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(105)もし人生をリセットしてみたら、本当にもう一つの選択肢って出ると思う?

 一見平和に見えるこの校舎の中では、強い者が弱い者を喰らい尽くす、殺戮の宴が始まっているの事は間違いなかった。


「殺し合い、なんだな。 それも一方的な」


 その惨劇を想像し、俺はそう呟いた。


「そうだな」

「生きるって、こういうことなのか」

「こういう事さ。 レオ、瓜生先輩が無くなった時、君が僕に教えてくれただろう? これこそが生きることだと」

「そうだな……」


 確かにそうだけど……。

 そう言ったけど……。

 人は、何かを犠牲にしながら生きているけど……。

 

 俺の脳裏に、格闘ゲームで対戦しまくって、地元のプレイヤーを全員駆逐した時の事が思い出された。


「(周りを全員ぶっ殺したら、自分一人だけなんだぞ……。 今、俺とお前がそうであるように)」


 かつて、俺と龍真で瓜生先輩達とやり合っていた時、ふと思ったことがあったのだ。

 龍真が学園祭で目立ちすぎ、先輩に初めて目を付けられた、一番最初のその時に……


「イヤだなぁ~、僕なんて瓜生先輩に比べたら、全然ヘタレですよ。 それより、女の子紹介しますから、勘弁して下さいよ。 今ならよりどりみどりですよ」


 ……こんな事を言っていたら、最初からモメ事は発生しなかったんじゃなかろうか?


 もし……もしもだ。

 瓜生先輩がこれで納得していたら、龍真は怪我もせず、帝国大学に行けていたんじゃないだろうか?

 先輩を追い落とした龍真の行動力を恐れて距離を置いたクラスメートも戻ってきて、友達の多い生活を続けていられたのでは?


 と、俺がそんな提案を、冗談混じりに告げると、


「……そうかもしれないな」


 結構な間を置いて、龍真はなんと肯定した。


「……でも、仮にその可能性があったとしても、当時の僕がその選択肢を選ぶことはなかっただろう」


 しかしすぐさま、その可能性があったことを認めた上で、なおそれは「無い」と全否定してきた。

 おいおい、そうなのかよ。


「ああ、あの時の僕はまだ、のぞみと出会ってなかったからな……これは必然だよ」

「そうなのか」


 のぞみさんとの出会いがどんなだったのかはちょっと興味があったが、多分食傷するような話だろう。

 俺はそこで会話を切り、装備を整えに行こうと提案した。


 そしてその途中、何だか凄いアバターを見つけた。


 蒼みがかった銀髪の超ロングヘア、遠くからでも分かる巨乳と、ミニスカートからスラリと延びた生足の女性アバター。

 その女性が、何だか多くの取り巻きを連れて、校庭を優雅に闊歩し、時々取り巻きに何かのアイテムをくれてやっている。


 ……というか多分、あの規則的な動きは、プレイヤーアバターじゃなくてNPCだな。

 ていうか、何だ、あれ?


