三対一なんて、絶対に卑怯だわっ!!
こいつ、ずっと気に入らないんだわっ。
ちょっと、あんたたち手伝いなさいっ。
こいつの身ぐるみ全部剥がすのよ。
そして、あんたたち二人は、こいつなんかやめて私の下で働きなさい。
いい、姫の命令は絶対よっ。
進めっーー!!
オーッホッホッホ
「負け犬クレアじゃないのww」
三人組だ。こんなものが異世界にはいるのか。
それに、どんなに記憶を遡っても負け犬だった覚えはない。まあ、勉強が苦手ってくらいだ。
真ん中に青髪の女子がいて、後ろに二人、金髪とリリカと同じく青髪の女子がいる。
まあ、わかっている。リリカだ。いつもしつこい女だ。後ろの二人は、喋っているところを見たことがないので名前がわからない。
決して私のせいではないはずだ。
オホホホとリリカが一人で笑い、連れている後ろの二人は黙って私の方を見ている。
「なんなのよ、あんたはっ。死ぬのがいいわっ」
私は、ふん、と鼻を鳴らす。
「は?なにが、「死ぬのがいいわ」よ。黙りさないっ。へっ、いいじゃない。あの気持ち悪いシスコンお兄様に守ってもらえるから。ほんと、あんたの家族気持ち悪いわ」
私への悪口ではないみたい。
気持ち悪いのは、私の家族らしい。
「そんなの分かってるわよ。私が、そんな馬鹿に見えるってこと?」
「不意をついてやったぞ」と私は思い、リリカは「不意をつかれた」と思ったはずだ。
「馬鹿なんて言ってないですけど、なにそれ?!!自覚あるってこと?私、なんにも言ってませんよww」
後ろに控える二人の女子は、タイミングを合わせて笑っているだけだ。
「なによ。私は馬鹿じゃないわ」
「あらあらwwそんな、ムキになって否定しなくてもいいのですわよww」
「遊びましょ!!」
「な、誰があんたとなんか遊びますかっ」
「ちょっと、隠れてないで出てきなさいっ」
三人がキョロキョロと周りを見回している。
こいつらには自覚がないのか?
「違う違う、あんたら二人のことよ」
後ろに控えている二人が「え、私のこと?」という感じで自分の顔を指さしている。
「そうよ。それ以外になにがあるの」
「別に、隠れているわけじゃないけど、」
真ん中の出しゃばり野郎が騒音を立てる。
「あんたは黙ってなさい!!」
「ちょ、何よ!!黙ってなさいって、いつのまにそんなに偉くなったのかしら」
あんま確かではないけど、あんたよりは偉いと思うんだけどな。
「そもそも、あんた誰なのよ」
「いい加減覚えなさいよ!私は、リリカ・ウォーターよ。あんたの圧倒的上の立場にいるの」
「どうせ、忘れるからいいわ」
だって、私の記憶に本当にあんたの名前はないわよ。
「べ、別にあんたなんかに名前を覚えさせる必要もないしっ。じゃあ、行きましょう。アユ、テト」
「いや、アユ、テト、一緒に遊びましょう!!」
「あっら、やだやだ。そんなことをしたら、クレアやレイみたいに馬鹿になるわ。ごめんなさいね〜。そこら辺のゴミムシたちと一緒に遊んでれば」
「いや、一緒に遊びましょう」
私は、アユとテトの手を握る。
「遊びましょ!!」
何度でも、言うさ。リリカは気に入らないからな。
彼女たちは、驚いた表情で互いの顔を見合っている。
「ちょっと、なに、ついていく気なの?ちょっと、」
「そこに突っ立ってなさい。たまには、自分のこととか深く考えてみたら」
相変わらず、私は突っ走りだした。ずっと、自室から出ない生活を前世ではしていたのに。相変わらず、自分でも信じられないと思う。
二人は、信じられないくらい喋らない。声は、届いているのだろう。まあ、喉になにかしら問題がある場合もあるか。
まあ、私は、そんなこと気にしませんけど。
城の外に出る。今度は、扉に思い切りライダーキックをかます。 扉が、ちょうどいい感じに開く。
私は、しっかりと両足をついて着地する。
「あれ、・・・クレア?」
「あらお父様。私、お出かけしますので、ごきげんよう」
頭も下げずに、父に挨拶だけして、私は城の私が勝手に庭としたところに向かう。両手で引っ張る彼女たちの抵抗があまりにも感じられないので、時折心配になるが、彼女たちが死んでいようが生きていようが私には関係のないことだ。遊び相手さえいれば、それでいい。
