可愛い天使と楽しい時間を過ごす。
やっと、やっと、夏休みだぁぁぁぁ。
夏休み直前の一週間が、本当に長かった。リリの所に逃げるという最良の考えが、セドリック殿下とエリオットに阻止され、泣く泣く学園に戻されて、俺は1週間を必死で耐え抜いた。
まずは、アンジュ嬢から声が掛けられる前に、放課後は急いでリリの所へと直行する。
更に、アンジュ嬢から逃げ続け、面倒な事は殿下達に丸投げする。
アンジュ嬢からのアプローチを全て回避するという荒業を身に付け、俺は1週間を見事に乗り切った。
こんなに頑張った俺には、癒しと褒美が必要だろう。
――ということで、今日はリリと一緒に買い物に行ってきます。
「ああ、リリは何を着ても良く似合うね。相変わらず天使の様だよ。いや、これは、女神か…女神に違いない。俺の姉は、女神様だったんだね。こんなに美しくては、みんなリリの虜になってしまうね。何だか心配になってきたな。やっぱり外出は止めようか。ああ、でも、折角のリリとの外出なのに、中止にするのも嫌だな。そうだ、不埒な視線を向けられる前に、王都の男どもを全て排除して回ろう。」
俺との外出の為に可愛く着飾ったリリを、誰にも見せたくない衝動と、一緒に出掛けたい欲望がせめぎ合う。
「もう、ユーリったら、また可笑しな事を言ってるわ。あのね、今日はチェリーちゃんとタイガ君達のお土産を買うのだから、中止になんてさせないわよ。ほら、ユーリも、折角こんなに格好いいのだから、王都のみんなに私の弟はこんなに格好いいのよって、私に自慢させてくれないの?」
拗ねた顔でリリが俺を見ている。なんて可愛いんだろう。
もう、それだけで行く以外の選択肢は消し飛んでしまう。
「ごめんね、リリ。余りにもリリが可愛すぎて、少し心配になったんだよ。でも、リリとの外出は久しぶりで楽しみだから、絶対何がなんでも行くよ。それに、リリに格好いいって自慢して貰いたいからね。」
リリの柔らかい髪を撫でると、くすぐったそうにリリが笑う。
「フフ、良かった。私もユーリと一緒にお出掛けするの楽しみにしてたの。」
「姉弟水入らずで外出なんて本当に久しぶりだろう。花祭りの時は、他にも同行者がいたから、二人で出掛けるのが嬉しいよ。リリ、今日は行きたいところ全部見て回ろうね。」
俺の言葉に、リリが瞳をキラキラと輝かせて、満面の笑顔を見せる。
こういう顔のリリは、大抵が甘い物の事を考えている時だ。
「全部って、カフェにも行く?お土産を買ったら、私タルトを食べに行きたいわ。リック兄様がね、美味しいフルーツタルトのお店を教えてくれたの。」
やっぱり当たった。いつもの可愛い笑顔だけど、大好きな甘い物の事を考えてる時は、少しだけ瞳の輝きが違う。
それに、リリから伝わってくる感情が、とても幸せに満ちている。
「リリが行きたいところは、全て回ろう。大丈夫だよ。時間はたっぷりあるんだ。ルミナにも魔力を極限まで吸って貰ったし、魔道具も付けてるよね?準備はいい?」
魔道具の最終確認をする。身を守る為の魔道具に、迷子予防の魔道具、リリの危機に反応して回避してくれる魔道具に、魔力を吸い取る魔道具二つ。念のため予備も4つ用意した。
予備以外は、全てちゃんと身に付けている。
「こんなに、魔道具必要かしら?魔力を吸い取る魔道具だけで良くない?」
リリが、他の魔道具を外したそうに、俺に目で訴えてくる。だが、これだけは絶対に譲れない。
「絶対に駄目だよ。リリは可愛いんだから、誘拐されたらどうするの。それに、今は魔法も使えないだろう。身を守る魔道具は絶対に必要だよ。迷子になっても困るから、迷子予防も必要だ。」
本当は、これでも足りない。これでも譲歩しての結果だから、リリにも分かって欲しい。そうじゃないと、心配で外出の許可なんて無理だ。
「仕方ないわね。分かったわ。それじゃあ、ユーリ早く行きましょう。チェリーちゃん達へのお土産と美味しいフルーツタルトに、他にも行きたいところが有れば、全部回るわよ。」
リリが俺の手を取り、外に向かって歩きだす。
「ちょっと待ってよ。慌てなくてもお店は逃げないよ。今日は、たくさん楽しもうね。リリ。」
嗚呼、こんな日々を待っていた。俺は、今とても幸せだ。
ここ最近で一番の幸せで、心穏やかな時間かもしれない。
夏休み、最高だ。
この幸せな時間は、まだ、始まったばかり。
夏休みの間は、リリと一緒に楽しくて幸せな時間を過ごして、素敵な思い出をいっぱい作る。これは何があっても絶対だ。
ここまで、読んでいただき、ありがとうございます。
楽しい夏休みに期待大のユーリですが、双子が揃っていて、そんなに平和で楽しい夏休みが送れるのか? 初めての夏休みが今始まります。




