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最高に可愛い童顔令嬢は、最強の守護者達に守られている  作者: 文月みい


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夏休みでも、攻略対象に休みなし?



「ユーリアス様!ウソ、こんなところで会えるなんて嬉しいです。」


 リリと二人で、お目当てのカフェに着く直前に後ろから呼び止められる。

 

 最近よく聞く不快な声なので、誰の声なのか直ぐに分かってしまい、ウンザリして脱力する。


(いや、俺は嬉しくないけど。なんで居るんだよ。)


 このまま無視してしまいたいが、リリも一緒なので、またリリの悪い噂を立てられても困る。

 

 仕方がないので、一旦立ち止まって表情を作る。可愛いリリを見ていたので、表情筋が緩みっぱなしで、このまま振り向くと彼女に誤解されそうだ。

 

 間違っても、アンジュ嬢に会って喜んでいるなんて思われないように、無表情で振り向いた。


「どうも、こんにちは。」


 取り敢えず、挨拶を返す。アンジュ嬢の両サイドには、エリオットとオリヴァーが居た。

 流石に、セドリック殿下は一緒では無いようだ。


「こんにちは。まさか、ここで会えるなんて、これは運命ですね。良かったら一緒にお茶しませんか?丁度、三人であのカフェに行く予定だったんですよ。」


 アンジュ嬢が、嬉しそうに目の前のカフェを指差す。

 そこは、今まさに、リリと向かっていたカフェだった。本当にタイミングが悪い。


「アンジュ嬢、ただの偶然なので、運命だなんて、とんでもない。それに、お互い相手も居ますし、別に一緒にお茶する必要は無いですよね。」


 俺は全ての表情筋を無にして、淡々と答える。

 

 今日は、ちゃんと会話が出来れば良いが、本当に同じ言語なのか疑いたくなるくらい、言葉が通じないから困るんだ。

 

 もしかしたら、ヒロイン語って言語があって、それじゃないと通じない可能性もある。

 普通に話してるのに、アンジュ嬢の良いように解釈されてしまうから、話すのも疲れてしまう。


「まあ、ユーリアス様、これは運命ですよ。だって、夏休みに入って初めての外出の日に、貴方に会えたんですよ。予定を合わせた訳でもないのにです。これは、絶対に一緒にお茶しなさいっていう神様からの思し召しですよ。」


 いや、勝手に運命にしないで欲しい。こんなこと言われたら、神様も迷惑だろう。

 大体、この出会いが運命なら、俺はエリオットとオリヴァーとも運命の出会いをしたことになるけど?

 リリもここに居るから、リリも運命の出会いになるだろう。リリとエリオットとオリヴァーが運命なんて、絶対に許せるかぁぁ!!

 もしも、そんな運命が有れば、俺がへし折ってやるよ。


「アンジュ嬢、人の話し聞いてますか?勝手に運命にしないで下さいね。お茶もお互い相手が居るので、お断りします。」


 これで伝わるようにと願いを込めて、俺は、再度同じ事を伝える。

 

 すると、アンジュ嬢が、俺の横に居るリリに視線を向ける。

 

 一瞬だが、アンジュ嬢の表情から笑みが消えた。その表情に、リリがビクッと体を震わせる。

 

 それに気づいた様子のエリオットが、俺とアンジュ嬢の会話の合間に話しかけてきた。

 

「ユーリアス、リリアーベル、こんにちは。お二人も一緒にお出掛けですか。相変わらず仲の良い姉弟ですね。」


 彼がリリを見る瞳は、柔らかく、とても優しげだ。

 そのエリオットの表情に、リリも安心したようで、天使の笑顔を返す。


「ご機嫌よう。エリオット様。オリヴァー様に、アンジュもお久しぶりですね。今日は三人でカフェに?私たちも今から昼食の予定なんです。買い物に夢中になって、昼食が遅くなってしまって……だから……その……。」


 リリが最後、言葉に詰まった。


 いつものリリなら、友人と会えた嬉しさで、それが会話にも表れる。こんなリリは珍しい。

 

 少し気になって、リリを見る。 表情は天使の笑顔で、いつも通りの可愛さをキープしている。でも、少し元気がないようにも見える。


「そうなのか?リリアーベルの事だから、お腹が減り過ぎて、そろそろ限界じゃないのか。お前は食いしん坊だからな。さっさと行った方が良いんじゃないか。」


 オリヴァーが、早く行けと助け船を出す。オリヴァーにしては珍しく気が利くな。

 

 俺は、その言葉を合図に、別れの挨拶を口にする。

 

「そうだね。俺もお腹が空いてて限界だから、そろそろ…」


「それなら、一緒にカフェに行けば良いですよ。二人も一緒に行きましょう。」


 アンジュ嬢が、俺の言葉を遮り言葉を被せてくる。

 断ってるのに本当にしつこい。学園の時と全く同じで、言葉も態度でも、何も伝わらないことに苛立ってくる。我慢できずに、つい冷ややかな視線を彼女に向ける。


 俺の視線には、全く気づかないアンジュ嬢に、エリオットが小さく溜め息を吐いた。


「コルトブル男爵令嬢、いいですか。ユーリアスとリリアーベルは、姉弟の時間を楽しんでいるのですから、邪魔をしてはいけませんよ。我々も目的が有るのですから、さっさと行きましょう。」