庭では、すでに何人かの子どもたちが遊んでいた。これから、口コミでもっと広まっていくんだろう。多分。だいたい、二〇人くらいだろうか。
「皆の衆、こっちを見なさい」
何人かの子どもたちが私の方を見る。
「あれ、昨日のお姉ちゃん?」
「人と人ならざるものの区別くらいはつけられるようになりなさい。私は違うは」
「確かに、おっぱい小さいね」
「そうよ。小さいの。抱えている悩みの分だけ胸は膨らむのよ。夢や希望では胸は膨らまないわ。ちょっとあんた。向こうで遊んでるのも集めてきなさい」
一応、一番しっかりしていそうだった金髪の女の子にそう命令する。女の子は奥の方で遊んでいた男の子たちを「ちょっと男子」という常套句で呼び寄せている。異世界でも、人間は変わらないんだな、と純粋に思った。
「いい?あなたたち、これから鬼ごっこをするわ」
昨日、無駄にテクニックが必要な競技をやるのは分が悪いということを学んだのだ。他の人の体で、学んだのだ。
「なにそれ、怖〜いww」
「ガキのくせに、いっちょ前に感想発表してんじゃないわよ。いい?まずね、鬼を決めるの」
「鬼やだよ〜。ママに言われてるもん」
親も、そういう下らないしつけを教えるから、下らない子供ができるんだ。親の顔なんて見ても意味はないけれども、親の教育は是非見させてもらいたいものだ。
「いい?鬼が走ってあんたらのことを追い回すから、それに捕まったら死刑よ」
このくらいの連中は、死刑という言葉を聞けば、大いにはしゃいで盛り上がるだろう。
「タリスちゃん死刑ww」
「意地悪しないでっ」
また、名前が増えた。もう、やめてくれ。覚えるつもりはないんだから。
それに、いちいちこちらの言葉に反応しては、いちいちふざける。まあ、典型的なクソガキだ。
「わかったわね?じゃあ、このお姉ちゃん鬼だから、みんな、逃げるわよ。この庭の中だけよ。庭から出たら死刑にするわよっ」
どっちがアユでどっちがテトなのかわからないが、青髪の方を勝手に鬼に指名して、私は一目散に逃げ出した。
二人がなにやらコソコソと話し始めた。あんたらは同い年なんだから、その程度の理解力っていうのはおかしいだろ。
「ちょっと、早く十数えて追いかけなさいよ。貴族なんだから、庶民を追いかけ回すなんて簡単なことでしょ?」
「なんで十数えるの?」
すぐさま鬼から距離を取った私の周りに何人かの浮浪ガキがまとわりついてくる。
「そんくらいわかるでしょ?こっちが逃げる時間を稼ぐためよっ。いいから、あんたたち、逃げるのよ。最後まで逃げ切った人が勝ちよっ」
私が高らかにそう宣言すると、ようやく彼女たちが動き出した。私としては、青髪の方一人にやらせるつもりだったのだが、まあ彼女たちが二人でやるというなら仕方がない。
彼女たちは、左右に散って、実に合理的に私たちを端の方に追い詰めていった。無闇に出たガキ贄が彼女たちに捕まえられる。
「捕まったら、そこで止まってなさい!!ズルは許さないわよ」
そういえば、時間を測るすべが無いな。まあ、私が捕まりそうになったらやめればいっか。
だって私、王女ですからね。
オホホホホホホホホホホホホ
すでに、五人ほどのガキがその場で硬直している。
「ちょっと、ズルしちゃ駄目だよ」
「ズルしてないし」
なんだか、懐かしいな。私も、小学生の時こんな風に、・・・・いや、ずっとクラスではぶられてたし、誘ってもらえてもずっと鬼やらされて、とかいじめられっぱなしだったじゃないか。なんで、異世界に来てまで過去の記憶を思い返していなければいけないのだ。
せっかく、ここまで思い出さずに生きてきていたのに。
青髪の方が、私に近づいてくる。大将戦ですわね。行きますわよ。
彼女たちも、履いていたハイヒールをいつの間にか脱ぎ捨てていたようで、軽快に走っている。が、所詮は貴族だ。庶民を追いかけ回すのは得意でも、より上位の貴族を追い回すなんてそうそう無いはずだ。
「ちょっと、本気出すわよっ」
この体がどのくらい動くのかわからないが、だいたいスポーツが得意な女性は、あまり胸が大きくない傾向にあるのだ。だとすると、私は最強になる。
巨乳なんかには、負けないわよ!
