ア゛ディカライボルドゥベドディョッドゥシダプリデンドゥ
フレイです。
はい、そうです。クレアとレイの兄ですよ。
いつもは、妹のために色々やってるもんでなかなか顔が出せないんですけどね。
その、今回は早く仲直りしてもらいたかったので、こんなことをやろうと思いまして。
ええ、はい。
そうですね。
まあ、見ればわかりますよ
僕は、二人の妹のために生まれてきた。
二人と会うために生まれてきた。
僕は、母についてきてこの国の国王の息子となったので、彼女たちは義理の妹になるのだが、どうも双子の妹の姉の方、クレアは最近退屈そうなのだ。
まあ、いつもは彼女の要望に完璧に答えている僕だが、最近はレイが部屋からでてこなくなったり、大変な状態になってしまっている。
もちろん、僕は兄として二人には仲良くしてもらいたい。
将来は、三人でこの国で幸せに過ごすのさっ。
その夢のために、毎日奮闘中です。
まあ、レイは全然口を聞いてくれないし。
それに、一応兄としての信条というか、元々あまり双子の妹は仲が良くなかったのだ。
僕がこの国に来たのは一五歳くらいだ。その時彼女たちは、まだ七歳程度だった。二人は別々に育てられていたので、一緒になってもあまり話す様子を見せなかった。
それから成長して今は一三歳になり、僕は二一歳になった。
クレアに、なんとかレイとの仲直りをけしかけようとしているのだが、どうも彼女は重い腰を動かそうとしない。
ということで、アメとムチ作戦だ。
まあ、ムチというのは、その彼女のあまり人に指摘されたくないであろうレイとの話をしきりに持ち出すことで彼女をなんとか動かそう、としたことで、これからアメを彼女に与えよう、ということだ。
以前彼女に「どっちがレイを部屋から出せるか勝負しないか」と声をかけたときは、「北風と太陽じゃん」と言われて彼女にやらせることができなかったのだが、まさしく、北風と太陽なのだ。
結局、あの話はあきらかに後攻の太陽が有利だった、ということ。そう、つまり、彼女にしつこくムチを与え続けたから、ようやくアメの出番が来た、ということ。
なぜ僕が北風と太陽を知っているかは、
まあ〜、
僕が考えたからさ。そういうことにしておいてくれ。
ということで、僕は今、自分の国を遠く離れた魔大陸にいます。
え、魔大陸は何かって?
それは、魔大陸は魔大陸でしょ。
だって、ここは異世界ですからね。異世界人なら、みんな知ってるよ?そっちの皆さんだけですよ。
異世界には、魔大陸っていうのがあって、そこには人間なんかじゃ太刀打ちできない危険な生物が沢山潜んでいるんですね。
で、これから何をしようか、というと、まあ最近友達との遊びにもマンネリを感じ始めているクレアに、国の危機、というものを演出してあげて、それをクレアに解決させるってことです。
彼女は転生者ですから、まあ躍起になってくれることでしょう。
というわけで、僕は今、この異世界でおそらく一番危険な生物と言われている「ヤケクソドラゴン」を探しているんです。
前も少しドラゴンが出てきたけど、この世界では、ドラゴンは魔法で空は飛ぶけど、炎は吹きません。
そう、飛んで落ちてくる。
でも、これが一番怖くね?