「あれは、アイテム交換用のNPCだろう」

「アイテム交換?」

「イベント終了後に、金貨……じゃなくて、このイベントでは、チョコレートを持っていけば、報酬アイテムと取り替えてくれるNPCだ」

「へー、何と変えてくれるんだろう」

「武器とか防具だと思うがな」

「ちょっと行ってみようぜ」


 取り巻きの礼装アバターをかき分けて、近くに寄ってみれば、その女性アバターの姿は実に扇情的だった。


「……おお」


 思わず、そんな感嘆の声が漏れる。

 このイベントのシチュエーションが、学校でのバレンタインイベントを設定しているから、学校の制服だってことはかろうじて分かる。


 だが、大胆過ぎるほどV字にカットされ、胸元と脇と背中が丸見えのブレザーからは、これまた穴あきのスケスケレースのブラウスが見えていた。

 そして、ホーリートライアングルが見えるかどうか、というギリギリのラインまで攻め込んだミニスカート。

 学校のブレザーという設定が、申し訳程度にしか残っていない。


「(つか、こんなエロキャラから、何もらえるんだろ)」


 俺がそう思って、そのアバターに話かけると、ウインドウに浮いた名前は「イザベラ」……さんは、実に艶っぽい声で、


『あら? 貴方もこの私の美しさに惹かれてやってきた蝶なのかしら? 何をご所望?』


 流し目の麗しい顔グラと共に、そんな事を言ってきた。

 そして、トレードウインドウに浮いたアイテムは、 


『どうぞ、選んでちょうだい? 私のグラビアフォト』


 えっちなイラストだった。


「……おおぉ」


 1枚だけ「FREE」の奴があったので、クリックして拡大表示する。

 

 すると、それはフォトフレームの中で優雅に立つイザベラのグラフィック。

 ……に突如強風が吹き付け、見えそうで見えないホーリートライアングルがモロに見えた。

 ていうか、縞パンだった。


 『……み、見た!? 見たわね!?』


 グラフィックの中のイザベラさんが叫ぶ。


 ええ、しっかり見ました!

 てかこれ、動画だったのか。

 俺は他のイラストもタップしてみるが、有料になっているそっちのは、小さいサムネール表示のままで大きくなってくれない。

 くそ、浴衣とか水着とかお風呂とか、美味しそうなシチュエーションがいろいろあるのに!

 交換しないと無理なのか!?

 

