ブラザーサプライズフォーシスター
フレイです。
ついに、決行の時が来ましたよ。
いや、なんだかんだいっていつも心配で仕方ないんですよ。
クレアもレイも、楽しめてるのかなって。
いや、ワクワクするな〜。
喜んでくれるといいな〜。
そんじゃ、見てください。
「ちょっと、いいか?」
僕は、僕の配下であるアイスを部屋に呼び出した。
「あのさ、頼みたいことがあって、」
「なんでしょうか?」
「重大なことなんだけど、今、僕の愛しい妹がなんか、退屈そうなんだよね」
「また、妹さんの話ですか?」
また、なんてことはないだろ。
こっちからサプライズするのは初めてだし。
ホント、大変だった。最初から魔法で行ってもよかったな、と今更ながらに思う。が、なんか自分のために魔法を使うのはどうも抵抗があるんだよな。
「あの、どちらの妹さんですか?」
「ああ、長女の方だよ。クレア」
アイスが、明らかにいやそうな顔をする。が、まあジャイアンではないので、あの横暴な妹のことをバカにされたからといって暴れるようなことはしない。
「まあ、僕の言うセリフを彼女に言ってくれればいいだけだから」
「自分でやればいいじゃないですか」
「ああ、違うんだよ。サプライズ!サプライズだよ!!サァプラァイズ!!!!!!!」
なんか、ドキドキする。
「だから、まあ、頼むよ。僕には、準備があるんだ。あの、これ服につけておいてね」
そう言って、僕は肝心のドラゴンの準備に取り掛かった。
まあ、ドラゴンを挑発して、この街まで連れてくればいいのだ。
僕は、小型の通信機魔法をアイスに託し、ドラゴンの誘導に向かった。
「あの、どういう感じで言えばいいんですか?」
さっそく、アイスから通信が届いた。
「あの、城の外まで言って、衛兵たちにクレア王女を呼んでこいって言ってよ。多分、クレアならすぐに来るよ」
「とりあえず、衛兵に言えばいいんですね」
「今、お願い」
「え、今ですか?!!」
僕は一度通信魔法を切り、全速力で準備を開始する。
最終的に、僕がクレアや他の一般市民に見えない速度でドラゴンをどこか遠くに吹き飛ばせばいいのだ。
で、住民にはそれがクレアの仕業みたいに見えるようにすればいい。それで、最後に種明かしをするの。
完璧ですわよ、お兄様っ。
そんな声が聞こえてくる気がした。
その前に、レイにも毎日プレゼントを渡しているから、今日も渡しに行くか。
たまには、お兄ちゃん、顔を見て話したいんだけどな。
まあ、仕方ない。
「お兄ちゃんだよっ。今日もプレゼントがあるんだっ」
いつもいつも、静かだ。
ドアが開く。
「あの、レイ様が帰れと言っています」
「これ、渡しといてくれよ」
僕は、レイへのお土産を彼に渡した。ネットの高額のオークションで競り落とした一品だ。
えっと、真夏の、・・・?
まあ、いいだろう。人気なものらしいからな。
「じゃ、明日も来るからねっ」
まあ、今日はまだいい。というか、せっかくのサプライズもあるのだから、今日部屋から出てこられると逆に困る。
というわけで、僕はドラゴンを閉じ込めてある森の奥の巨大洞窟をめがけて走る。
本気で走ると、普通に世界が滅んでしまうので、滅ばない程度に力を緩めて、走る。
「あの、衛兵に伝えようと思ったんですけど、なんて名乗ればいですか?」
「ああ、なんでもいいよ。適当に「クレア王女を呼んでください」って言えばいいよ」
「それで行けますか?」
「行ける行ける。あのね、僕の愛しい妹への初めてのサプライズなの。絶対に、楽しんでもらわなくちゃいけないんだ。頼むよっ」
「ちょ、そr」
通信魔法を切る。
洞窟に着く。
オンドゥルさんと協力してなんとか捕まえることのできたヤケクソドラゴンなのだ。まあ、条例とかには反したりするんだけど、犯罪をするには国境をまたぐしか無いのだ。
「おい、起きろ」
軽く鼻の辺りを蹴るけど、全く反応しない。さすが、ドラゴンなだけある。なにしろ、上空数千メートルから地面に落下しても傷一つ負わないほど固いのだ。
仕方がないので、ネットで調べた
Q ネット出てきましたよっ、ちょっと!!まあ、さっきも出てきてたけど。
私 そうですよ。ネットだって異世界でもありますよ。だって、普通に考えてくださいよ。人間の死んだ先が異世界なんですから、異世界もこっちの世界と同じくらい発展していないとおかしいでしょ?
Q じゃあ、あなたの国はどうなんですか?