だって、落ちてくるのはどうしようもないじゃん。
一番怖いと思うよ。
ということで、その伝説の巨獣「ヤケクソドラゴン」を探しに魔大陸まで新幹線で六時間かけて来たところ、どうも今日は観光日和で人が沢山いる。世間も夏休みだし。
ちょっと、そこらへんのコンビニでお茶でも買ってから行くことにしよう。
どうしようか、と思いスマホを開く。
ここからドラゴンのいる森までは、結構時間もかかる。電車は、結構混んでそうだもんな。
というわけで、僕は地元の猟友ギルドまで行くことにした。
新幹線の通る都市部を離れれば、人も少なくなり、木々が多くなり、家が逆に目立ってくる。
スマホの地図アプリで、猟友ギルドにたどり着いたので、そこで情報収集をすることにした。
猟友ギルドと言っても、ただの小さい小屋があるだけだ。
「あの、すいません」
一応、小屋の横に小さな軽トラが止まっていたので、声をかけてみる。
すると、小屋の中からではなく、外から「おいよ〜」と声が聞こえた。
「あれ、若いね、君。どうしたんだい?」
六〇代くらいの、オレンジのジャケットを着たおじいさんが現れた。
「あの、ヤケクソドラゴンってこの辺で見れる場所ってありますかね?」
ネットではこの辺での目撃情報が多くなっているのだが、それでも現地の人の情報というのも大切だ。
「ああ、あの、峠があるんだよ。そこから、運がよかったら見れるよ」
これ、見れた試しがないやつじゃん。
まあ、仕方ない。最悪、僕が魔法で本気で探せば見つかるはずだ。
「結構、デカいですよね?」
「いや、兄ちゃん。マジで、本物見たら腰ぬかすべ。空一面よ。ホント、こんのくらい」
おじいさんは、精一杯腕を伸ばしてヤケクソドラゴンの大きさを表現する。
「そんなにデカいんすね。いや、ありがとうございます。ちょっと、行ってみますね」
おじいさんは「おおよ」と手を振ったあと、また小屋の裏に戻っていった。
僕は、スマホでタクシーを呼んで、その峠に向かうことにした。
二十分程待って、ようやくタクシーが来た。
「あの、この辺でヤケクソドラゴンが見れる峠があるって聞いたんですけど、」
「ああ、投げやり峠ね。あそこは、結構ドラゴンがいるって噂ですからね」
「じゃあ、そこまでお願いします」
タクシーが動き出す。
そして、二〇分ほど車で移動し、僕は投げやり峠の絶景スポットのようなところに到着した。
真下には、なぜか木が一本も生えていない。
だが、水平に目線を移すと、先程新幹線を降りた駅が見える。
確かに、夜景なんかは結構見えるいい場所かもしれない。
「Hey!!ヨロシク」
突然声をかけられたので、一体誰かと思ったら、彼は僕が事前に雇っていた現地ガイドのオンドゥルさんだった。
「わざわざ集合場所を変えてもらって、すいません」
「ボンダイナイヨ」
(問題ないよ)
彼とは、スマホの翻訳アプリでコミュニケーションを取ることができるので、問題ない。
いや、それにしても、スマホって魔法よりよっぽど便利だよな。
「あの、ここらへんでヤケクソドラゴンが見れるって聞いたんですけど、」
「ケッコルヴィリバズヨ。デロ、カナディルンガヨグナイドゥヴィリナイディスベ」
(結構見れますよ。でも、結構運が良くないとですね)
「やっぱり、そうなんですね。時間帯とか、あるんですかね?」
「ビィドゥバヴァア゛ンバディヴィリナイカナ」
(昼間はあんまり見れないかな)
なるほど。
「じゃあ、夜まで現地を案内してもらってもいいですか?」
「オッケーヨ」
ということで、僕はオンドゥルさんの案内で、現地を観光することにした。
まだ、午後の三時だ。
夜までは時間がかかる。
ということで、まあ腹が減っては戦ができるんだかできないんだか。
オンドゥルさんの車に揺られて一〇分程。僕たちは現地の食堂に来た。
「ココラベンディヴァ、ベイムヅア゛ドゥベ」
(ここらへんの名物があるんですよ)
「どんなものなんですか?」
「ヴィデカラドオダドシヴィヨ」
(見てからのお楽しみよ)
なるほど。でも、やはり文化圏がかけ離れていると食の好みというものはかなり変わってくる。
「あ、いらっしゃい。二人?」
食堂の扉をオンドゥルさんが開けると、中から老齢のおばあさんが出てきた。
「エエ、ディディンディス」
おばあさんは首を傾げている。
「あ、あの、彼は二人ですって言ってます」
「あ、そうなの?ごめんね、耳が悪くて。好きなところに座って」
ということで、僕とオンドゥルさんの二人は一番奥のテーブルに座った。
「Hey!!!!」
「あの、すいません」
すると、厨房から先程のおばあさんよりは少し若そうなおばさんが、メモ用紙のようなものを持って出てきた。まあ、田舎の食堂には温かさみたいなものがある、というもんだ。それでも、普通のメモ用紙を使っていることにはどうも引っかかってしまう。
「ア゛ド、ゾンザイデンザイヴダヅ」
「えっと、ゾンザイゼンザイ?でいいんですかね?」
「ああ、ありますよ」
「それ、二つください」
「わかりました。少々お待ちください」
そういって、おばさんは厨房に信じられないくらい大きな声で「ぜんざい二つ!!」と叫ぶ。
「ア゛ドババア゛、コエデカイベ」
(あのおばあさん、声でかいね)
「あはは、・・・そうですね」
普段、あんまりこんなところに来ないからな。
僕は、なんとなく窓の外の景色を眺めた。木が生い茂り、都会とはさほど距離もないのに、全く人間の生み出す生ぬるさのようなものがない。
「ソルヴェバ、ナンデドラゴンヴィダイド?ダイガグセイドゥカ?」
(そういえば、なぜドラゴンを見たいのですか?大学生ですか?)