「意味が分からないな……。 こんなイラストに金を払う奴が居るんだからな」


 だが、龍真がそんな冷静極まるコメントを吐いたので、俺はちょっと冷静になった。


「礼雄も欲しいのか? こういうの」

「い、いや、俺は払わないぞ!」

「だよな、せっかく稼いだお金を、こんな非生産的なものにつぎ込む意味が分からない」


 いやぁ……そんな夢のない否定をするなよ……。

 それ言ったら、美術品や骨董とかも無意味になるだろ。


「あれは他人も認めていて、換金性があるからだと僕は思うな」

「そ、そうか……」


 こいつは一度、「有明まんが祭り」にでも連れていって、世の中はそんな理屈では動いていないという事を実感してもらわねばなるまい。


「(っても、それは俺が生き残っていれば、の話か……)」


 俺たちは、次のNPCらしきアバターに話かける。


 学園祭で屋台的をやってる生徒さんたち、のアバター。

 制服にエプロン、オッドアイにエルフ耳という異世界要素は盛り沢山だが、見た目は比較的まともで大人しめだった。


「こっちは、普通に武器や道具の店だな」

「本当だ」


 タップして浮いたウインドウの中には、普通に購入できるアイテムの他、チョコで交換できるアイテムもあった。


ーーーーーーーーーーー


「チョコレートポンポン」

 片手剣:攻撃力210  

 必要チョコレート数:「義理」40 「本命」10


ーーーーーーーーーーー


 見た目はチアガールの持つポンポン(でも茶色)だが、攻撃力はアホみたいに高い。

 以前、俺が持ってた剣の3倍以上の攻撃力だ。

 これはマジで欲しい。


「義理が40、本命が10……って、以前のイベントに照らすと、相当に高級だな。 交換するのはかなりしんどいアイテムだぞ」

「だろうな」


 イベント武器だからかもしれないが、マジで攻撃力が桁違いだし。


「……イベント途中には交換できないんだよな?」

「前回のイベント通りなら、途中での交換は不可、のはずだ。 だから、この校庭でデュエル以外のバトルは不可能になっている」

「なるほど」


 俺たちは、さらに校庭を回ってみた。


「チョコレートくれよぉ! 金払うからぁ!」


 と叫ぶ、青年型のアバターが居た。


『寂しいバレンタインを過ごしたくねぇんだよぉ! 誰かぁ、嘘でもいいから、俺に愛の手をくれよぉおおぉぉ! チョコレート、ギブミィィイィィィ!!!』


「あれは分かりやすいな」

「本当だな、バール。 笑えるな」

「あれは直接換金型のNPCだ。 チョコレートを渡すと、直接Cenと交換してくれる」

「あ、そうなのか!?」

「何だと思ったんだ?」


 とりあえず、イベントの概要は分かった。

 ダンジョンの連中を罠で倒して……いや、宝探しをしてチョコレートをゲット、イベント終了後にNPCの面々と報酬を交換、そんな流れなんだな。


「そうだ。 メンツもちょうど良く減ってきたし、装備を整えよう」

「ああ」


 俺も再びメール欄で、生き残ったプレイヤーを確認する。


「……お」

「どうかしたか?」

「キリエ先生とアマダムが死んでる」

「本当か」


 有料メール欄のランプは、連絡可能……すなわち、生存を示す根拠になる。

 さっきまでは点灯していたそれが、今は消え、名前も灰色になっていた。


「罠にハマったか、それとも強いプレイヤーと戦ったか……一筋縄ではいかなさそうだな」

「ああ」


 強いプレイヤー……。 ゼファーか。

 さすがに、キリエ先生といえど、ゼファーと戦えば死は免れないだろう。

 何せ、金にまかせて桁違いの装備を持っているからな。


「……」


 俺は、装備を整える段になんて、連中の気持ちを考えてみた。

 特に、野口さん(フィールドマウス)の心理。

 フィールドマウスは、俺の装備がある程度強かったら、絶対に勝負に乗ってこないだろう。

 装備の差がありすぎて、絶対に勝てるとまで思わせないと、連中は俺とのバトルを避けようとするだろう。


 そう。

 桐嶋礼雄はもう負けて、装備を全て失っているのに、怨念に駆られて、身分も弁えず復讐に来た……という状況を演出しなくてはいけないんだ。


 そうしないと、多分連中はバトルに乗ってこない。


 しかしながら、それだと凡ミス一発で死ぬ。

 以前やったように、装備交換のマクロを組んで、バトル直前で交換して相手を騙す、というのがベストかもしれない。


 そこまで考えた俺は、俺は比較的弱めの装備を購入した。

 状態異常の魔法スクロールも準備し、


「これも買っておくか」


 少し考えて「解毒薬」と「対麻痺の護符」を購入した。

 このアイテムを買ったのは、オリオンに対するフェイクだけど……。

 この策にひっかかってくれるかどうかは、分からない。

 でも、やるしかない。

 