 エリオットが、瞬時に表情を作り、アンジュ嬢を優しく諭す。


「そうだな。俺らは俺らでお茶したら良いだろう。ほら、さっさと行くぞ。」


 オリヴァーも、言葉は乱暴だがアンジュ嬢へとエスコートの手を差し出し、カフェに誘導しようとする。

 アンジュ嬢は、その手を取るが、その場から動こうとしない。


「そんなの、みんなで行けば良いじゃない。どうして、一緒は駄目なの?やっぱり、リリアーベル様がユーリアス様を縛り付けているのね。リリアーベル様、どうかユーリアス様を解放してあげて、ユーリアス様は、貴方の物じゃないのよ。彼が好きなようにさせてあげてよ。」


 リリが、彼女の言葉にショックを受けたような顔をする。

 ゆっくりと俺を見ると、悲しそうな顔になり、可愛い天使から笑顔が消える。


「そんなつもり、なかったわ。ユーリを縛り付けるなんて、そんなこと考えたことないよ。でも、そうね。いつも、私の事を考えてくれて、今日も…私の行きたい所ばかりだったし……。ユーリも本当は、アンジュと一緒に行きたいなら、私は、別に一緒でもいい…よ。」

 

 そう言うと、リリは俺から手を離した。


「リリ、そんなことないよ。俺は…」


「ありがとう。リリアーベル様。それじゃあ、ユーリアス様、一緒にカフェに行きましょう。」


 アンジュ嬢が、リリの言葉に嬉しそうにして、俺に手を伸ばしてくる。

 

 俺は、直ぐにその手を振り払った。


 もう、目茶苦茶だ。折角のリリとの姉弟デートが、ヒロインの登場で台無しだ。

 

 さっきまでの幸せな時間はどこにいった?

 

 夏休みだから、ヒロインに会わなくて済むと思って油断してた。

 

 そういえば、前世の親友が言っていた。


『休日や放課後は、大体ヒロインと攻略対象者は街で偶然あって、何かしらのイベントも発生するんだよ。そこで、仲良くなったりするの。』


 休日や放課後の学園以外でも攻略対象者はヒロインに会う。


 つまり、乙女ゲームに休みはない!


「……ユーリ、アンジュが待ってるよ。」


 そんな悲しそうな笑顔で言われても、リリのそんな顔は見たくない。


 俺は今日、リリになんて言った。


『俺よりもリリの方が可愛いからね。それから、俺はリリ以外について行かないから、誘拐なんてされないよ。』


 今、その言葉を実行する時だ。


「リリ、俺が言ったことを忘れたの?俺は、リリ以外について行かないからね。今日は姉弟デートを楽しむ日でしょ。約束忘れたの?」


 パッと顔を上げて、俺を見つめるリリの瞳は、キラキラして綺麗に輝いていた。


「忘れてない。ちゃんと覚えてるし、約束も守るよ。でも、本当にいいの?私、いつもユーリの負担になってるでしょ。」


 まだ不安に思うのか、瞳の輝きは有れど、笑顔の表情に、天使の輝きが足りない。


「リリってば、そんなこと気にしてたの?そんなこと有るわけ無いだろう。姉を守るのは弟の特権なんだから、負担になるわけ無いよ。それが俺の幸せだから。リリは俺から幸せを奪うの?」


 首を横に振って、嬉しそうに笑うリリ。


「弟を守るのが姉の特権だから同じだね。それじゃあ、ユーリも私から幸せを奪わないでね。」


「勿論だよ。」


 瞳の輝きと、眩しい可愛い笑顔が、天使の輝きへと戻ってきた。


 もう一度リリの手を握り、アンジュ嬢へと視線を向ける。

 もう、無表情でも足りない。不機嫌さを隠さず、冷ややかな視線を送る。


「そう言うことなので、俺達の邪魔はしないで下さいね。可愛い姉との時間を邪魔されるのが一番腹立たしいので、アンジュ嬢のお誘いはお断りします。」


 唖然としたアンジュ嬢からは、今度こそ言葉は出てこなかった。


「二人とも、折角の時間を無駄にしてすみません。ゆっくりと昼食を楽しんでください。」

 

 エリオットが、笑顔で手を振る。


「全く、俺達は何を見せられてるんだよ。本当、邪魔して悪かったな。リリアーベルは、デザート食べすぎるなよ。それじゃあな。」


 オリヴァーが、アンジュ嬢をエスコート?と言っていいのか分からないが、引っ張ってカフェに向かって歩き出す。

 我に返ったアンジュ嬢が、何やら文句を言っているが、引きづられてお店の中に入っていった。


「俺らも行こうか。リック兄様のカフェは、次にして、今日は別のところにする?」


 流石に、同じところに入る勇気はないし、行けばアンジュ嬢が、同じ席に来るのは目に見えているので避けたい。


「カフェは残念だけど、今日はユーリと二人が良かったから、別の所でも平気よ。それに、また別の日に行ける約束が出来たから、楽しみが増えて、私は嬉しいわ。」


 はあ、やっぱり可愛すぎる。可愛い選手権があれば世界一になれる可愛さだ。


「俺も楽しみだ。それじゃあ、今日は俺のお薦めの所に行こうか。リリの好きなタルトがあるよ。」


「やった。楽しみね。」


 ヒロインの登場で、リリとの幸せな時間が台無しになるところだったが、何とか持ち直して、その後は楽しい時間を送ることが出来た。


 それにしても、リリに対して、あの発言は許せない。俺の気持ちを騙って、リリを傷つけるなんて許せないし、俺としても全く思っても無いことを言われて迷惑だ。


 接触の機会は、学園よりは減るだろうが、王都にいる間は、外出も気を付けないといけないな。


 それより、攻略対象者も休みは欲しいよ。

 



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