私は、あらゆる可能性を考える。まず、一番考えるべきは後ろから急に、二人の青髪じゃない方(金髪)が来るのを警戒すべき、ということだ。
これは、チーム戦なのだ。
きっと、分散させるのが大事だ。そして、体力を消耗させるのが次に大切だ。
そして、捕まっていてその場で動けないでいる捕虜ガキを活用するのも一つの戦法だろう。
鬼との距離は、まだ十分ある。もし、彼女がものすごいスプリントの持ち主(常識の範囲内の)ならば、いくら私が鈍足でも問題ないはずだ。
一度彼女と目を合わせる。彼女の着ているドレスが慣性の働きで彼女を置いて走り去ろうとするが、それを許さぬ一瞬の静寂が私たち二人に同時に訪れる。
もちろん、先に動くのは私だ。
私は、反転してもう一人の鬼のいる方に走った。
後ろの動きはわからないが、まだ大丈夫なはず。私の素足が、地面についた瞬間にすぐに反発する。その勢いを前への推進力に変換させて走る。
もう一人の鬼の方は、さすがに二、三歳年下相手には手応えが無いようなので、無言なのは若干不気味ではあるが、少し手加減しながら逃走ガキを一人また一人と捕まえていく。
「ほら、こっちを見なさい!」
走りながら喋ることは、体力の温存の観点から、あまりよろしくはないが、つい気分が高揚して喋ってしまった。
まあ、だからといってすぐに影響が出るわけではない。
私は、右足で地面を掴み、急ブレーキをかける。そして、体を地面ギリギリまで近づけた状態で、地面に手をついて、さっきまで走っていた方に戻る。
どっちの鬼にとっても予想外の出来事だったようで、彼女たちも急いで方向転換した。
「ガキども、私があと三〇数えるまでに捕まらなかったら、もう一回逃げ回っていいわよっ!!」
これで、一生遊べるな。我ながら大発明だ、と思っていると、目の前に金髪鬼が現れた。ということは、後ろからは青髪鬼が来ているのだろう。
結構まずいんじゃないか?
いや、諦めないわよ。なんせ私、願いを願えばなんでも叶うお姫様ですから。この国で一番えらいお姫様ですわよ。
みんなの税金で、遊んじゃうぜ!!
「テト、そっち逃げるわよ」
後ろから声が聞こえてきた、ということは、金髪の方がアユなのだろう。私は、そのままアユの方に突っ込んでいく素振りを見せて右のまだスペースに余裕のある方に逃げよう、と足を動かしたのだが、そこにはすでにテトが来ていて、私は捕まってしまった。
「なによ、鬼が二人なんてずるいじゃないっ」
私が、律儀にルールを守ってその場で地団駄を踏んでいるうちに、彼女たちはガキどもを全員捕まえた。
「もう一回!!もう一回やるわよっ」
Q 運動好きだったんでしたっけ?
