒に居たいし、ユーリの為なら何だって出来るよ。」
リリが、私の言葉に即答する。
「それは、ユーリも同じよ。リリの事が大好きだし、いつだって貴方の事を思っているわよ。毎日、うるさいくらい、リリは可愛いって連呼してるわよ。」
「そんなの、ユーリの方が格好いいわよ。可愛い弟だし、自慢の格好いい弟よ。世界一格好いい選手権が有れば、間違いなく優勝よ。」
相変わらず似てるわ。ユーリと同じことを言ってるわね。似すぎてて感心しちゃう。
「ユーリが格好いいなら、ユーリと似てるリリも可愛いって事じゃないの?」
呆れ顔で私を見るリリが、ユーリに見えてきたわ。
「ルミナ何を言っているの。私なんて可愛くないわよ。ユーリが世界一なんだから、私なんて全然よ。ユーリは、優しくて頭も良くて、強くて格好いいの。最高の弟なのよ。」
ユーリの事を話したからか、リリの表情に明るさが戻ってきたわね。
「そんな最高の弟が、リリを拒絶するような酷いことをすると思う?あんなに毎日リリへの愛情を伝えているのに、ユーリの言葉を信じてあげないの?リリは、ユーリに信じてもらえなかったら悲しくない?」
リリが、大事なことを思い出したように、真っ直ぐに前を向く。
どうやら、いつものリリに戻ったみたいね。
「私、アンジュに言われたことに囚われて、ユーリの言葉を疑って最低ね。私は、もしユーリに信じてもらえなかったら悲しいわ。そうよね、ユーリは嘘は吐かないもの。」
はあ、良かったわ。これで、魔力も少しは落ち着くかしら。
リリは、莫大な魔力の持ち主なのは変わらないけれど、安定するだけでも助かるのよね。
「リリ、ユーリのことは、他人の言葉よりユーリを信じて、特にアンジュって子は信じちゃ駄目よ。」
あの子は嫌な感じが離れないから、双子には近づいて欲しくないわ。
「そうね。でも、アンジュは良い子なのよ。ただ、何故かあの子にだけは嫌われてしまったみたいなの。」
リリの良い子の基準がおかしいわ。どこをどう見たら、アンジュが良い子に見えるのかしら。リリったら相変わらず優しすぎるわ。
それにしても、少しおかしな言い方をするわね。私は、少し気になって確かめようとしたら、リリったら信じられないことを言い始めたわ。
「これは、内緒よ。私はね、ユーリとアンジュは、お似合いだと思うの。ユーリが誰かと結ばれるなら、アンジュなら許せるわ。」
嬉しそうに話すリリは、本気で言っているようだわ。
リリを悪役にするような女とユーリをくっつけるなんて、ユーリが倒れるわよ。
「ピャァ!そんなこと絶対にユーリに言っちゃ駄目よ。あの子、絶対にショックで寝込むわよ。」
「そうかな?アンジュ良いと思うけど…。」
リリの中で、何故かアンジュの評価が高いことが分かったわ。自分を嫌ってる子を、そんな風に思えるなんて、リリは何を考えているのかしら。
「ルミナ、今日は話を聞いてくれてありがとう。悩みがぜーんぶ無くなったわ。」
まあ、いいわ。リリの悩みが無くなったのなら、私の悩みも解消したも同然よ。
「いいえ、どういたしまして。また悩み相談してあげるから、何かあればお姉さんに話してみなさい。」
リリがお礼にと、頭を撫でてくれる。極上のナデナデに、今度は素直に眠りについたわ。
後日、ユーリからも、リリが元気がないので、もしかして嫌われたかもしれないと相談を受け、そっくりな双子に呆れるルミナでした。