まあ、若干変なところがあるが、これは翻訳のアプリの問題なんだろう。きっと、「大学の研究みたいなので、ここに来ているのか?」と聞かれているのだろう。
「その、単純に興味がありまして、」
「ア゛ラ、クヴィイグヅナド?」
(何歳ですか?)
「え、僕二一ですね」
「トシシタ!!」
「Oh,トシシタwww!!ハウオウアーユー?」
「オー、アイムジャストフォーティー」
「Oh,トシウエww」
なんか良くわからないけど、盛り上がった。
「あ、ぞんざいぜんざい二つです」
結構すぐに、僕たちの頼んだ「ゾンザイゼンザイ」なるものが届いた。
なんだろうか、甘い香りがするが、なにか黒くて、豆?か?豆のようなものが入っている。
「お客様につぶしてもらって、食べる感じになります」
オンドゥルさんは、店員の声が聞き取れなかったみたいなので、僕はスマホの画面を彼に見せた。
「オ〜、セドゥヴナドベ」
(あ〜、セルフなんですね)
スプーンで豆をすりつぶしながら、僕はそれを飲んだ。
「あ、甘いですね」
「オ〜、グッド。ザッツアゾンザイゼンザイ」
それから、オンドゥルさんは他の名産のことも色々と教えてくれたのだが、あまりこの食堂に長居しても仕方ないので、次の観光名所に行くことにした。
また、僕は彼の運転する車の助手席に乗り込む。
「そういえば、オンドゥルさんはここらへんに住んでいるんですか?」
「ソルヨ。ボル、ディリイベンダヅベ」
(そうです。もう、二十年経ちます)
「長いですね」
「イイバショヨ」
「ハハハ、そうですよね」
ということで、彼の車に揺られることまたもや二〇分。
今度は、お寺のようなところに到着した。
「ディョッドゥ、デンワカケドゥベ」
(少し、電話をかけます)
そういって、オンドゥルさんはスマホで誰かに電話をかけ始めた。
僕は、なんとなく辺りを見回してみる。
白い漆喰の塗られた壁に囲まれた中に、かなり立派なお寺が建てられていた。
僕たち以外にも参拝客が何人かいた。
入口のところには、木みたいに色付けされたプラスチックの看板があり、そこに寺の歴史やどういう寺なのか、という説明が書かれていた。
森の中にぽつんと建っている。
「ココドジュルショグドゥシディア゛イナド。ディョッドゥバッデデ」
(ここの住職と知り合いなので、ちょっと待っててください)
僕は「はい」と言って、そして数分経ったところで、お寺の門をくぐってこちらに来るお坊さんの姿が見えた。
「Hey,ヒサシブリ!!」
「Oh,オンドゥル!!」
そういって、お坊さんとオンドゥルさんがハイタッチをする。
「コリ、ワダシドオクャグザァンベ。ヴリイザァンイルド」
(これは、私のお客様です。フレイさんといいます)
あ、僕の紹介をしてくれていたのか。
「ああ、こんにちは」
僕は、お坊さんに挨拶をする。
「ああ、えっと、お友達ですかね?」
「オクャグザァン」
(お客さんです)
「あ、そうなんです。案内してもらってて」
「案内してもらってるっていうことは、お友達ですか?若いね」
あれ、伝わってないのかな、と思ってスマホの画面をお坊さんに見せた。
「ああ、オンドゥルのお客さんね。ようこそ!!」
Q ちょっと、どういうことなの、これ?
私 なんですか。止めるところなんてないですよ。
Q オンドゥルさん、なんなの?誰ともコミュニケーション取れてないわよ!!
私 そりゃ、一人だけ言葉が違いますからね。でも、現地ガイドですし。
Q いや、現地ガイドなら、現地の人と話さなきゃダメじゃないのっ!それに、ここに住んでもう二〇年って言ってたわよっ!!
なんで、現地ガイドなんかやってるの!!
私 そりゃ、そういう人もいますよ。
Q もう、頭おかしくなりそうだわ、これ。そもそも、あそこはどこなのよ。ほぼ、日本じゃないのっ。
私 でも、ドラゴンいますよ。
Q でも、ホタルとかみたいになってるじゃない。なんか、天然記念物の蝶とか。なによ、「運がいいと見れる」って。
私 ドラゴンだって、あんなに体が大きいんだから、天然記念物になりますよ。
Q ああ、もういいわ。
また見てね。
高評価よろしく