私 いや、全然嫌いでしたよ。
Q でも、体を動かすことばっかりしてますよね?
私 ランナーズハイみたいなことですよね、きっと。異世界来たばっかりで、ドーパミンがどんどん出てるんですよ。改めて見ても、自分とはとても思えませんもん。
Q 生前は、趣味とかあったんですか?
私 まあ、ゲームとエッチなビデオだけですよ。大学も休学して、結局退学しましたし。
Q 私も、大学一回休学してたことがありまして、
私 いや、違いますよね。
Q 違うって、いや、その、本当に一年休んでたんですよ。
私 いや、私とは違いますもんね。違いますよ。ご自分でも、本当は気づいてるんですもんね。所詮は、マスコミ側の人間ですもんね。分かってますよ。私は、逃げただけですもん。そっちは、お金の事情とか、人に納得して同情してもらえる理由なんでしょうけど、私のは違いますもん。どうせ、自己責任とか、笑われて終わりですもんね。
Q いや、べつにそんなことは
私 どうせ、見ている皆さんも私のこと笑うんでしょ?編集して、ここはどうせ使われないだろうし。羨ましいですよ。笑えますか?私のことを?それは、皆さんが「自分は絶対にこうはならない」っていう確信のもとにいっつも呑気に暮らしているからですよ。こっちはね、あなた達の何倍も辛い現実を見てきてるんですよ。アニメもゲームも、現実を見た結果「こりゃ、無理っすわww」ってなってやっているだけなんで。そもそも、現実から逃げるっていう言葉自体よくわからないんですよ。現実から逃げたから、こんなことしてると思ってるんですか?こっちは、むしろ立ち向かってますよ!現実に対抗するために、アニメとゲームを毎日やってるんです。そっちこそ、現実に取り残されているのがいいことなんですか?家に引きこもることが、どれだけ大変か分かっているんですか?大人になってまで、親に迷惑かけることが、どんなに精神的に辛いか分かっているんですか?日々まったく成長せずに現状を維持することが、現実的に考えてどれだけ難しいことかって、考えたらわかりませんかね?
Q ハハ、そ、そうですね。
私 どうせ、私たちのこと下に見てるんでしょ?それが現実ですか?自分より下の人間を見ることが現実を見ることなんでしょうか?私たちは、現実の見たくない部分ではなくて、率先して見たい部分なんでしょ?金持ちの成功よりも、いい大人の堕落が見たいんでしょ?それで、そんな弱い人間に向かって「厳しいって」とか言うのが好きなんでしょ?いいですよね。こっちは、見世物になっても一ミリもお金入ってきませんから。そっちは、見世物を見ているだけで自己肯定感も上げられれば、お金も入ってきたりするんですよ。いいですか、これが現実ですよ、みなさん!!
Q ちょっと、一旦落ち着きませんか、ねえ。
私 落ち着くと、なにかいいことがあるんですか?私が冷静に「やめてもらえますか」って言ってもなにも伝わらないでしょ?ときには、熱さは必要ですし、冷静さが必要だなんて、現実を見ていない人間の戯言ですよ。
Q 黙れゴラ。クソニートがよ。親のスネかじってるくせになに言ってくれてんだよ、ボケが。
私 残念、私、親のスネかじってませんでした〜。はい、乙www
Q は、じゃあ自分で稼いだ金なのか?
私 ・・・おばあちゃんです。
Q それは親の一部だろっ。いっちょ前に嘘つくんじゃねえよ、ゴミが。お前ら、社会の役に一ミリも立ってない、そのくせ生活保護とか受けてるんだろ?うちらの税金でなにしてくれとるんじゃ。お前らは、社会から逃げてきただけの敗残兵以下のウンコ拭いたトイレットペーパー未満のゴミカスなんだからよ、黙ってろよ。お前らに居場所なんてねえよ。クソが。それに、世間のやつらもいっちょ前にインテリ面してマスコミ叩きやがってよ。私たちがいなかったら、お前ら誰を叩くんだよ?
