リック兄様の楽しい恋愛講座(オリヴァー編)
【ヘンリック視点】
「それじゃあ、さっき話した通りにやってみてね。リリが先に目を逸らしたら負けだよ。いいかい?」
可愛い姪っ子を前に、最終確認をする。
「わかったわ。もし最後まで私が勝てたら、退学のこと賛成してくれるのよね?ユーリと両親の説得は、リック兄様にも手伝ってもらうわよ。」
「もちろん、約束だからね。任せてくれ。まぁ、でも、リリが勝てたらだけどね。」
本人は、余裕で勝てると思ってるけれど、そんな簡単にはいかないだろう。
頑固なリリには、普通に説得するだけでは考えを改めさせるのは無理。
だからね、ちゃんと色んな事を自覚してもらって、退学を諦めてもらわないとね。
可愛い双子が幸せになれるように、ちゃんとリック兄様が導いてあげよう。
今日は、一体どんな楽しいことを見せてくれるのかな。
♢♢♢♢♢♢♢
【オリヴァー視点】
休日に、突然リリアーベルから魔法塔に呼び出された。
「オリヴァー様、今日は来てくれてありがとうございます。早速ですが、今日はよろしくお願いします。」
リリアーベルは、そう言うと突然、俺の隣に移動して両手を差し出す。
「…うっ、…ちょっと待て。なんか近くないか…。」
「…?でも、手を繋ぐから、このくらい近寄らないと届かないですよ。」
二人掛けのソファに隣同士で、いつもより絶対に距離が近い。
俺の方を向いたリリアーベルの膝が、俺の膝にぶつかりそうだ。
最近は、リリアーベルの命に関わる事だからと、必死に誤魔化し必死に堪えながら、魔力吸収の為にと、手を触れることは出来るようになった。
でも、今は、距離が近すぎて、逃げ出したい衝動に駆られる。
「オリヴァー様、今日はリック兄様から教えて貰った方法を実践します。先に目を逸らしたら負けですよ。私が目を開いたら勝負です。」
「勝負?勝負って何だ?」
そんな俺の言葉を無視して、リリアーベルが、俺の両手を握り、じっと俺の顔を見る。
そして…ゆっくり目を閉じた。
(えっ…何だこれ。何で目を閉じた。)
多分、数秒。
普段は、年齢よりも幼く見える顔なのに、目を閉じたその顔は大人っぽく見え、その美しさに思わず見惚れてしまう。
蝶が花の蜜を求めるように、自然と俺も彼女の方へと引かれていく。
ゆっくり…彼女が目を開いた。
「…っ!」
先程よりも近い距離。綺麗な紫色の瞳が目の前にあり、驚いて視線を逸らす。
顔が熱くて、心臓も聞いたことないくらいドキドキとうるさい。
「…あっ、オリヴァー様、先に視線を逸らしたのでオリヴァー様の負けですよ。」
リリアーベルが、嬉しそうに笑う。そういえば、勝負だと言っていたか。
突然始まった、よく分からない勝負事など、恥ずかしさでいっぱいな俺には、どうでもいいことだ。
まだ彼女と繋いだままの手から、お互い熱が伝わる。
「オリヴァー様、私、目を閉じてる間に、オリヴァー様の所に近寄ってしまったんですね。本当にごめんなさい。」
恥ずかしそうにしながら、顔を真っ赤にして謝罪する彼女が、可愛くて握った手に思わず力が入る。
「べ…別に、大丈夫だ。それに…その…近づいたのは…お前じゃなくて…」
その言葉の続きを言うのは、まだ勇気が出なくて口を閉じる。
「オリヴァー様?」
急に黙った俺に、心配そうに顔を覗き込んでくる。
「何でもない。それより、まさかとは思うが、この変な勝負とやらの為に、俺は呼び出されたのか?」
リリアーベルが、「あっ」と小さな声を出し、可愛らしく微笑む。
「えっと、怒らないで下さいね。実は、リック兄様と勝負をしてまして、私が勝てば希望を聞いて貰うことになってるんです。まずは、オリヴァー様に勝てたので1勝です。」
その勝負に勝って叶うリリアーベルの希望が、どんなことか分からないが、リリアーベルに勝てる奴がいるのか。
こんなの、リリアーベルの圧勝で、彼女の希望も叶うだろう。
「では、私の一勝を祝して、一緒にお茶しませんか?オリヴァー様が来るので、美味しいお菓子も用意したんですよ。」
ふざけた勝負の為に、休日を台無しにされたと怒るところだろうが、彼女の笑顔の前では、怒りも消し飛ぶ。
「折角の休日に来てやったんだ、ちゃんと持て成せよ。」
「任せてください。」
握っていた手を離し、侍女を呼び冷えたお茶を新しいものと淹れ替えてもらう。
ずっと、いつものリリアーベルの様子と変わらないように見える。
だが、笑顔の端に見え隠れする照れた表情に、耳まで真っ赤になった姿に、俺は少しだけ嬉しさが込み上げてきた。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
祝100話って事で、一気にまとめたかったのですが、ちょっと長くなるので、断念しました。
次回の勝負は、エリオット編です。