私 それは、最初にあのゴミクソエルフが最近人が多いから異世界を新しく作ったとかそんな感じのこと言ってたじゃないですか。
Q そんなの、もう覚えてないですよ。まあ、そうですか。後出し情報解禁で。
私 ちゃんと設定は最初に考えておけって言っときますから。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「お、き、ろ!!」
今度は、五〇パーセントくらいの力で蹴る。と、さすがのヤケクソドラゴンも目を覚ました。
「オッケ、行くぞ」
僕は、ドラゴンの頭に釣り竿を引っさげ、そこに僕を吊り下げる。
まあ、万が一なんてことはないから安心してほしい。
「はい、こっちこっち」
すると、人間には聞こえない周波数でドラゴンが吠える。
聞こえはしないけれども、体が楽器のように共鳴するような感覚になる。
「あの、クレア王女呼んでくれるって言ってます」
かなりちょうどいいぞ。
「よし、じゃあ後はクレアが来たら「ドラゴンが迫ってきてます。あなたにしか、倒せないんです」と言ってくれ。全力で演技してね。あの、涙とかも流せる
なら流してっ。それじゃっ」
「あ、もうまt」
通信に使う魔力がもったいないからな。
お金かかるし。
ドラゴンの聞こえない鳴き声で、僕の体がプランプラン揺れる。普通に、ずっとこんなところに縛られた状態でいたら、なにか後遺症でも残るんじゃないか、と思うのだが。
まあ、いい。
「こっちこっち」
なんとか体を揺らして、ドラゴンを城の方に先導する。
それにしても、これ誰か知り合いに見られたら嫌だな。でも、妹のためだ。いつにもまして、最近は退屈そうだ。
お兄ちゃんとして、楽しんでほしい。
だって、妹大好きだもん。
クレアの楽しそうな顔が思い浮かぶ。彼女は、こういう暴力的な方がワクワクするタイプだろう。
全長一〇〇メートルもあるドラゴンが、洞窟をぶち破り、ついに地上に顕現する。
まあ、ここまで頑張って運んできたのは僕なんですけどね。この洞窟で大人しくさせるのも大変だったんですけど。
「あ、クレア様来てます」
非常に順調である。これで、行けるぞ。この前、登場の手が突きてどうしようと思ってかくれんぼみたいなのをしたけど、クレアは意外にもそんなに楽しくなさそうだった。
まあ、難易度がそこまで高くなかった、というのもあるかもしれないが。
AI魔法に頼んで作らせたのに、なんか手抜きみたいなのが出されたんだよな。
「ちょっと、あんた誰よっ」
この周波数は、愛しい我が妹クレアだ。
「く、クレア様、助けて下さいっ。ここに、この街に、巨大なドラゴンが迫ってきていますっ。あなたにしか倒せません。王家の血を引く、双子の長女にしか、倒せませんっ。どうか、どうか、国のためにもお願いしますっ。どうかっ、どうかーっ」
なかなかいい演技をするじゃないか。
よし、それでいいぞ。
このドラゴンの飛行速度なら、あと五分くらいで到着する。
「は?あんた、どこでそんな情報知ったのよっ」
さすがに、まだ疑っているのか。
「これは、言い伝えです」
アイス、お前ナイスすぎる。
これはかなりデカいぞ。
「言い伝えで、この国の王家の血筋を継ぐものが、空から舞い降りるドラゴンを倒し、伝説の秘宝を手にする、と」
全然そんな指示出してないのに、すごいな。
おっと。
ドラゴンが僕に噛みつこうとしている。
が、体幹魔法でそれを避ける。
これだと、少しスピードが落ちてしまうな。少しエンジン魔法を使って僕もドラゴンに合わせて動くようにしよう。
「伝説の秘宝ってなによっ」
「で、伝説の秘宝には、いずれこの国に訪れるもっと大きな困難を乗り越えるのに必要と言われているんです」
「は?聞いたこと無いわよ。あんた、敵でしょ?いや、敵よっ。絶対に敵だわっ」
「いや、違いますよ。本当に、このままだとドラゴンが来るんですっ。あなた、クレア王女にしか、この危機は乗り越えられませんっ」
「じゃあ、そのドラゴンの名前言ってみなさいよっ」
あれ、信じてもらえてない?
「アイス、聞こえてるか。ドラゴンの名前はヤケクソドラゴンだ」
「ヤケクソドラゴンです」
「あはは、あんたバカじゃないの?そんなドラゴンがいるわけないわっ!!!!アハハハwww」
いや、それがいるのよ。
この国の言語を日本語のまんまにしたのが間違いだったかもしれない。
「いや、でも、このままだとこの街は壊滅しますっ。あなたにしか、倒せませんっ」
「じゃあ、なによ。伝説なんでしょ?もっと詳しく予言してないの?」
「え、そ、それは」
「そんなバカみたいなドラゴンがいるわけないわっ。やっぱり、あんた敵国ね。お父様に言いつけてやるわっ」
ちょっと待ってくれよ。
頼るなら、僕じゃないのか?
お父様なんて、
僕なら、なんでも願いを叶えてあげられるというのに。
「ちょ、ちょっと待ってください。そ、その、ドラゴンが来るんです。あなたにしか倒せないんですっ」
「ドラゴンが来るにしても、私にしか倒せないなんてわけないわっ」
おい、ちょっと。
え?
そんな、異世界だからなんでもできる、っていう感じだったじゃん。ちょっと、それは聞いてないよ。
「アイス、頼むから絶対にその場から動かすなよ。最悪、クレアがそこにいればいい。あと二分くらいだ」
「クレア様、お願いします。ぼ、僕のことを殺してもらってもかまいません。ほら、敵じゃないですっ。本当に、ドラゴンが来るんですっ。お願いしますっ。助けてください。国民のためです」
「あら、王家が国民のために動くと思ったら大間違いよっ」
現代日本でそんなこと言ったら大問題だぞっ。
ああ、もう見えてきてる。
こんな釣り竿に釣られて、僕は何をしているんだ。
なんか、もっと普通のサプライズで良かったかもな。
「ちょっと、そこをなんとか、そこを、なんとか!!!」
ああ、もう街が目の前だ。
また見てね