私 そりゃ、あなた達は叩かれて当然ですよ。それもわからないから、その程度の不満しか口から出てこないんでしょ?スカスカの雑魚脳でいちいち考えていても埒が明かないですから、チャッピーに考えさせてりゃいいんですよ。
Q なんですか?出番も不定期なんだから不満くらい喋らせてくださいよ。
私 それは、あなたの上司に言ってくださいよ。じゃあ、また今度に。
Q そうですか。いいですね、「自分たちは弱い」っていう立場を利用して言いたいこと言いまくって、羨ましいですよこっちこそ、って、あっ。まだ途中だって!
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「ハア、ハア、ハッ、あんたたち速いわね。やるじゃない」
二人は顔を見合わせて「いやいや」という表情で手を振る。私は地面に寝そべって、彼女たちを見上げる。日光が眩しい。
「でも、次は私が鬼だから、あんたたち覚悟していなさいよっ」
青髪のテトの方が、寝そべって息を整えている私の肩をトントンと叩く。
「なんなのよ、ハア、言葉で言いなさいよ」
息苦しいのであまり喋りたくないが、コミュニケーションを取るためには仕方がない。アユが指を指している。
私は、細い腕で重いからだを持ち上げて、顔を彼女が指す方向に向ける。そこには、リリカが木陰から私たちの様子をこっそりと見ていた。所詮は一〇歳なので、こちらから彼女の姿は丸見えになっている。
仕方ない、と思い、私は立ち上がって彼女の方へと走った。
「ちょっとあんた、なにコソコソ見てるのよ。私のことが好きなのかしらっ」
「ち、違うもん。・・・」
重力に逆らうように、首を起点として、顔がどんどん赤くなっていく。
「なによ、羨ましいのっ」
「そ、そんなわけないじゃない。私は、あんたなんかと遊びたくなんか無いわ。クレア、あんた泥だらけで汚いわっ、汚らしい恰好で近づかないでよねっ」
「黙りなさい。そっちこそ、綺麗すぎて気持ちが悪いわ。それにあんたたちみたいに桶におしっこしたりしてないわよっ」
「なによ、小さい頃はよく漏らしていたくせにっ」
「ハ、そんなの関係ないわ。とりあえず、そんなところにいたら遊びの邪魔だから、とっとと帰りなさい」
「そ、あんなガキどもと遊びたくなんかないわっ」
「それは私だってそうよっ」
「え、?・・・あ、遊んでるじゃないのっ」
違う。
「違うわ。私が、彼らに教育してあげてるのよっ。捕まったら死刑、簡単な話でしょ。これが世界だわっ」
「な、なにを言っているのよ。遊びすぎて頭がおかしくなったのね。いいわ、アユ!!テト!!こんなところにいたら、頭がおかしいのが移るわ、早く帰るわよっ」
二人が、ゆっくりとこちらに向かってくる。もちろん、こんなところで二人を返してたまるもんですか。
「いや、二人とも、まだ遊ぶわよっ。すぐに返すと思ったら大間違いよっ」
二人は、「もう、大丈夫ですよ〜」という感じで、両手のひらをこちらに見せて、それを左右に振っている。もちろん、私はそんな二人の手首をがっちりと掴んで、引きずる。
「ちょっと、離しなさいよ!!」
リリ、・・・なんだっけ?