「よし、行こう。 バール、どこから行く?」

「なるべく目立たない所だな。 校舎の裏手とか良いんじゃないのか?」

「そうだな」


 そう思った俺たちは、4階建ての校舎をぐるっとまわり、鉄扉のある裏口から入ろうとしたが……。


「……待て、バール」


 その直前で、俺は龍真を引き留めた。


「どうした、レオ?」

「……あそこに誰か居る」

「あそこって?」

「あの鉄扉の裏側だよ」


 と、俺が言うと、龍真は苦笑した。


「鉄扉の裏側って……」


 そう、現実ならいざ知らず、ここはポリゴンワークの世界。 あの鉄扉の裏側は、物理的には連続していない。 校舎内のマップに連結されるだけだ。

 だが、それでも……。


「気配がするんだよ」

「気配って……。 ゲームだぞ? デジタルデータにすぎないのにか?」


 龍真があきれたような声を出す。

 だよな、確かに気配とか、何言ってんだって感じだよな。

 それは分かっている。

 でも、ゲーマーとしての勘なんだ。


「勘で話されてもな……」


 いや、あそこは間違いなく、誰かが罠を張って待っている。 そんな予感がする。

 でも、俺もそう感じた根拠があるはずだ。

 何か……。


 そう思った俺は、周囲を見回す。


「!! バール、屋上!」

「何だ?」

「誰か居る!」

「……本当だ。 まさか、僕たちを見張ってるのか?」


 ここからでは小さくしか見えないが、確かに屋上に人影が見えた。

 それが意識の片隅にあったから、俺は危険だと思ったんだ。


「移動しよう。 別の入り口から入るんだ」


 俺たちは、その裏口からダンジョンに入るのを避け、別の入り口を探した。


「……追いかけてきてやがる」


 ナチュラルに視界を遮る物陰を通りつつ、別の入り口を探したが、屋上のそいつは俺たちを捕捉しようと追いかけてくる。


「間違いなく、僕らをマークしてるな」

「別の入り口から入るか?」

「……いや、多分、そこもマークされているだろう。 ということは、僕らに目を付けているのは、多分、集団だな。 最悪だ」

「マジかよ……くっ!」


 PK集団の気まぐれが獲物に選んだのは、俺たち。

 まるで、狼の群にゆっくり後を付けられてるようなもんだ。

 気を抜くと、おそらく一気にガブッといかれる。


「一番良いのは、誰かが入った直後に便乗して入場することだが……」


 しかし、今校庭に残ってる連中は別の思惑があるのか、易々と身動きしそうにない。


「ハイドローブで姿を隠す、って手は使えないのか?」

「日のある所では普通に影が出来る」


 そうなのか。


「それに、入り口に『まきびし』が撒いてあったら、そのダメージでハイドローブが解除されてしまう」


 しかも、アイテム同士のそんな相関性があるのか……。

 アイテムによるコンボもあるとしたら、これは頭を使わせられそうだ。


 俺はしばらく頭を捻ったが、


「バール、何か策はないか?」


 速攻で降参した。(テヘペロ


「いや、僕にも打つ手がない。 何せ、相手の出方セオリーが分からない」

「そうか……」


 じゃあ、どうしろってんだよ……。


「仕方がない、僕が罠に掛かる」

「えっ? マジで!?」

「ああ、罠を避けるより、ダメージを最小限に抑える方法で行こう。 二人で校舎に入るフリをして、僕だけ入る。 罠にかかったら、状況はチャットで伝えるから、君が何とか残りの連中を排除してくれ」


「……分かった」


 この装備じゃ、ちょっと自信はないが……。


「よし、じゃあ行くぞ。 モタモタしてたら怪しまれる」

「バール……頼むぞ、死ぬなよ」

「そればかりは何とも言えないな。 まさに神のみぞ知る、だ」


 そう言って、龍真は校舎裏口の門から、ダンジョンの中に飛び込んだ。


『おっ!?』


 すると、即座に異様なリアクションの声。


「どうした、バール!?」

「罠はあった……が、『まきびし』だ。 それだけだ。 驚いたが……。 周囲には……何もない」


 シングルチャットで安否を確認すると、そう返事が帰ってきた。


「ここは割と広い空間だな……周りには誰も居ない。 入って来て良いぞ、レオ」


 そう言われ、俺は中に入った。


「いてっ」


 マイアバターがダメージを受けると同時に、俺もそんな事をリアルで呟いてしまった。


 本当だ、足下にあるのは「まきびし」だけだ。

 てか、結構多量に撒いてあるな。

 の割には……。


「……誰も居ないな」

「そうだな、あの屋上のは、レオの気のせいだったみたいだな」

「ああ、そうみたいだな……」


 そんな訳ないと、思ったんだけどな……。

 でも、目の前に広がるのは、確かに誰もいない、石づくりの無機質な空間だった。


「安全だと分かれば、中へ進もう。 まずは宝の場所をマップで確認しようか」

「……そうだな」


 釈然としないまま、俺がそう呟くと、



「コマンド。 スリープ・クラウド」


 誰も居ないはずの迷宮の中で、俺達を襲う魔法の詠唱が聞こえた。


いつも遅くてごめんなさい! 遊戯王デュエルリンクスが面白くて・・・!(おい

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