まあいいわ、もったいないものね。気取り貴族がアユとテトの足首を掴んでいる。私とこの小娘に引っ張られて、二人の体が宙に浮く。
「ちょっと、あんたなにしてるのよっ。二人が可哀想だわっ」
「それはっ、こっちのセリフよ。二人は私と一緒にいるんだからっ、あんたみたいなのと遊んでいる暇は無いわっ」
思い切り力を込めているので、引っ張られている二人の様子を確認することができないが、それにしてもこいつら喋らないのもムカつくな。
エロ兄に任せよう。どんなことすれば口を開くようになるのかが見ものだわ。
引っ張り合いは、先程まで走っていた私の体力が切れたことによって、私の負けとなった。
「ハハ、二人とも帰るわよ、こんなのっ」
引くに引けない娘が引っ張った勢いで倒れたままの私の腹に、ハイヒールの一番殺傷能力の高いところを突き刺してくる。
「グホ、」
「オホホ、良いザマねっ」
十歳のまだ脂の乗っていない女子の体には、かなり大きなダメージが入った。
私が腹を抑えて悶えていると、心配してくれたのか、アユとテトの二人が私の方に来てくれた。
彼女たちが私に手をかざすと、なんと、ちょっと緑色っぽい光が出て、私の腹の痛みが段々引いていくのを感じた。
え、魔法なんてあったんだ。知らなかったんだけど。というか、今までの記憶にも無いし。なんで、急に?まあ、仕方がない。おそらく、腹に思い切りハイヒールが刺さった状態がそれだけ危険か改めて考えた後に、「肋骨が骨折くらいはしそうだし、それだと二ヶ月くらい動けなくなって作劇上困るな」と思ったのだろう。
というわけで、突然現れた魔法に命を救われた私は、イキリ娘の方に向かって歩き出す。
「ちょっと、あんたたち集まりなさいっ」
中身空っぽ娘は、悔しさなのか、その場に立ち尽くして歯をギリギリと食いしばっている。アユとテトの二人は、彼女の後ろの定位置につき直していた。
私たちが揉めている間自由に遊んでいたガキたちがこちらに集まってくる。
「いい、今度はこいつを捕まえれば勝ちよ。全員が鬼だわっ。一〇数えてから動き出すのよっ。捕まえたら、服を一枚ずつはいでやりなさいっ」
やりすぎかな、と思う程度に私は純粋無知なガキに命令を下す。
「あの、ちょっとさすがにそれは、」
見知らぬ声に、私はついビクン、となる。クソ娘の右後ろにいたテトが喋りだしていたのだ。お兄様、出番が一つ無くなりましたわ。
「なによ、あんた私に口出しする気?」
「その、リリス様が今までしてきたことは謝るから、それはさすがに、やめてもらいたいっていうか、」
「なによ、せっかくこれから楽しいことになるところだったじゃない」
「私からも、謝るから、」
クソ娘改め糞小娘の左後ろにいるアユも喋りだす。
「だから、それ以上はやめてもらいたいんです」
「あら、でも、あんたたちのボスは謝らなくていいのかしら」
二人が謝ったことでなんとかなるんじゃないか、とゴミ娘が安心したような表情を見せていたのを、私は見逃したりはしない。
「そんな、手下二人に謝らせて自分はなにもしないつもりなの?」
「な、なによ、私は、あんたが嫌いで、それに、」
「まあ、そんなことどうでもいいわ。一緒に遊びましょうっ」
「え、・・・・・いや、なんであんたなんかと遊ばなきゃいけないのよっ」
私は、まず彼女のつけていたティアラを奪い取った。
そして、ガキたちに向かって
「いいわ、あんたたちっ、こいつの身につけているものを一番多く剥ぎ取った人の勝ちよっ。行きなさいっっっ」と言い放った。
ガキどもが一斉に外見だけ娘とアユとテトの三人のいるところに流れ込む。もちろん、私は勝ちたいので、ガキどもを押しのけて学無し娘に手を伸ばす。
アユとテトが、そんな私の手を掴む。そして、どちらかはわからなかったが、一人が私を大きくトスして、もう一人が思い切り私にアタックした。
なんか、この二人だけ特別なんですか?
私は、近くの木に、二日連続で突き刺さる。そして、そのまま落下した。さっき回復してくれたのに、意味無いじゃん。
クラクラする頭を抑えて、なんとか立ち上がると、他のガキも同じように(私よりは手加減されているが)飛ばされていた。私は、手にティアラを持ったままだった。
うんこ出ねえ




